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おしゃべりの延長!スペインサッカーの記者会見は、どうして面白いのか
代表ウィークが終わり、ラ・リーガが戻って来ました!
今週末はラ・レアルにとって重要なバスクダービー。試合の前に楽しみにしているのが監督の記者会見です。
4年ほど前からスペイン語のリスニング教材としてちょうど良かったので見始めたのですが、試合前、試合後の監督や選手の記者会見がめちゃくちゃおもしろい!
日本の記者会見は正直言って当たり障りない内容を聞くという印象・・。スペインの場合は驚くほどの質問量で内容もぎっしりなんです。できるならすべてを訳して流したいくらい。
一体何が違うのか?そこにはスペインのサッカー文化と国民性がぎゅっと詰まっているとスペインオタクは考察します。一体どんな記者会見なのか?行ってみましょう。バモス!
スペインサッカー界は記者会見、インタビューが多い
ラ・リーガのチームはどこも、かなり頻繁に記者会見やインタビューを行います。
座って答える記者会見はスペイン語でrueda de prensa、試合後などの短いインタビューのことはentrevistaと言います。この記者会見、インタビューの数がスペインは明らかに多い。かなり頻繁に行われます。
クラブチームでも代表でも試合前、試合後には監督の記者会見が必ず行われ、時折選手の記者会見もあります。代表チームは試合前必ず選手も登場。試合後はまちまちです。
試合前、試合後はマストで、果てにはハーフタイムにまで選手へ短いインタビューが行われる場合もあります。
その他、新聞やラジオ、チームのYou Tubeでインタビューがあったりと選手、監督の声を聞く機会は本当に多い。
こんなに何度も記者会見、インタビューが行われていれば内容は薄くなりそうなものですが、そうならないのがスペインのすごいところ。「チームは同じ状態ではないし、同じ試合はないので逐一聞く必要がある」というのが彼らの考え方です。
ここが違う、スペインの記者会見
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あんまり言いたくありませんが、スペインのサッカー関連の記者会見は、日本の記者会見とは似て非なるものです。
その大きな理由は「聞く側」にあると思う。スペインのサッカー記者たちは完全にサッカープロフェッショナル。サッカー文化が根付いた国で、重要な役割を任されているだけのことはあります。
みんなが聞きたいことをバシッと聞いてくれる
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まず見ている側からして一番フラストレーションが少ないのがこちら。「聞きたいことをバシッと聞いてくれる」ことです。
サッカーを見ていると「どうしてこのフォーメーションにしたの?」「どうしてあの選手がスタメンじゃないの?」「あの選手の状態は?」など山程疑問が出てきますね。時には監督の選択に不満を溜めることもあるでしょう。
これを素早く、確実に聞いてくれるのがスペインの記者たち。サポーターたちの感覚とズレていない、というのかな。見ている側が聞いて欲しいことを必ず聞いてくれるんです。
例えば今年、レアル・ソシエダ対エスパニョールの試合で点を決めた久保建英選手、そのセレブレーションがとても話題になりました。めちゃくちゃ不満そうな顔、耳に手を当てた後に背番号を誇示するようなセレブレーション。日本だけでなくスペインでも「監督に不満があるのかも」と、かなり大きな話題になっていました。
この次の記者会見で監督のイマノル・アルグアシルはすぐに選手の様子と、あのセレブレーションが意味していたものを答えていました。なんでも聞くし、なんでも答えるんだよ、本当に。
質問が具体的
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選手、監督に投げかけられる質問がとても具体的なのも日本との大きな違い。日本でよく聞く「ゴールシーンを振り返ってください」なんてぼんやりした質問ではありません。私この質問嫌いです。選手に丸投げだから。
ゴールのことを聞きたいのであれば「あの時あなたはこう走っていましたが、シュートをしようと決めていましたか?どうしてあそこに走り込んだの?チームで練習していた形なのでしょうか?」と戦術を絡めながら聞かれることが多くあります。これは記者自身がサッカーに詳しくなければできないことですよね。
チームの状況を聞きたいのであれば「今、この選手が調子を上げていますがどう見ていますか?ロッカールームの雰囲気は良いと推測しますが、誰が盛り上げているの?」などという聞き方がされます。
おそらく、日本の選手や監督のように抽象的な質問に対して質問の意図を考えながら答えてくれるという感じではないんじゃないかな。
普段の生活でもスペインの人たちは「言葉の裏を読む」ことが苦手なので、はっきり言わないと何が聞きたいのか分かってもらえない。日本とは文化の差によるところが大きいと思います。
失礼じゃない?と思う質問もする
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はっきり言葉にするスペインの記者なので、時々「そんなこと聞いて大丈夫?怒らない?」と思うような質問も。主にチーム状態が良くない時ですね。
多くの場合、「こんな質問してごめんね」と断りを入れてから「最近勝ててないけれど、原因は何だと思っている?」とか、「どうしてあそこであの選手をフリーにしてしまったの?」「セットプレーの失点が多いけれど、チームはどんな練習をしているの?」など忖度なし、直球で質問をぶつけます。
監督や選手によっては記者の質問に腹を立ててしまい答えてくれないことも起こります。が、それでもめげずに聞き続けるのがスペインの記者。心が強い。
スペインの記者の質問は「こういう記事を書きたいからこういう答えを選手から引き出そう」というのではなく、ありのまま、サポーターの気になっているであろう、SNSや街で話題になっていることを直接ぶつけてくれるものがほとんど。
時には選手や監督にとって酷な質問であっても、現状を伝えるためには必要ならするプロフェッショナルによる質問だと感じます。
サッカーに関係ない質問もする
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フットボール選手、監督の記者会見ですが時には関係ない質問もされます。特に入団直後の選手には街の印象や好きな食べ物、趣味など。本当に関係ない。
記者会見とはいうものの、選手の人となりを知るための重要な機会のひとつなんだと思います。
ペドリ選手の記者会見を見てみましょう
スペインらしさが詰まった記者会見をひとつ見てみましょう。先日行われたスペイン代表試合前のペドリ選手の記者会見。最近見た中で一番おもしろかった。
こちらの動画の25分からペドリ選手の登場です。訳していくよー!
Q.1 スペイン代表としてテネリフェ島で試合をするという事は、あなたにとってどれほど意味があることなのでしょうか?
A.1 僕や同じくテネリフェ島の出身であるジェレミ・ピノ、アジョセ・ペレスにとって故郷で試合ができるのを誇りに思っています。この試合は僕たちのホームで、とても特別な試合です。
スペイン代表は長らくテネリフェ島での試合をしていなかったから、島のみんなに喜びを与えられる試合にできればいいですね。
まずはテネリフェ出身のペドリに対して、故郷で試合をすることについて。出身地がとても重要なスペインらしい質問です。
Q2. 今のスペイン代表は誰がプレーしていても、その他ヨーロッパ諸国を怖がらせることができると思うのですが、あなたたちチーム内部でも同じように「わあ、スペインかよ・・」と思われているような感覚はありますか?
A2. そうですね、ユーロのような大きな大会で優勝したのだから相手チームが怖がるのは普通のことでしょう。チームは誰が出てもレベルを保つことができるというポテンシャルを感じているし、選手と試合を見ていればそのポテンシャルを感じることができますよね。
スペイン代表を応援しているサポーターみんなが思うことを、選手はどう捉えているのか?ということを知るための質問。
Q3. デ・ラ・フエンテ監督はこの1年に点数を付けたくないとのことでしたが、あなたたちはこの1年で16試合をして13試合で勝利しています。明日の試合で勝利すれば14試合となりますが、これはスペイン代表の歴史上初めての快挙となります。あなたはこの大きなことを成そうとしている代表チームに、何点をつけるでしょうか?
A3. 9点かな。常に改善することはできるし、すべての試合に勝ちたいと思っています。それでも今年1年は素晴らしかったし、明日の試合は勝って1年を終えたいですね。あなたの言うように14試合目の勝利を収めることを願っています。
監督に断られたことを選手に再チャレンジする心の強さ。スペインの記者の人、点数を付けてもらうの結構好き。分かりやすくていいんでしょうか。
Q4. あなたは少し前から自分自身がこのチームにとってのリーダーで、とても重要な存在だということを感じているでしょうか?また、以前あなたはダニ・オルモ選手とプレーしたいと話していましたが、あなたとダニ・オルモ選手はほんの少しの時間しか一緒にプレーしていません。6分とか8分とか・・。これはとても興味深いことですよね。
A4. そうですね、今は幸運なことにバルセロナで彼と一緒にプレーすることができています。僕は彼のことがとても好きですし、彼のことは理解できていると思います。その他のすべては監督の決めることなので、僕にできることは多くありません。
同じポジションの選手のことを聞くのは頻繁にあります。
Q5. 明日の試合でスイスに勝利すればFIFAランキングで1位になります。あなたは自分たちが世界一の代表チームに相応しいと思っていますか?また、明日の試合のチケットを何枚頼まれたか教えてもらえますか?
A5. 明日の試合のチケットはすごくたくさん頼まれました、みんなにあげたかったけれどできませんでした。
ランキングについては僕らは自分たちのことと試合を楽しむことに集中しているし、すべてはピッチ内で示したいと思いますが、まあ1位になれるのならそれに値するということだと思います。
明日のチケット?チケットは45枚頼まれました。
頼まれたチケットの枚数、確かにちょっと気になる。人となりをちょっと垣間見れる質問です。
Q6. 2024年はスペイン代表にとっても素晴らしい1年でしたが、あなたにとってもよい1年でしたね。2001年は素晴らしかったけれどその後2年間はそうでもなかった・・過去2年間と比べて何か違ったところはありましたか?
A6. そうですね、フィジカル面の調子を整える方法に出会ったというのが一番大きな変化ですね。あとはフットボールを楽しんでできている。シーズン序盤も素晴らしいものになっているし、これをずっと続けたいと思っています。
怪我が多かったのは過去のことだから、平気で質問します。
Q7. 選手の中には代表チームよりもクラブチームでプレーするほうがフィットする選手やその逆の選手もいますが、あなたは代表とバルサ両方であまり差がないように見えます。外から見ている僕たちのこの印象は正しいでしょうか?代表でプレーする方がバルセロナの時よりも心地よくプレーできているのでしょうか?
A7. 代表もバルセロナもどちらも快適にプレーできています。この2つのチームはポゼッションサッカーという点である程度似ているし、いい感じでプレーできています。どちらかというと今はまだバルセロナの方がチームとしての時間が短いので、活躍するのが難しいと感じています。
確かに代表でよく点を決めるけれど、クラブでは決めきれない選手、その逆の選手もいますね。チームの形は選手のプレーの質を左右するので重要な質問です。
Q8. 今あなたは怪我を克服して良い期間にいるかと思いますが、たくさんの選手が現在の過密日程と試合数の多さについてコメントしています。私達にとってとても大切なあなたの意見を聞いたことがないのですが、聞かせてもらえますか?
A8. 試合数は確かに多いので、大切なことは怪我をした時の自分の状態を知って解決策を見つけることだと思います。僕は自分のコンディションを保つために必要なことやプレー時間のことも分かったので、今の状態はとてもいいですね。
この質問、今は定番になっています。試合数の多さ、過密日程、選手にかかる負担・・選手によって答えが全然違う。
Q9. 私はこのテネリフェ島で教師として働いていますが、子どもたちはあなた方選手にとても憧れています。テネリフェ島の子どもたちになにかメッセージをお願いします。
A9. 子供時代というのは本当にすぐに過ぎてしまうものなので、今を楽しむように伝えたいです。特に学校での生活や、何かスポーツに熱中することは将来思い出すことが多いものです。その経験や思い出がどのように将来影響するかは分かりませんが、自分の可能性を広げてくれることになると思います。
先生がどうして記者会見の場にいるのかは謎。でも、スペインの人たち子どもにとっても優しいので・・テネリフェの子どもたちは大喜びでしょう。
Q10. あなたはMFとしてクリエイティブですばらしいプレーを見せてくれていますが、今のスペイン代表でもっとも注意を引くのが低い位置までいち早く戻る守備についてです。この守備の働きがこのチームが飛躍した要因のひとつだと考えますがどうでしょうか。
A10. そうですね、現代のフットボールにおいては11人全員がしっかりと守備をすることが求められていると思います。11人で守備をすることはチームにプラスになりますし、今守備をするべきだ、ボールを奪い返す時間だと分かる。そうすることでポゼッションを保つこともできるし、それは試合を支配することにもなります。勝利にも繋がりやすくなると思います。
監督は戦術やチームの決まり事のことについてあまり話したがらないので、選手に聞くのもよくあります。
Q11. バルセロナとあなたの契約更新はどのような状況なのでしょうか?少しお話いただけませんか?また、あなたはテネリフェのこのスタジアムでテネリフェのユニフォームを着てプレーしたことがありませんが、それはどうして?
A11. そうですね、ラス・パルマスは最初に私に機会を与えてくれたチームでした。たくさんの人達が僕がテネリフェのチームが好きではないんだと思っているけれど、もちろんそんなことはありません。僕は僕の島のチームが好きだし、何も問題はないです。ただ、ラス・パルマスが機会を与えてくれたから、という以外にありません。
バルセロナとの契約更新については僕の代理人チームが動いてくれているところで、僕自身は落ち着いています。特に新しいニュースはないです。すべてが上手く行っています。
代表の試合前の記者会見ですが、クラブチームのことを聞く、契約のことを聞くのもOK。選手も答えたくなければ答えません。
Q12. 先程の質問にもありましたが、あなたはテネリフェ島出身でありながらライバルであるラス・パルマスに入団したので、今回が初めてテネリフェ島での試合となります。テネリフェのスタジアムで拍手を受けると思いますがそのことについてどう思いますか?
A12. もし明日拍手をしてもらえるならそれは嬉しいことですね。僕の生まれ育った土地だし、ホームに感じるスタジアムです。生涯忘れることのない試合になると考えているし、僕を含む3人のカナリア諸島出身者にとってよい一日になるよう期待しています。
テネリフェ島の新聞記者からすると、ペドリがラス・パルマス経由でバルセロナへ入団したのはずっと引っかかることのようです。
Q13. テネリフェ島で過ごした幼少期のことを聞かせてください。島の人たちの前で明日のような試合をすることを希望していたのではないでしょうか。
A13. テネリフェ島は僕のホームです。家族も友人もこの島にいるし毎回この島に来るのを楽しみにしています。僕が育った場所で子どもの頃の思い出もたくさんあります。家の外で遊んだり、海で遊んだり・・僕の子どもの頃の思い出はそんな感じですね。僕の人生にとってテネリフェ島はとても重要な場所です。
地元の質問から離れられない記者たち。島の中はきっとペドリの話題で持ち切りだったのでしょう。
たった10分間の記者会見ですが、その中に13もの質問が!子どもの頃の思い出から現在のスペイン代表のこと、クラブチームのことまで情報が盛り沢山です。
テネリフェのクラブに所属せず、ラス・パルマスを経由してバルセロナに移籍したことを根に持っているのかチクチク聞いているのがスペインらしい。
それにしても質問が長いですね。これでも結構端折ったんですが、おしゃべり好き、かつフットボールが好きな国民なだけある。
記者会見はおしゃべりの延長
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全体的にコミュニケーション能力が高く、おしゃべりが大好きなスペインの人々。そのなかでも新聞記者になるなんて、選びぬかれたおしゃべりに違いありません。
そんな彼らが集まるスペインの記者会見はやインタビューは、毎回山のような情報量と普段は見えない選手の人となりが分かる貴重な場。まあ選手もおしゃべり好きが多いでしょうから、記者とのコミュニケーションを楽しみながら質問に答えてくれていると信じています。
それにしても、毎回このおしゃべり達に囲まれて尚且つ記者を笑わせる久保選手すごい。次は久保選手の記者会見も訳してみようと思います。今週末のバスクダービーを希望!