オペラ「魔弾の射手」より序曲 作品77/ウェーバー
ドイツの民謡を題材としたオペラ。ドイツロマン派を代表する作品である。後のワーグナーにも多くの影響を与えているだろう。
〈作曲者〉 カール・マリア・フォン・ウェーバー
1786〜1826(39歳没)。ドイツ出身の指揮者・作曲家・ピアニストである。出身であるリューベックは当時、神聖ローマ帝国の一部であった。ナポレオン率いるフランス革命が神聖ローマ帝国を解散に追い込む時期に活躍していたとみられる。(ベートーヴェンと同じ時期くらい?)そのため生涯はドイツだけではなく、ロンドンやプラハなどヨーロッパ各地で活動した。
彼の作風はモーツァルトのジングシュピールから受け継いだドイツ語オペラを発展させた延長線上にあると感じる。編成や和声進行はシンプルながら、緻密な変化によって多様な表現を見せる。ベートーヴェンは古典派の革命と完成を求めたが、ウェーバーは古典派のさらなる発展を追求したと言えるだろう。その先で結局どちらの音楽もワーグナーの音楽に収束することは興味深い。
主な作品
オペラ 「魔弾の射手」「オイリアンテ」「オベロン」など9作
劇付随音楽 9作
交響曲2曲、ピアノ協奏曲3曲、クラリネット協奏曲3曲、ピアノソナタ4曲、歌曲「祝祭カンタータ」など
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〈曲の概要〉
1821年(ウェーバー34歳)、ベルリン王立劇場で作曲者自身の指揮で初演された。現在のコンチェルトハウスである。全3幕で演奏時間は約2時間である。作曲された当時はオペラといえばイタリア語のイメージが強く、まだドイツ語オペラは確立されていなかった。その中で発表したこの作品はドイツ民謡を題材にしており、音楽的にもモーツァルトの影響が大きい。そのため当時聴いていた聴衆にとっては、待ち侘びていたドイツオペラの登場だっただろう。
序曲は作品全体の中でも今日では特に演奏されることが多い。本編に登場する旋律やリズムを序曲でも演奏する方法は、後のワーグナーのライトモティーフへ影響を与えている。
またm fやm pなどモーツァルトの時代にはあまり見られなかった強弱が使われていることも特徴的である。これにより強弱による表現の幅が広まった。(序曲序奏でのヴァイオリントレモロでのmfは絶妙な膨らみを見事に表現している。)これも後のロマン派の作曲家に影響を与えている。
〈登場人物〉
・マックス - 主人公。若い狩人。射撃の腕は良いが劇中ではスランプ中である。(テノール)
・アガーテ - 森林官クーノの娘であり、マックスの恋人。(ソプラノ)
・ガスパール - マックスの同僚狩人。悪魔と取引をしている。(バリトン)
・エンヒェン - アガーテのいとこ。(ソプラノ)
・オットカール侯爵 - ボヘミアの領主。(バリトン)
・悪魔ザミエル
など
〈あらすじ〉
第1幕
17世紀のボヘミアが舞台である(当時のボヘミアは神聖ローマ帝国の一部であった)。マックスはアガーテとの結婚がかかる射撃大会の練習をしていた。しかしながらスランプに陥っており、自信を失っていた。そこに同僚のガスパールから告げ口を受ける。それは大会で勝つための方法であった。
第2幕
ガスパールは「狼谷へ深夜に来い」と言っていた。マックスはアガーテに狼谷へ行くことを言ってから向かった。その頃ガスパールは悪魔ザミエルに対してマックスの命と引き換えに自身の契約を伸ばすことと、魔弾をマックスに渡すことを約束していた。その魔弾とは「意図するところに命中するが最後の一発は悪魔の意図したところに命中する」というものだった。マックスは悩みながらもその契約にのる。
第3幕
射撃大会が始まる。マックスは魔弾を使用し良い成績を残していた。最後に撃った弾はアガーテに向かってしまうが、事前に隠者から受け取っていた冠によって弾かれ、ガスパールに当たり亡くなってしまう。隠者は森の住民であり、白い薔薇の冠を守る為にアガーテに与えたのであろうか。オットカール侯爵は不審に思いマックスを追求し追放処分を与えた。しかしながらまたもや隠者が仲介し、マックスは執行猶予の後でアガーテとの結婚を許された。
〈構成〉
自由なソナタ形式。オペラ全体から重要な旋律が抽出されている。
序奏(1〜36小節)
序奏はハ長調の問い掛けから始まる。このホルンによる角笛は森の中の荘厳で不気味な様子を的確に表現していると私は感じる。
弦楽器には二つのトレモロが登場する。
これは8分音符で演奏する。対して、
線が4本入っているのはとにかく細かく演奏する。細かい方が不気味な表現になるだろう。指揮者としてはこの二つのトレモロの違いを明確にする必要がある。
提示部〜展開部(37〜218小節)
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