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※ご注意

CAST

柿本　タネ（祖母）　
柿本　詠子（長女）
柿本　貴徳（泳子の婿養子）
柿本　早苗（次女）　
柿本　圭太（長男）　
柿本　茜（三女）　　

弁護士　立川　　　

 

  

ＳＣＥＮＥ１　　弁護士 

　
　柿本家の一室。祖母のタネが布団で寝ている中、家族の面々が取り囲ん
　でいる。

 

タネ　　　あーあーあー。

詠子　　　お婆ちゃん、しっかりして。
茜　　　　お婆ちゃん、死んじゃやだよー。
貴徳　　　医者は何て？
早苗　　　今晩もつかもたないかですって。
圭太　　　ったく、88にもなってサザンのライブなんか行くからだよ。

　弁護士の立川が入ってくる。

立川　　　あの・・・ごめん下さい。 

茜　　　　だってお婆ちゃん死ぬまでに一度でいいから伝説の年越し
　　　　　コンサート行きたいって言うんだもん。
圭太　　　だからって一緒に２時間踊るな。婆ちゃん死んだらお前の
　　　　　せいだぞ。
茜　　　　わーん、お兄ちゃんひどいー。

詠子　　　ちょっとこんな時にケンカなんかやめなさいよ！
貴徳　　　そ、そうだ。不謹慎だぞ君たち。
圭太　　　うるせえ婿養子のクセに。
貴徳　　　む、婿養子のクセにって言うなあ！！

立川　　　・・・あの、お話中の所、失礼します。

早苗　　　はい。どちら様でしょうか？
立川　　　はい、私、呼ばれて参りました････

詠子　　　嫌だ。ちょっと、早いじゃないの。見積もりなら明日に
　　　　　してって言ったでしょ。
貴徳　　　何の見積もりです？
詠子　　　決まってるじゃない。お葬式のよ。

圭太　　　おい、婆ちゃんまだ死んでねえのに何て事すんだよ！！
茜　　　　そうよ、詠子ちゃんひどい！！
詠子　　　しょうがないでしょ！忙しくなったどさくさで、値切るものも
　　　　　値切れなかったらどうするのよ！（貴徳に）ねえあなた。

 
立川　　　あの、私、葬儀屋の者ではありませんが。
茜　　　　あ、もしかして私のパソコン修理に来てくれた人？
立川　　　いいえ。

 
早苗　　　それとも私が頼んだ水道管修理の方かしら。確か土曜日だと
　　　　　思ったけど。
詠子　　　宗教の勧誘ならお断りよ！
圭太　　　まさか、楽天カードの取り立てかー！！
貴徳　　　う、うちには今テレビありませんよ！ワンセグもみてませんっ。

タネ　　　あーーあーーーあーーー！！

 
人々　　　・・・・・・・・・・・・・・

 

立川　　　「少し静かにせんかい」と申されておられます。

 

ＳＣＥＮＥ　２　　遺言

 

　落ち着きを取り戻し、座っている人々。

 

立川　　　自己紹介が遅れまして。私タネ様の顧問弁護士をしております
　　　　　立川と申します。よろしくお願いいたします。

貴徳　　　弁護士さんが何のご用です？
立川　　　実は私、タネ様のご依頼で遺言の作成に参りました。

茜　　　　遺言って・・・ねえ遺書のこと？
詠子　　　ちょっと縁起でもないこと言わないで下さい。失礼ですわ。
圭太　　　葬式の見積もり呼ぶ方がよっぽど失礼じゃねえか。

立川　　　タネ様も今年88歳、米寿になられ、いつ万一のことがあるかも
　　　　　しれないと、先日私に遺言の作成を依頼されておりました。
　　　　　しかし突然のご危篤の知らせに私、慌てて飛んできた次第で
　　　　　ございます。

詠子　　　とにかく今遺言なんて冗談じゃないわ。
貴徳　　　そうだ。縁起でも無い。場所をわきまえて下さい。
圭太　　　婆ちゃん危篤で大変なんだぞ。それどころじゃねえよ。
　　　　　悪いけど帰ってくれよ。
 

　立川を玄関へ追いやり、再び席に戻る詠子と貴徳、圭太。

立川　　　遺言の内容のメインはズバリ、遺産相続に関してです。

 
３人　　　（足が止まる）

 

圭太　　　何で足が止まるんだよ。
貴徳　　　君が止まるからじゃないか。
詠子　　　そうよあんたが止まるから進めないのよ、ねえあなた。
茜　　　　もう、お兄ちゃんも詠子ちゃんもケンカしないでよ。

早苗　　　ちょっと待って下さい。遺産って言われても。うちにはそんな
　　　　　もの無いと思いますけど。
圭太　　　そうだ。第一ここだって借家だろ。
茜　　　　お父さんとお母さんの生命保険のお金ももう無いしね。
詠子　　　そうよ馬鹿馬鹿しい。宝くじにでも当たったわけじゃある
　　　　　まいし。

立川　　　その通りです。
人々　　　ええ！！

立川　　　実はタネ様、十年ほど前の年末ジャンボで百万円の大当たり。
　　　　　私、こっそり管理をまかされておりました。

詠子　　　お婆ちゃん、黙ってたのね！
早苗　　　どうりであの頃、入れ歯を金歯に変えたと思ったわ。

茜　　　　すごーい、うちにお金あったんだ。
圭太　　　バーカ。百万くらい、ここのたまった家賃払って終わりだよ。
詠子　　　そうよ、わざわざ今話し合うほどの事じゃ無いわよ、ねえ
　　　　　あなた。
貴徳　　　やはりここはお引き取りを・・・・

 

立川　　　実はタネ様、その百万を元手に中山に行かれ・・・
３人　　　（足が止まる）

 

立川　　　第３レースの万馬券を見事的中。
人々　　　お婆ちゃん！！

立川　　　百万はあっという間に一千万に膨れ上がりました。

 
圭太　　　だから何で足が止まるんだよ、がめついな。
貴徳　　　君が止まるからだと言っとるでしょうが。
詠子　　　そうよ、あんたが止まるから進めないのよ、ねえあなた！
茜　　　　もう、話も前に進めてよ！！

 

ＳＣＥＮＥ３　　遺産

 

早苗　　　じゃあつまり、遺書を作ると言うことは、今からその遺産の
　　　　　分配を決めるということなんでしょうか？

立川　　　はい、タネ様より、いくつかの条件の提示があるそうです。
　　　　　私はその結果をもとに、遺産の相続に関する御遺言状を作成
　　　　　させていただきます。

 
貴徳　　　ちょっと待って下さい！
圭太　　　何だ婿養子。
貴徳　　　だから婿養子って言うなあ！
詠子　　　そうよ、一応あんたのお義兄さんなのよ。

貴徳　　　遺産の配分を決めると言うことはつまり我々が争うかも
　　　　　知れないと言うことでしょう。私は賛成出来かねますね。
　　　　　家族が遺産目当てに争うなんて、そんな悲しいことはありま
　　　　　せんよ。

 
圭太　　　格好つけんなよ。婆ちゃんの１千万目当てに結婚したくせに。
貴徳　　　するか！今初めて聞いたんだろうが！！
詠子　　　そうよ、大体結婚は、私が有無を言わさず押しきったのよ！
早苗　　　半分脅迫だったものね。
茜　　　　で、でもあたしも、家族が争うなんて良くないと思う。
　　　　　だいいち、今お婆ちゃん死にそうな状態なんだよ。

人々　　　・・・・・・・・・

 
詠子　　　・・・そうね、良くないわよね。
圭太　　　確かにみっともねえな。

貴徳　　　そうです。我々は遺産目当てに血を流すような、そんな愚かな
　　　　　家族じゃありませんよ。

 
立川　　　ちなみにその１千万ですが、当時急成長したフェイスブック株に
　　　　　投資した所、現在約１億円ほどに跳ね上がっております。

 
人々　　　いちおくぅーーー！？

 

貴徳　　　（裏声）ち、ち、血を分けた家族と言ってもいざとなれば他人。
　　　　　時には争うことも必要でしょう！！
圭太　　　話を変えるな！だいたいお前は元から他人だ！
詠子　　　何て事言うのよ、長女の婿を甘く見ないで！
茜　　　　わーん、愚かな家族になってるよー。
早苗　　　（立川に）すみません、お見苦しいものをお見せして。

立川　　　いえいえ。では、皆様だんだんやる気になったところで、
　　　　　遺言の作成を始めたいと思います。よろしいですかタネ様。

 
タネ　　　あーーーー。

立川　　　ああとおっしゃってます、始めましょう。
圭太　　　そのまんまじゃねえか。

 

立川　　　ここにあらかじめ、タネ様が提示する条件がいくつかご用意
　　　　　してございます。皆様には２人一組に分かれて頂き、その条件
　　　　　をクリアするように頑張っていただきます。
貴徳　　　いいんですかそんなゲーム感覚で！

立川　　　枠組みを発表します。１枠長女詠子様とその婿貴徳様。２枠、
　　　　　次女早苗様とわたくし立川。３枠長男圭太様と三女茜様。

圭太　　　俺らは馬かよ！

 
立川　　　競馬好きなお祖母様のご提案でして。
詠子　　　しかも何であんたまで入ってるのよ。

立川　　　単に頭数をそろえる為です。皆様にはそれぞれパートナーと
　　　　　協力したり、相談する権利が与えられます。
茜　　　　やだー、お兄ちゃんと一緒じゃ、もう負けが決まってるじゃ
　　　　　ない。
圭太　　　バッキャロー。ギャンブルの天才を甘く見るなよ。

 

立川　　　それでは、タネ様からの遺産を引き継ぐ為のいくつかの条件を
　　　　　発表させていただきます。

 人々　　　ごくっ。

 
立川　　　血がつながっていること。

貴徳　　　うわーー！！いきなり直球！！
詠子　　　あなたあ！！
圭太　　　へっ、勝負ありじゃん。

立川　　　「いさん」が漢字で書けること。
圭太　　　うわーーーーーーーーっ。
茜　　　　お兄ちゃんの馬鹿あーーっ。

立川　　　貧乏でないこと。
全員　　　きゃあーーーーーーーーーっ。

 

立川　　　以上、ウォーミングアップを終わります。

人々　　　ウォーミングアップするな！！

 

ＳＣＥＮＥ　４　　条件

 

立川　　　では本番まいります。第１の条件。「タネ様の事を大切にして
　　　　　いること」
早苗　　　お婆ちゃんを？

立川　　　タネ様はやはりご自分を一番大切にしてくれる方に、たくさん
　　　　　の遺産を残したいとお考えです。

 
貴徳　　　お祖母様、オムツの具合はどうですかあ。
詠子　　　お婆ちゃーん、ほらおいしいお粥よ、あーん。
圭太　　　いきなり介護始めるなよ！！

貴徳　　　ふふふ、婿養子のフットワークをなめてもらっちゃ困るよ。
詠子　　　チームワークだって完璧よ。ねえあなた。

 
茜　　　　お兄ちゃんどうしよう。
圭太　　　まかせろ。シャキーン。（紙を出して）婆ちゃんの為に徹夜で
　　　　　並んで取ったBTSの日本ツアーのチケットだ。

タネ　　　あーあーあー。

立川　　　喜んでおられます。
茜　　　　お兄ちゃんすごーい。
詠子　　　ちっ、まだまだ勝負はこれからよ。

 

立川　　　条件その２「明るいこと」

人々　　　はあ？

立川　　　タネ様は性格の暗い人間には、遺産は残したくないとおっしゃ
　　　　　っています。

 

圭太　　　ＹＯＹＯＹＯ！うちの婆ちゃん、イマ危篤！！
詠子　　　ねえねえこのインスタの写真見てえ、超「映え」ー。
貴徳　　　「隣の囲いにヘイが出来たって」「プー」ぷぷー。
茜　　　　みんな寒いよー！！

立川　　　「度胸が良いこと」

圭太　　　俺なんか、この前すっぽんぽんでバンジー。
詠子　　　この前私、ノーパンで買い物行っちゃった。
貴徳　　　アキバの中心で「オタク万歳」って叫べまーす。
茜　　　　ただの変態だよーーーー！！

 立川　　　「ギャンブルに強いこと」

圭太　　　キター。まかせろ！よっしゃ、キリン柄あ！
詠子　　　きゃー、一発ツモ裏ドラー。
貴徳　　　はっはー、君ババひいたね？
茜　　　　こんな家族やだよー。

 

立川　　　「動物が好きなこと」

貴徳　　　それと遺産とどういう関係があんです！！
圭太　　　文句言うなら辞退しろよ。
詠子　　　しないわよ！！自慢じゃないけど私達、金の亡者よ。
茜　　　　詠子ちゃんただの恥！！

貴徳　　　もっと常識的な条件を出して下さいよ！！
圭太　　　てめえ、うちの婆ちゃんが非常識ってのかよ！そうだけどよ！
茜　　　　お兄ちゃんも墓穴！！

立川　　　それでは次の条件です。「遺産を有効的に使えること」

 

貴徳　　　こういう条件を待ってたあ！！まかせて下さい。僕なら
　　　　　「遺産はまず貯蓄。先祖に感謝して子孫繁栄のために次世代に
　　　　　残します」
詠子　　　あなた！！完璧な模範回答だわ。（拍手）
貴徳　　　やっぱり遺産活用はこうでなくっちゃ、ねえお祖母様。

 

タネ　　　ぐー。

 

圭太　　　婆ちゃん聞いてねえぜ。
貴徳・詠子　　　きゃあああああ！！！！
早苗　　　お婆ちゃん、ほら起きて。眠ると危険よ。

 
立川　　　それでは盛り上がっている所で中間発表です。現在１条件
　　　　　１ポイントで、１枠１ポイント、２枠０ポイント、３枠
　　　　　２ポイント。

圭太　　　やった！！俺達トップ？

立川　　　しかしギャグの寒さで１枠３枠ともにマイナス３ポイント。
　　　　　よって２枠の早苗立川組が０ポイントでトップです。

 
１枠３枠　何でーーーー？！

立川　　　漁夫の利って感じですねえ。
早苗　　　うふふ、私２ページもセリフなかったのに。

立川　　　それではいよいよ最後の条件です。最後の条件にクリアした
　　　　　組は、特別ボーナスで10ポイントが与えられます。

 

人々　　　今までのポイントは何！！

 

圭太　　　くそーこうなったら本気だぜ。カモン！
詠子　　　こっちだって本気よ。アイムカミング！！
茜　　　　詠子ちゃんそれ危険！！

 

立川　　　それでは最終条件です。「遺産を受け取る資格のあること」