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あなたの食べるナスには種がありますか?

 この花はナスです。きれいですね。
 ただ、なぜか下向きに咲きます。なぜだと思いますか?

ナスの花は下向きに咲きます。
真ん中に雌しべがあり、黄色いのは雄しべで袋状になっています。


 黄色いのは雄しべですが、触っても花粉が手につきません。ナスの雄しべは袋状になっていて、その袋の中に花粉を一杯ためているからです。

 そして、袋の先端(写真では下側)に穴があいていて、そこから、めしべの先端に向かってポロポロと花粉がこぼれ落ちていくのです。

 家庭菜園などでナスの花が手に入ったら、白い紙の上でトントンとしてみてください。丸い花粉が穴から出てくるのがよくわかります。
園芸用語では雌しべのことを花柱(かちゅう)といい、その先端のベトベトした部分を柱頭(ちゅうとう)といいます。この柱頭めがけて、袋状になった雄しべの穴から花粉を落として受粉をします。
 ですから、ナスは自分の花粉と受粉して種が出来る自家受粉植物です。同じ花の雄しべと雌しべで受粉して種ができるというのは、環境適応力が非常に高い証(あかし)です。

栄養状態が悪いと左のように花柱(めしべ)が短くなり、花粉が落ちても受粉できなくなります。
栄養がいいと花柱(めしべ)はもっと長くなり、袋状になっている雄しべから落ちてくる花粉を柱頭にくっつけます。
自分の花粉で受粉するので「自家受粉」植物と言います。




このように花粉が雌しべの先端の柱頭にくっつくことで受粉が行われるのですが、ナスは株の栄養状態によって 雌しべの長さを変えてきます。土の肥料分が少なくなったり、暑かったり、水不足だったりすると、下の左側のスケッチのように雌しべ(花柱)の長さが短くなり、雄しべから花粉がこぼれても、雌しべの先端(柱頭)にくっつくことが出来なくなります。受粉して実をつけることより自分の体を守ることを優先するわけです。
花柱の長さは肥料をやる目安になります。

 受粉が行われると種が出来ます。ナスの実を切った時の黒い小さな粒々が種です。私たちが食べているのは、種の周りの果肉です。



 【実はここからが大切な話】

しかし、「ナスの種を見たことがない」という人がいます。
考えられる理由は3つあります。

ひとつ目は、若くて元気なナスを食べている場合。
ふたつ目は、早どりされた種がまだできていないようなナスを食べている場合。
栄養状態が悪いと左のように花柱が短くなり、花粉が落ちても受粉できなくなります。

みっつ目は、種子ホルモンをスプレーで散布して果実を膨らませたナスを食べている場合です。風が吹かないために雄しべから花粉がこぼれにくいハウス栽培などで行われています。

 完熟してから収穫する家庭菜園のナスや、株が成熟した秋ナス、そして、ゆっくりと生育をする有機栽培のナスに黒い種を目にすることが多いのはこのような理由です。




「あなたの食べるナスには種がありますか? 」
第1版 2024年9月20日発信
 
オーガニック農園 株式会社 しあわせ野菜畑
代表 大角昌巳

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