「カーリング魂。」 小野寺歩
「私の存在はカーリングが輝かせてくれ、私の魂はカーリングに宿る」
「カーリング魂。」 小野寺歩
北京オリンピック。
ロコ・ソラーレの試合を楽しみに観戦しています。デンマーク、ROCとの試合は見ていてずっとハラハラしていました。
もう完全に負けたと思っていました。それが、まさかの大逆転。
いやぁ~、カーリングは最後の一投までわからない。本当に「最後まであきらめてはいけない」ということを教えてもらいました。
オリンピック。
アスリートたちの言葉はとても重い。限界まで自身を追い込んだ努力と、世界の強豪の中で磨かれた体験から生まれてきた言葉は、洗練されていて光り輝いています。
だからこそ私たちは考えさせられ、明日への糧となるような言葉に、心が震えます。
バンクーバーオリンピックから、真剣に見るようになったカーリング。
この本は著者の小野寺歩さん(現、小笠原歩さん)が、ソチオリンピックに出場されたときに買った本です。
カーリングのことをもっと知りたくて、この本を読みました。ルールのことや心理的なことがよくわかりました。そうして、ソチオリンピック・カーリングを楽しみました!
久しぶりに、本棚から取り出して読み直しました。
小野寺さんは、北海道・北見市常呂町出身。
ロコ・ソラーレのメンバーも同じ出身地ですよね。まさに日本のカーリングの聖地であります。
この本はトリノオリンピック後に出された本ですので、トリノオリンピックの話がメインになっております。
そのトリノオリンピックでの話。
競技四日目、デンマーク戦。
このお話が心に残りました。
スキップ(司令塔)の小野寺さんはショットが決まらなくて、投げることが怖くなってしまったそうです。
カーリングでは最後にストーンを投げるスキップが、勝敗を決めるショットが巡ってくる場面が多く、とくに精神的に重圧がかかってきます。
それに加えて、オリンピックという大きな舞台です。精神的重圧というのは凄いものだったのでしょう。
「弓枝、私、もう投げられない。投げる順番を代わってほしい」
ずっと一緒にカーリングをやってきた林弓枝さん(現・北海道銀行の船山弓枝さん)に言ってしまうほど、精神的に追い込まれていました。
試合後
コーチの前でも、涙が止まりません。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私、もうスキップができません」
司令塔であり、チームをひっぱるリーダーでもある責任とプレッシャーというものは、私たちの想像をはるかに超える重いものなのでしょう。
思いきり泣いた後、家族と待ち合わせていた会場内の食堂に小野寺さんは向かいました。
向こうにみんなの姿が見えました。じいちゃんも母も姉もいます。
おじいちゃんが、小野寺さんに言葉をかけました。
「おう、歩、がんばったなあ。ばあちゃんも日本で、祈りながら応援しているよ。今日帰るけど、この後、全部負けてもいいぞ。それでも胸張って帰ってきなさい」
おじいちゃんは、泣いていました。
おじいちゃんは小野寺さんの精神的重圧をわかっていて、言葉をかけたのでしょうね。
「家族みんなでいっしょに戦っているんだなぁ」と感じた、印象に残った言葉でした。
そのあと、ミーティングでチームメイトから小野寺さんに
「このチームは歩ちゃんをリーダーとしてここまで来たチーム、だから私たちは、最後まで歩ちゃんにスキップをやってほしい」
この言葉に、小野寺さんの考え・意識が変わりました。
強豪、カナダ戦。
部屋のホワイトボードには、コーチがひと言。
「HAVE FUN!(楽しもう!)」
小野寺さんは自身でも語っているように、一生に1回、できるかできないかのショットを決めて、カナダ戦に勝ったのでした!
トリノでの彼女たちの活躍は、カーリングという競技のおもしろさ、楽しさを、テレビで観戦している人たちに伝えました。また、彼女たちの魅力で、カーリングを一気にメジャーに押し上げました。
その他、ソルトレイクオリンピック「シムソンズ」から、トリノオリンピック「チーム青森」までの小野寺さんの自伝を、臨場感たっぷりのカーリング誌上観戦として楽しむことができます。
また、 「氷上のチェス」といわれるように、奥の深い頭脳戦、心理戦、戦略、アイスリーディング、それから、スポーツ要素のスイーピングの筋力、長時間戦う体力、カーリングのルールやテクニックの解説も盛りだくさんです。この本を読めば、カーリングをより一層楽しめますよ。
私の存在はカーリングが輝かせてくれ、私の魂はカーリングに宿る
【出典】
「カーリング魂。」 小野寺歩 小学館
いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。