【絵本】「カクレンボ・ジャクソン」 デイヴィッド・ルーカス 訳 なかがわちひろ
「絵本の主人公なら、いちばんめだつように描いてあるはず。ところが、この本はちがいます。」
(訳者 なかがわちひろさんの表紙の言葉より)
「カクレンボ・ジャクソン」 デイヴィッド・ルーカス
カクレンボ・ジャクソンは、とっても恥ずかしがりやさん。
いつもまわりの背景に合わせた服を着て、目立たないようにしています。
いつも ひっそり かくれるように くらしていました。
「どこにいるのだろう」
絵本の中の、どこにいるのかさがしまわってしまいます。
あっ!いた!
カクレンボ・ジャクソンが、見つかるとなんだかうれしい。
「こんなとこに、いたんだ ジャクソンくん」
本当に、じっくり見ないとわからないくらい、背景に溶け込んでいるんです。
カクレンボ・ジャクソンにとっては
やっぱり、いえの なかが いちばん。
カクレンボ・ジャクソンは、ひとり
しずかに くらしていました。
ある日
カクレンボ・ジャクソンの家に
一通の手紙が届きます。
それは、招待状。
女王さまの おたんじょうびパーティに
あなたを ごしょうたい いたします。
カクレンボ・ジャクソンは、
女王さまのお城を、写真で
しかみたことがありません。
銀と金の宝石でできているお城は、
どんなにキレイなんだろうと妄想します。
けれども
カクレンボ・ジャクソンは、
はずかしがりやです。
カクレンボ・ジャクソンは、
ひとまえに でるのがきらいなのです。
パーティなんて でられるはずがありません。
カクレンボ・ジャクソンは、考えました。
きらびやかなお城に合うようなきらびやかな服を作ろうと。
きんの ぬのを じょきじょき。
ぎんの ぬのを ちくちく。
これなら、目立つわけがないと
カクレンボ・ジャクソンは、にっこり。
ところが びっくり!
なんと、パーティーは、
お城の中ではなく、庭で開かれたのです。
カクレンボ・ジャクソンは、
おもいっきり目立ってしまいます。
しかし
みんなは カクレンボ・ジャクソンを
じいっと みて、ためいきを つきました。
「なんて すてきな ふくでしょう」
女王さまや、王さまはじめ、いろんな人が
カクレンボ・ジャクソンに、服を作って
ほしいと頼むようになりました。
そして
カクレンボ・ジャクソンは、洋服屋さんに
なりました。
たくさんの友達ができて、毎日楽しく働きました。
ちょっぴり恥ずかしがりやの、カクレンボ・ジャクソンのまま
目立つのが苦手で、背景に合った繊細で
素敵な服を作って着ていたカクレンボ・
ジャクソン。ひょんなことから隠れた
才能が開花しました。
「苦手」の裏側には、すごく優れた
長所が、カクレンボしているんですよね。
きっと
一生懸命大好きなことをしていると
「苦手」という種から、大きな花が咲くのだと。
カクレンボ・ジャクソンは、そう
わたしたちにささやいてくれました。
【出典】
「カクレンボ・ジャクソン」 デイヴィッド・ルーカス 訳 なかがわちひろ 偕成社