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政治を「困りごと」から日常に溶かす

こんにちは。「issues」という困りごとを地元の政治家に相談できるWebサービスをつくっている富樫です。

先日知人にwith/afterコロナについて聞かれました。そこで私はこう答えました。

・withコロナでは政治意識が高まりを見せている
・afterコロナでは政治における市民リテラシーが重要になる

後者のafterコロナの市民リテラシーについては(コロナの前ですが)この記事で書きました。

今日は前者のwithコロナの政治意識の高まりに加えて、こんなことについて書こうと思います。
・with→afterの移行期には「政治を日常に溶かす」ことが重要
・そのために自分はWebサービス開発で何ができるのか

インターネット社会と民主主義について論じた書籍『遅いインターネット』も参考にしました。

政治意識はコロナウィルスの影響で高まった

先日の記事でも書きましたが、コロナウィルスの影響でSNS・メディアを中心に政治への関心が急速に高まりを見せています。

日本はコロナウィルスに影響を受ける都心部、目黒区長選挙の投票率は前回から8%の大幅アップの33.3%を記録。過去30年でも最高だったようです。

韓国では総選挙の投票率が66.2%と28年ぶりの高水準をマークし、コロナウィルスの影響も関連していると考えられているようです。

また、香港でもコロナの影響で労働組合が急速に増えています。

肌感覚としてもそうですが、投票率や行動からも、政治への関心は高まりを見せていると考えられます。

一時的な関心

ですが、ある意味でこれは「コロナウィルス危機」による一時的な関心であるとも言えると思います。

批評家の宇野常寛さんは『遅いインターネット』で人々が持つナラティブのトレンドについて、下記の図のように分類しています。

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簡単にいうと20世紀は映画やテレビドラマなどの「他者の物語」に人々は夢中になった。21世紀からは体験をSNSに投稿するといった「自分の物語」に夢中になっている、という話です。

さらに映画を非日常、テレビドラマを日常に区分して、4つの象限を作っています。これを政治的事象に当てはめると、下記のようになります。

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同書では動員の革命といわれたアラブの春や、ポピュリズムといわれるトランプ当選などを「自分の物語」と「非日常」に位置付けています。

これ準ずると、私はコロナウィルスによる政治意識の高まりも、煽動者がいるわけではないにしろ「自分の物語」「非日常」という2つの条件を満たし、この象限に入ると考えています。

つまり、一時の高まりにすぎないということです。これでは日常を取り戻した時に、コロナ期に意識を高めた人々は無関心層に戻ってしまいます。

「一時的な関心」を「日常的関心」にする

このことから、with→afterコロナでの移行期間には「自分の物語として」「政治が」「日常に組み込まれている」という状況をどうデザインするかが重要になると考えています。

この本では「日常的な政治への回路の創設」と表現しています。

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インセンティブの構造

なぜコロナ下ではここまで政治的関心が高まったのか。

それは「命に関わる」ということが最大のインセンティブ。他にも「自分の仕事や収入面が脅かされる」「子どもの教育が受けられない」などがありそうです。

「自分自身の状況が厳しくなっている」というところが強いインセンティブになっているので、このインセンティブと同じレベルもののを日常にも組み込んでいくというのは容易ではありません。

「困りごと」を入り口にする

私は困っていることを地元の政治家に相談できるサービス「issues」を開発しています。相談すると実際に政治家が行政に働きかけてくれます。

前述したインセンティブの構造と全く同じではないですが、issuesではそれと近い考え方として「困りごとを入り口にして、政治を日常に取り込む」というアプローチを取ろうとしています。

例えば、主婦の方に政治への関心がありますか?と聞くと答えはどうでしょうか。「保育園に入れなくて困ってませんか?」と聞いた方が深く共感を得られるのではないでしょうか。

またコロナ下の現在であれば、子供の学習状況の進捗についての問いかけだとどうでしょうか。

IT業界の方なら「行政手続き、使いづらくて困ってませんか?」だとどうでしょうか。

高校生なら「校則が厳しくて困ってませんか?」とかどうでしょう。政治に関心がありますか?と聞かれるよりも日常的に感じられるのではないでしょうか。

実際にissuesで扱うテーマは困っていることをベースに設定しています。

今までは賛成・場合による・反対という「意見」に近い形を取っていたのですが、今後こうした「困ってます」という自分ごとに近い形式のトピックを増やしていく予定です。

これによって、より身近で当事者声が高い政策づくりへの入り口を作れると考えています。

「社会は変えられる」という自己効力感を持たせる

政治に興味があるなしにかかわらず困っていることは存在すると思うので、そうした自分自身の困りごとをインターフェイスに置くこと、それがSNSに愚痴をいうなどではなく、政治で変えられること。

こうした自己効力感をどうつくるかが重要になると思っています。

このためには入り口をデザインするだけではなく、その困りごとがどんどん解決される必要があります。

コロナウィルスで困りごとの数・深さが増している時期に、入り口のデザインと併せて、困りごとの解決まで実現できれば、そのユーザーは自己効力感を持って使ってくれるはずです。

「困りごとから、政治を日常に溶かす」。それがwith→afterコロナの時期に私ができることだと思いました。

関連書籍

今回参考にした書籍です。まだ中盤までしか読んでいないのですが、最終章で宇野さんは今必要なものとして「遅いインターネット」を挙げています。ざっと見たところ、「スロージャーナリズム×コミュニティ」といったところを提案しているようです。

コレスポンデントのリリース以降、私もスロージャーナリズムには関心を持ち、実際に開発で関わっていたメディアもありました。ジャーナリズムも日常に政治を取り組むには紛れもなく重要な存在だと思うので、後半も読んで考えてみたいと思います。

関連リンク

その後、issuesで「困りごと当事者」の声を集める形式のトピックをリリースしました。


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