【手品】"VOICES" by Jeff Prace
(本ポストは手品人限定で、手品やっていない方は読んでもわかりません。残念ながらタネも解説していません)
Genii Convention時に購入したかもらったか、引き出しにしまわれていた作品なのですが(むちゃ失礼)視聴した結果、思いの外面白かったのでご紹介します。なお、ご本人はかなり若く、この年齢でこのクリエイティビティ、ということで、今後が楽しみなマジシャンのうちの一人になりました。
なお、本人の小冊子、Think Outside the BoxはTwitterで超簡易レビューしています。1つだけ作品がかぶっていました。そのかぶり作品が今回のDVDの目玉だと思います。
VOICES
off the cuff(即興)風・ビジュアルなマジックを集めたDVDです。本と同様、現象は日用品を使っており、ユニークな素材×シンプルな現象、という作品集です。クリエイティビティ刺激されるよい作品集です。クレジットによくJay Sankeyが出てくるのですが、確かにそうっぽい。
PV見るとほぼ現象が見えますので是非。(画質は悪い)
FLAVORLESS
現象:噛んだガムを新品のガムの箱で叩くと、一瞬で噛む前の新品の状態に戻ってしまいます。
ビジュアルに、噛んだガムが新品のガム(タブレット型)に戻ります。手法自体はクラシックなものですが、かつてあった同様の現象の商品 "Sticky Situation"とは異なり、板ガムではなくタブレット型のガム(クロレッツとか)でやるものです。日本でやる場合には、適切なガムを探すのはちょっと難しいかもしれません。ボトルで売っているタブレットガムを使うしかないかなぁ。地味に最後の改めが小気味良い。クレジットにJay Sankey。
CONTAINMiNT
現象:オレンジ味のミントキャンディー(Tic Tac)が、一瞬で白いTic Tocに変化します。(色がオレンジ→白に変化する)
残念ながらミントキャンディTic Tacが浸透している外国でしか演じられません。これは仕掛けの理由というより、「Tic Tacのオレンジ味はオレンジ色」(以下画像参照)という認識を暗黙のうちに活用しているからですね。いやしかし仕掛けは古典的ですが、色の変化が一瞬ですっかり騙されました。アメリカに留学してたのでよく食べてましたし...(笑)
CLASPED
現象:リングフライト。こぶしに握った客の指輪が消え、マジシャンのネックチェーン(長めのネックレス)につながって現れます。
服装制限が地味にあるのですが、「袖」じゃないという...。これは映像を見てください、としか言えません(笑)ただ、これはこの解決策を思いついたから試してみたかった、習作の感が否めません。メソッドとして優れている点があまりない。
FUEL
現象:Bicライターのロゴが、消えたり出現したり移動したりします。最後には客の手の中で...むっちゃロゴが増殖します(PV見て)
手品歴の長い方はこの現象説明だけで手法が思いつきそうですしPVを見ればわかっちゃうと思うんですが、ここにちょっとした仕掛けとハンドリングの工夫を施すことにより、現象にバリエーションができています。ギミックがついていますが、このギミックのためにこの作品を購入してもよいくらい。Bicライターを日常的に使う方は、マストバイ。途中のハンドリングに膝を打ちました。ギミックの特性を活かした良い手順。私はこの作品を見て、都々さんのストロー・ワープを思い出しました。
この作品を見て、ただ現象を日用品で達成するマジシャンでなく、ハンドリングやサトルティもしっかりとその素材を生かして達成する、クレバーなマジシャンだな、と改めて感じました。本人もOrganicという表現を使っていますがそのとおりだな、と。
STRAWSOME
現象:紙コップに入ったコーラを透明なストローで飲みます。 (ストローからコーラが見える)もう一口飲むときに、ストローを通るものがオレンジジュースに変化します。 コップの中身もオレンジジュースに全部変化しています。
Think Outside the Boxの実演が見られます。本を読んだときにはセットがちょっと面倒そうだな?と思いましたが解説を見て簡単さに驚いたので、今度まじでこれはやってみようと思いました。やる場合には、ちょいちょい我慢が求められますが(笑)なお、ドリンクに特に制限はなく、色が違うものであればなんでも演じられます。
※PVだと色変わってないように見えますがたぶんほんとはそんなことないはず
IFLITE
現象:リングフライト②。客から借りた指輪が消え、イヤホンのつながったスマホのイヤホンジャックあたりにイヤホンのケーブルにつながった状態で現れます。
イヤホン好きやなほんまに。iPhone付属の白いイヤホンを活用したリングフライト現象。現象は非常に面白いのですが、イヤホンを首にかけているカジュアルなシーンでしかやりようがなく、これをやるために1日待機しなくてはならないという意味では駄作(笑)作者の「イヤホンでマジックしてやろう」という気概が伝わってくる作品。
LIGHT FLIGHT
現象:借りたBicライターのロゴが、マジシャンのライターに移動してしまいます。
Bicライター限定(再)。先述のFUELの派生という感じです。手法、プレゼンテーション含めてほぼ同じ。(なので特にコメントがありません)ボーナストリックですしね。
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ということで、悪くはない。ギミックもついてるし、買って損した、とは思わない作品集だと思います。創造性を刺激されたい方は是非見るとよいかな、という印象です。
手放しに褒めるわけではないんですが、冒頭に書いたとおり、今後が楽しみなマジシャンですね。