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怠惰パラドクス 〜2022不変宣言〜

「誕生日を祝われるのが苦手なので非公開にしているけど、誕生日が来たら歳を取るのは事実であり、どこかのタイミングでその前よりも+1歳を名乗ることになるじゃん。だからさ、年が明けたこのタイミングで、今年中に27歳から28歳になることを表明しておくよ」

「誕生日を教えないってのは前に聞いたけど、なんでそんなことを今更のように表明するの?」

「10代のころは25歳で死ぬつもりだったし、25歳になったときは27歳で死にたいと思っていたから」

「また言ってる。で、今度は何歳に死にたいってことにするの?」

「まだ27で死ぬチャンスはあるよ」

「はいはい」

「……」

「……」

「次は35かな」

「そう、35までの目標は?」

「目標?無いよ、そんなもの」

「なんだ、やり残したことがあるから先延ばしにしたわけじゃないんだ」

「そんな真面目に人生やってない」

「それもそうか」

「単に俺が怠惰だからだね」

「怠惰?」

「うん、死ぬのも面倒くさい」

「怠惰もそこまで行けば才能だね」

「シオランが言ってたけど、怠惰な奴は良いことをするときも悪いこともするときも怠惰だから、悪いことをするときにブレーキになってくれる怠惰という性質は決して悪いことばかりじゃないって」

「なるほど、怠惰ってのは良くも悪くも何もしないってことになるんだね」

「そう、怠惰はプラスでもマイナスでもなくて、現状維持、何も変わらない」

「たしかに、君は何も変わってないね」

「こないだ会った高校の友達にもそう言われたよ」

「ふーん、面白い」

「面白い?」

「うん、そっちがシオランを引用したから、こっちはルイス・キャロルを引用させてもらうけど、"同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない"んだよ」

「赤の女王仮説……」

「そう、それ。君は"自分が怠惰だから、良くも悪くも何もしていない、現状維持をしている"、そういうつもりだろうけど、実は全力で走り続けているのかもよ?」

「"君は全力で走り続けている"なんて言われると、困るねえ。頑張りを認めてもらえて嬉しいような気持ちにもなるけど、僕は"全力で走り続ける"なんてことを続けていける自信は無いよ」

「だとしたら変わるしかないね」

「それは嫌だね。なぜなら僕は怠惰だから」

「また最初に戻っちゃった」

「君と話しているといつもこうだ」

「私も変わってないってことね」

「君も怠惰ってことだね」

「私は全力で走り続けてるの!」

「はいはい、というわけで、2022年も怠惰に生きていくぞ」

「私は全力で走り続けるよ」



2022年1月
歪 稚拙

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