【詩】インチキ ランチ
給食はきらい
にんじん きらいじゃないよ
ブロッコリーとも 仲良くやれる
牛乳飲めるし おさかな平気
でも
給食 キライ
真っ直ぐな線路が好き
ぼくは生まれたときすでに
三十歳だったのだろう、ね
給食たべ終わるの すごくきらい
風船はじけたみたいに
クラスメイトが 遊び出す
遊ぶの きらい 自由時間 きらい
「好きなことしていいよ」
好きなことって何? ぼくには無いよ
給食たべている間 とてもきらい
モノを噛んでいると 聴こえてくる
あのヒトとあのヒトの ののしりあう声
明りがついているのに なんだか暗い夕べ
ぼくは生れたときすでに
みなしごだったのだろう、ね
勉強好きで わるいですか
教科書よむの好きで わるいですか
友だち作らないの とても悪いですか
一点の疑念もない晴れ渡った解答まで
真っ直ぐに引かれた線を見ているの
あなたの話し声に搔き混ぜられるより
よほど 楽
ぼくならたった独りでも
線路に立っていられるさ
三十歳のはずなのに ぼくはまだ知らない
ぼくの中身は ぼくのきらいなものばかり
おまえ要らない 生意気言うな 首絞めていい?アハッ
ぼくの外見は ぼくのきらいなものばかり
知らんふりの昼の顔 わかったふりの夜の顔
ぼくは貴男をまだ知らない
太い舌を突っ込んでぐちょくちょ潰してシェイクして
ぼくを内側からどうしょもないヘドロにしてくれる貴男
ぼくは万力みたいな指に あごを挟まれ涙目で
ブルブル震える心臓は 真っ白なのに昏く沈んだ
地平線を見ているのだろう
そう、ぼくに毛が生えたら、ね
給食たべるの きらい
給食たべおわるの きらい
どっちがましか 今日も選ぶ
選んでいると 食べおわるのが今日もビリ
直線が好きなんて 頭おかしいみたいです
でも曲線は とても無理
その優しげに曲がった辺り とくにムカ
こちらの蔭にいらっしゃい
手招いている顔つきかい
ぼくを隠してくれたこと 一度だってないだろう?
ぼくの武器はたった一つ
味なんて感じないで飲み込みつづけるだけさ