私の生理が「個性」なら、そんなものはいらない
生理が近くなってくると、心の中では普段はおさまっているマグマが煮えたぎっている。
体も悲鳴をあげ、腹痛と下痢が止まらない。先日は生理がくる1週間前から毎日下痢が続いた。
病院に行ってピルを飲めばいいと言われるかもしれない。
もちろん試した。でも、慣れるまで毎日やってくる副作用の腹痛と吐き気と憂鬱な気分に、終わりが見えなくて。私は勝てなかった。
お金も、病院に行く手間もかかる。決まった時間に飲まなければいけない。それらを賭しても副作用に苦しむ。誰もが簡単に使いこなせるものではないのだ。
そんななか目にした花王の生理用品ブランド、ロリエのメッセージはとうてい受け入れられないものであった。
今回は、なぜ私の中でこれが許しがたいのか。2つの視点で考えてみたい。
1.それは個性?
公式サイトで大々的にうたわれる文言は、
生理を”個性”ととらえれば 私たちはもっと生きやすくなる。
見た瞬間、疑問が浮かぶ。
個性、とは?
女性に起こり得る体の「現象」ではないのか。
生理は個性と呼べるものだろうか。
私のなかの答えは否。
理由の一つは、「個性」という言葉で生理と女性の関係の理想(それも企業が勝手に作ったもの)を重ね合わせることが、生理と向き合う女性の在り方を一元化している。ということ。
長い引用となってしまうが、個性の辞書的な意味は以下の通り。↓
個性とは、それ以上に分割されることのできない、あるまとまりをもった全体であり、ある個体に備わる独自の本性である。(中略)人間に関していわれる場合、個性と人格という二つのことばはほとんど同義に用いられる。しかし、人格は他の個人から区別される、その人固有の本性に関していわれる場合もあれば、各個人に共通な構造に着目していわれる場合もある。これに反し、個性というのはあくまで、その人をその人たらしめる独自の本性である。
[伊藤勝彦]
"個性", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com/library/より
他の辞典では「パーソナリティ」と説明されており、おそらくポジティブな意味合いで用いられることの多い言葉だろう。
そして以下がロリエ公式サイトでのメッセージの一部抜粋。↓
“生理は一人ひとり違う”
頭ではわかっていても、女性同士だからこそ
ついつい自分にあてはめて考えてしまうのが、
リアルだったりする。
けれど、その違いを 受け入れ合うことができれば。
違いを“個性”ととらえることができれば。
今まで見えなかったことに気がつけたり、
そっとフォローしあえたり、私たちはもっと気持ちよく 助け合えるはずだから。
ロリエは、“kosei-ful”プロジェクトを はじめます。
引用:kosei-fulプロジェクト | ロリエ | 花王株式会社(https://www.kao.co.jp/laurier/kosei-ful_2020cp/)
このメッセージをみると、ロリエのサイト内で使われる「個性」とは
「他の個人から区別される、その人をその人たらしめる独自の本性」
だろう。さらに「他者」に「受け入れてもらう」ことを主眼としている。
生理時の症状は人によって全然違うが、その人たらしめる要素となりえるのか。
生理の重い人に「個性」として「受け入れる」ことは、ずっと向き合って生きていくことを強制する。もちろん企業にそのつもりはないのだろうが。
毎月くる心の乱高下も下痢も、腹痛も、腰痛も、全部をきれな風呂敷で包まれたことに怒りを覚えた。そんな生易しいもんじゃない。メッセージは意味を持たない。
そもそもピルを含めた治療による生理の辛さを「なくす」という可能性を無視している。
ロリエのスリムガードめちゃくちゃ好きなのに…
2.男性には知られなくていいの?
もう一つは男性の不在。
サイトのトップページでは、女性同士の理解を語っている。
お互い、あけすけに打ち明けることで、生理で休むことはおかしくないことだと、認め合おう。という意図だろう。
でも、それは生理用品を売る企業が率先して行っていくべき課題なのか。大きな企業はさらにその先を見ていてほしいというのが正直な感想だ。
性教育超後進国で女性の体への理解がままなっていないのは事実だけど、ある女性コミュニティに一人くらいは情報に敏感な人がいると思う(これは私の希望的観測に過ぎない…)。
もう男性を含めたコミュニティで女性の体を学んでいく、理解していくフェーズに入って行ってもらわなダメなんではないか。生理休暇を申請する相手は、管理職の大半を占める男性なのだから。
社会に、生理の辛さを認めてもらう、知ってもらうべきなのに、女性同士で「辛いよね」と慰め合うだけにもなりかねない。何もアップデートされていかない。
このロリエのサイトには、性教育の遅れやジェンダーギャップ121位たる日本の実状が裏返して示されているのだ。
3.まとめ
性教育に関する学校教育以外の働きかけによる進歩は無視できないし、素晴らしいものだ。それでも、10年前から変わらず、まずは女性同士の理解を深めることから始めないといけない現状。それをロリエの広告は示していて、私はまだ多くの女性の認識が変わるまでには時間がかかるような気がしている。
性教育後進国よ……
ましてや、何気なく男性の友人らに「生理で体調が悪いんだよね~」なんて言った後の気まずそうな顔撲滅計画達成の道のりは長い。
課題が山の如く積もったままなのを痛感した。
今回の騒動で私の考えたことは以上。最後にまとまりのない、しまりのないものとなってしまったが、ご容赦を。
また、ロリエのこのサイトでは生理の症状を宝石のように示す診断があった。それについての所感も言葉にしていきたい。
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