見出し画像

ちょっとだけユニークな企画の通し方

どんな仕事でも、企画を通すことってなかなかむずかしいことですよね。

書籍の企画も同じです。
たくさんの企画を考え、そのうちほんの少しだけ企画が通ります。

今回は、企画を通すときのユニークな方法を紹介しましょう。

●自分自身でボツにする企画

実用書の編集者は企画を考えることが、とても重要な仕事です。

プライベートの時間でも考えていることを含めると、他のすべての仕事時間の半分くらいは、企画を考える時間に使っているかもしれません。

出版社や人によって異なりますが、1人当たり年間5〜15冊くらいは刊行するのではないでしょうか。

一般に人から見ると、それほどの数ではないと思われるかもしれません。
しかし、「通る企画 = 売れそうな企画」となると簡単ではありません。

なぜなら「ボツとなる企画」が多数、存在するからです。

まず、自分自身でボツにするケースがたくさんあります。

「これは売れるかも?」「この企画は読者が多いのでは?」「コレ作ってみたい!」と思いつく企画はいっぱいあります。
しかし、翌日に考え直してみて「読者が多くなさそうだな−」「売れなそうだなー」という考えに至るケースが本当に多いのです。

また、思いついた企画を調べてみて自分でボツにするケースも少なくありません。

一番わかりやすいのは類書の売れ行きデータ。「あー、売れていないんだな−」という事実を知ってあきらめることは日常的な出来事です。

また、企画を検討するときは流行度を調べます。知人にターゲット読者に近い人がいればヒアリングしますし、ネットを活用して流行度や興味・関心度を調べることもします。
その結果、「自分で思っていたよりも流行っていなさそう……」と実感することは少なくありません。

これらの壁をクリアして「可能性がある!」と思ったら、どのような本にするかも考えます(もちろん、調べる前に考えている企画も多数ありますが)。
この時点で挫折するケースも少なくありません。「類書に勝てそうな切り口が出てこない……」というケースです。
「考えた構成の差別化が読者のためになっていない」「レイアウトが似てしまう」など、類書と同じような切り口のアイデアしか出てこないときです。

このようなときも、ボツにします。

上記のような段階で、自分自身で企画をボツにする割合は7〜8割程度でしょうか。

●社内でボツになる企画

上記の障壁を突破し、いい感じの本づくりになりそうなイメージが思い浮かんできたとき、ようやく企画書の作成に入ります。

この段階まで来ると、自分では「読者がいる、求められている、売れそう!」という自信をある程度持っています
もちろん、完全に自信を持つところまで届かず、企画書にする前に社内に相談するケースも少なくありません。
自信はあるが、売れると言い切れるくらいまでの自信がない企画は、企画会議に提案することで、みんなに意見を聞くこともあります。

それでも、自身での検討段階はクリアしているため、「可能性がある」と思ったから企画書の作成まで進むということです。

でも、自分では「売れるだろう」と考えている企画が通らないケースはたくさんあります。

理由はさまざまですが、最終的な理由は「売れそうにない」です。

つねに考えている中で、ようやく思いつき、時間を使って調べ、説得するために企画書を作ったモノが通らない。こういうケースは本当にたくさんあるのです。

●再度、同じ企画を出す

企画会議で食い下がったとしてもGOサインが出ない場合、通常はここであきらめてしまうでしょう。

しかし、ここで私からの提案があります。

同じ企画を、時間をズラして再度、提出する」です。

この方法は、以前からよく行っていることで、実際に何度も企画を通過していますし、再提出でようやく通った企画が売れるケースも少なくありません。

とくに類書が少なく「これから流行る」「今はアーリーアダプターのみ」というような企画は再度、提案すべきです。
「刊行が早すぎて売れない」「読者の関心がまだ薄い」というケースは多分にあります。
この観点からも、タイミングをズラして再提案することはオススメです。

そして、実際に再提出によって、企画が通ることは少なくありません。

なぜなら、ボツと判断した人のアンテナが広がっているからです。

企画が提出されたことにより、企画を判断する人に、そのテーマに対して初めて真剣に考える機会が生まれます。
一度、真剣に考えたのならば、その人の頭の中に残るのです。
すると、アンテナが広がり、日々の生活の中でそのテーマの情報を拾い始めます。

拾い始めた情報が印象に残っているので、出し直された企画を再検討するときに、以前ボツと判断した人も「多くの人が興味を持ち始めているかも?」となるのです。

また、何度も提案するということは、NOと判断した人も「出し直す = 思い入れが強い = 良い本になる可能性が高くなる」と感じます。

そのようなことから、再提出された企画が通ることがあるのです。

「自分が提案してボツになった企画と同様の本が他社から刊行され売れる」という経験は誰にでもあるでしょう。
これは書籍だけでなく、どんな業界の商品でも同じだと思います。

そのときは「判断する人の見る目がない」と嘆くのではなく、出し直す! です。

もし、再提出をせず、他社の類似商品が売れたのでしたら、「なんで再度、提案しなかったのだろう」と反省するくらいがいいと思います。

同じ企画を、時間をズラして何度も提案する!」をクセにしましょう!



文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

本づくりの舞台裏、コチラでも発信しています!

X(旧Twitter)シュッパン前夜

Youtubeシュッパン前夜ch

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集