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自分の性格に合った著者へのアプローチ方法

私は、初めての著者にアプローチするのに時間がかかります。

一方、すぐに当たりにいける編集者も少なくありません。

個人的には、後者のほうが、仕事ができる人だな〜って考えていますが、そうでもない部分もあります。

前者を「職人気質型」、後者を「行動力型」とし、違いについて考えてみました。


テーマが先か? 人が先か?


実用書の企画を考える場合、大きく分けて2つの流れがあります。

1つは、先にテーマを考えてから、そのテーマにマッチした著者に依頼するケース。
もう1つは、著者をベースに、その方がお持ちのノウハウなどの中からテーマを探すケースです。

私の場合は、先にテーマを考えてから著者に依頼する企画が多くなっています。

テーマを見つけたときのアイデアのベースが「本」であるときは、その本の著者にオファーすることが多くなります。
テキストだけの本を読み、魅力的に感じ、そのコンテンツを図解本にするような企画の場合ですね。

本以外のヒントを元に企画を考えたとき、たとえば、人との会話(著者以外)や、テレビ、新聞、ネットなどからヒントを得たときです。

このケースでは、著者は決まっていません。
テーマを決定した後に、著者を探すことになります。

このようにテーマを先に考えた企画では、そのテーマの専門家を探し、その方にアプローチすることになります。

テーマが先の企画では、多くの編集者がこの方法をとると思います。


著者へのアプローチ方法


テーマを先に考えた企画では、その後、著者へ依頼をしますが、そのアプローチ方法が編集者によって変わります。

大きく分けてみますと

  ・行動力型
  ・職人気質型

となるでしょうか。

「行動力型」は、著者のことを大まかに調べて、すぐにコンタクトをとる人です。

じつは、著者に依頼したとき、断られるケースがあります。

行動力型の人は、断られたら次の著者候補にアプローチし、その方にも断られたらその次の著者候補に声がけするということを繰り返します。

著名な方の場合、たとえばベストセラー作家への依頼は、多くの場面で断られます。

そのため、次々にアプローチしていくのです。

一方、「職人気質型」の人は、著者について深く調べてから依頼します

著書をお持ちの方でしたら、できるだけたくさんの著作を読み、本人の公式ホームページがあるならしっかりと読み、それ以外にもネット検索を行い、その著者のことをていねいに調べます。

「この著者とご一緒したい!」「この著者のノウハウを元にした書籍を多くの読者に伝えたい!」と思えるまでリサーチしていきます。

その後、アプローチするのです。

しかし、このような依頼の仕方は、時間がかかってしまいます。

そして、深く調べても断られるケースが少なくありません。

著者には、いろいろな方がいるからです。
きちんと自分のことを調べているような人間からのオファーでないと依頼を受けない方もいらっしゃいますし、テーマに興味をお持ちでしたら引き受けていただく方もいらっしゃいます。報酬を重視する方もいらっしゃいます。

もちろん、これらを総合的に判断されていらっしゃるでしょうが、どれを優先するかは人それぞれです。
また、スケジュールに合わないために断られるケースもあります。

こうしたことがあるため、いくら時間をかけて、その著者のことを徹底的に調べても、辞退されるケースがあるのです。

そうすると、職人気質型の人が考えた企画の著者は、なかなか決まりません。

たとえば、同じ期間の中で、行動力型の人が3人にアプローチする間、職人気質型の人は1人しかアプローチできません。

そのため、多くの場合、行動力型の人のほうが、早く著者が決まります

もちろん、行動力型の人が3名に依頼したがすべてNGで、その間に職人気質型の人が1人めのアプローチでOKをいただけた場合のように、職人気質型の人のほうが早く決まるケースもあります。

それでも、統計をとれば、行動力型の人のほうが、著者が決まる時間が短くなるのは間違いないでしょう。


行動力型と職人気質型はどちらがいいか?


上記のように考えますと、行動力型の人のほうがいいと思えます。
もちろん、行動力のある人は成果を出しやすいですから、仕事ができる方だと思います。

でも、行動力型と職人気質型のどちらがいいというのはない! といいたいです(私自身が職人気質型という理由もありますが……)。

たしかに、行動力型の人は仕事の進むスピードも速いケースが多く、たくさんの企画を立ち上げ、多くの本を作ることができるでしょう。

企画がたくさんあれば、ヒット作になる本の数も多くなりやすいのは事実です。
すべての本がヒットするわけではありませんので、多数の書籍を作ることは重要です。

でも、行動力型の人には、粘りが少なめの人がいます(もちろん、両方お持ちの方もいます)。

私は、読者の支持を得られる本にするためには「粘りが必要」と考えています。そして、支持する読者が多い本がヒット作です。

この部分は、職人気質型の人のほうが得意だと思っています。

一方で、職人気質型の人は1つ1つの本に時間がかかるので、多くの書籍を世に出すことができません。
粘りがあるため本の質が上がる。結果、ヒット率が高くなる可能性も上がるでしょう。しかし、刊行する本が少なければ、ヒット作の「数」は多くなりません。

ベストは、ヒット率が高く、作る本の数も多い人ですが、両方を兼ね備えているベストセラー編集者は、そう多くは存在しないと思います。

そうすると、一般的な編集者は、多くないヒットの中でも、ヒット作を何本出せるか、その数が大切になります。

そして、それを実現するには、

 ・たくさんの本を刊行する
 ・ヒット率を上げる

のどちらかになり、「たくさんの本を刊行する」は行動力型の人が得意で、「ヒット率を上げる」は職人気質型の人が得意なものです。

「どちらがいいか?」ではなく、「自分の性格に合っているのはどちらか?」だと思います。

自分の性格を鑑みて、得意なほうを磨いていくことが大切だと思うのです。

私は職人気質型の人間ですから、今後も粘り「ヒット率を上げる」を狙っていきたいと思います。

そして、その粘りは、著者にアプローチするときも同じです。しっかりと調べてから、著者にお願いしにいくことを続けていこうと考えています。



文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

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