フードエッセイ「アイスクリームが溶けぬ前に」 #33 加茂のたいやき(磐田)
期間限定という言葉に、日本人は弱い気がする。
そして、寒くなればなるほど、期間限定の食により触れたくなってしまうのは、食べ物から暖やエネルギーをとれるからかもしれない。
磐田の加茂のたいやきは、冬のシーズン(12月から4月頃)限定でオープンし、オーダーを受けてから焼き上げるお店なこともあり、新参者だと少し戸惑ってしまうかもしれない。でも、1度システムを覚えれば、店主のおじさんのノリと店のスタイルに愛着を抱いてしまう。
北海道産の小豆を使った、あんこの鯛焼きオンリー。焼き立てだから1つずつ食べてほしいというおじさんの願いをしっかり受け取りつつ、このたい焼きの皮がうまいんだよ~と言いながら、店主の気分によってお裾分けしてくれる皮の欠片たちがちょっとしたご褒美に変わる。
加茂のたいやきに足を運ぶとき、行きたいと思うときは、なんとなく体調が優れていないことが多い。今回久しぶりに訪れたときも、2週間続いた体調不良が底辺から少しずつ回復している途中だった。
体調が優れないときは、食べたいと思ったものを食べることが養生のポイントなのかもしれない。食べたいと思ったタイミングを逃すと、食べたかったはずのものへの欲求が一気になくなり、逆に食べたいと思ったタイミングをタイムリーに掴めると、通常食べるより何倍もの美味しいが溢れてくる気がする。
体調が回復した今、加茂のたいやきに感謝の気持ちを伝えたくなる。
ありがとう、そしてごちそうさまと。
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