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【WS 2025】青写真のワークショップレポート(おしゃべりコーヒー芸術祭)@能登半島 七尾市

2025,1/11-1/12の2日間。
石川県七尾市で青写真のワークショップを開催しました。

WS2日目:本府中の仮設住宅にて集まった皆さんと。


この企画は、「一般社団法人sien sien west」さんが主催。「sien sien west」さんは、災害支援、被災者支援をメインに行いながら、そこから派生する地域支援など、『支援』をキーワードに、誰かが誰かを支え合えるきっかけをつくっています。2024.1/1に起きた能登半島地震で被災した七尾市に拠点を置き、「民間災害支援ボランティアセンターおらっちゃ七尾」を運営し、日々災害支援活動を行なっています。

WS1日目:元石崎保育園にて親指を曲げるポーズは能登半島のイメージ。
70人を超える全国から集まったボランティアの皆さんと。


その中で今回参加した「おしゃべりコーヒー芸術祭」は、2024年の4月から継続的に能登に通い「sien sien west」さんと交流を持ち、1杯のコーヒーを通して、地域の方、被災者の方、支援する方を分けることなく、交流を図ってきたヴァガボンド「テンギョー・クラ」さんの企画第2弾。

美術家、ドラァグクイーンの「ヴィヴィアン佐藤」さんと一緒に、表現活動を通して、七尾の皆さんと交流しました。


1/10の前日から能登へ。埼玉から約500km。事前の天気予報では大雪の注意報が出ており、慣れない雪道に備え、タイヤ、チェーンの装備、立ち往生した場合を想定し、簡易トイレ、食料、水を常備して出発。

幸い、特に大きな困難もなく、現地に到着。1/11のワークショップ初日に備えました。

1/11は、元石崎保育園でワークショップ。
天気もちらほら晴れ間もみえるくもりで明るい。
ここは「民間災害支援ボランティアセンターおらっちゃ七尾」のステーションにもなっていて、3連休の初日、全国から70名を超えるボランティアの方が集まる場所。そこに室内で青写真(ジアゾタイプ)を制作するブースを出して、訪れる人たちと青写真の制作を通して交流を図りました。

七尾に住み支援活動をしている静岡出身の方は、地元静岡のショップカードと七尾のショップカードを置き、それらをコインと自動車のキーでつなぐ作品を制作。ジアゾ感光紙の上にレイアウトを考えじっくり待ちます。

配置された思いの詰まったアイテムたち

約8分。じっくり露光時間を待つ間に、支援のことや七尾のことなどをお聞きし、交流をすることができました。
露光時間を終え、熱で現像すると青い影が浮かび上がり作品が完成です。

自分自身の行動が所持品を通して表現されました。

続いて制作してくれたのは地元の方たち。
「特別写すものなんてもってないよ」「地震ですっかり生きる気力をなくしてしまった。今もとても辛い。」と、椅子に座り制作をしてくれました。

その中のお一人は、お財布を取り出し、そこについているたくさんのキーホルダー。ひとつひとつに昔旅した場所の思い出があり、そのお話をする中で会話が弾んできました。そして突然「自分はいくつに見える?」との質問。「75歳くらいですか?」と答えると、「もう87になるんだ。」と。少し笑顔が見え、「健康の秘訣はなんですか?」と聞くと、「趣味を持つことだ」と。「趣味はなんですか?」と聞くと、「畑仕事だ」と答えてくれました。「だから、今は春が待ち遠しい。」と。

お話ししている中で、露光時間が過ぎ、現像作業へ。
アイロンを当ててじっくりと青い影が浮かび上がります。
おもわず「わぁ!おもしろいねえ」という驚きの声。

大事な思い出のキーホルダーがついているお財布の青写真

仕上がった作品を見ながら「あなたも一生楽しめるこうした楽しみがあっていいね。頑張んなよ!」と励ましてくれました。

制作活動を通した交流を終え、記念写真をみると、お互いが出会った時とは違う表情をしていました。表現活動を通して、少しずつ暖かいエネルギーを生み出し合って循環していると感じました。

制作を終えて笑顔が生まれた記念写真

また「テンギョーさんが淹れてくれるコーヒーはとても暖かくて美味しいんだよ。作品もありがとう!きてよかった。」と笑顔で帰って行きました。

テンギョーさんのコーヒーブースでも。

ヴィヴィアン佐藤さんのブースでも。

1日のボランティアの活動を終え、ふりかえりの時間。
「sien sien west」の代表、今井健太郎さんが活動の様子を聞いていく。
振り返りの中で、
「今日は、ボランティアの方、運営・支援の方、地域の方、おしゃべりコーヒー芸術祭の人たちが一つの空間でそれぞれの活動を行なっていた。この空間がとてもよかった」
と言葉をかけてくれました。
様々な立場の人たちがひとつの空間に集うことは、時に目的や意図が異なり困難なこともあると感じます。ひとつの属性のひとたちの方が統制が取りやすく達成したい目的のためには合理的にも思えます。しかし、そうしたことよりも地域の方も気軽に訪れる場所であってほしいと継続的にこの場所を開き活動することで、様々な力が集まっているように感じました。そしてなにより、この空間にいる人たちが前向きで明るいことが印象的でした。

1日の振り返りをする「sien sien west」の代表、今井健太郎さん
WS1日目:元石崎保育園にて親指を曲げるポーズは能登半島のイメージ。
70人を超える全国から集まったボランティアの皆さんと。


充実した1日目が終わり、ゆっくり休み。2日目へ。
2日目は、日頃の行いが良いのか、この日はこの季節では珍しい晴れ。

本府中の仮設住宅での活動。

ここは、能登半島地震により、ご自宅での居住ができなくなった方への一時的な住まいとしての建設型応急住宅。

本府中町第一団地

12の地域から住民が集まる場所であることを教えてくれたのはこの本府中町第一団地自治会長の近畑さん。この日は「おしゃべりコーヒー芸術祭」に併せ、炊き出しの企画も併せて実施してくれました。

近畑さんが描いてくれたホワイトボード。

近畑さんは、事前にホワイトボードを用意し、地域の人たちにどのような内容の企画が行われるかアナウンスしてくれていました。

「コミュニケーションとセレブレーションのワークショップ」に少しずつ参加者が現れます。

この日は、晴れていたので野外にワークショップブースを設置。
サイアノタイプで青写真を制作する環境を整えました。

素敵なドームに入ったお花の飾りを持ってきた方は、地域で開催されたイベントに参加した方へのプレゼント。仮設住宅に飾っているもの。

30年ぶりに買い替えたへび年にちなんだヘビ皮の財布と、小銭をモチーフに制作。


もっているものを用意できなったので手を撮影したいと自分の手を撮影してくれた方。

背中に感じる陽差の暖かさを感じながら参加者との交流を図ります。

お昼には炊き出しのカレーをいただきました。身体が暖まります。

参加者が途切れた合間に少しまちの様子を見に行きました。

ブルーシートを貼っている屋根や壁、ドアの家屋。
公費解体中の家々がありました。


会場に戻り、自治会長の近畑さんから「BODY PRINT」を撮りたい!とお声がけいただきました。ポーズを決めてもらい、約15分。少し傾いた陽差で撮影。

こんなに「ゆっくりここの青空をみたことがなかった。ここでのはじめての体験だ。」と話してくれる中、12の地域から集まる人たちとの対話や行政への要望、地域で起こる課題への対応へのやりがいと苦悩をぽつぽつと伝えてくれました。そうした会話で露光時間が過ぎ、身体を起こすと、くっきりと影が残ります。

そして現像すると、

青空に軽やかに走っていくような自治会長さんのイメージが現れました。
これには、大きな歓声が上がり、拍手が生まれました。
集まる人たちに撮影の時のポーズをとって撮影会も。

近畑さんは、作品を前に「仮設(本府中町第一団地)の未来に向けて躍進する!」ってタイトルにしましょう!と集まった皆の前で力強く宣言しました。私は、撮影時に日々の様々なご苦労もお聞きしていたので、満面の笑みで立つ自治会長さんの姿に大きな勇気を感じました。

WS2日目:本府中の仮設住宅にて集まった皆さんと。


青写真は、もともと建築図面の複写に用いられる技術。その図面に描かれたものが未来に実際に実現することから、未来の計画や理想的な状態を示す言葉で、未来図とも呼ばれます。

今回2日間という短い期間での活動でしたが、能登半島全体、そして七尾の復興が1日でも早く実現する「青写真」が描けたならとても嬉しいです。

最後になりましたが、企画に参加してくださった皆様。貴重な体験をさせていただいた「一般社団法人sien sien west」の皆さん、企画で呼んでくれたテンギョーさん、一緒に活動を行ったヴィヴィアンさん、制作アシスタントのあやめさんに心より御礼申し上げます。ありがとうございました。


北國新聞(2025年1月13日)掲載




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Shunya.Asami NOTE
⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター