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【WS 2024】瑛九のフォトデッサンに触れて2種類の日光写真を制作しました。

2024.11/10「瑛九へのオマージュ展」関連企画として「フォトグラム/フォトデッサンワークショップ」を開催しました。

参加者の制作した作品

冒頭、カメラを使わない写真表現「フォトグラム」の概要を説明。1835年頃のタルボット、1918年頃のクリスチャン・シャート、1921年頃のマン・レイ、1922年頃のモホイ・ナジのそれぞれの制作意図や作品を共有。その西欧の写真表現を受け、1930年頃に瑛九が制作したフォトデッサンを改めて鑑賞。フォトデッサンで目指したことを探りました。


ワークショップ会場のONVO / コミュニティスペースは、展覧会場の柳沢画廊と歩いて数分の距離。

概説の後、ジアゾタイプの感光紙を用いて、光と感光面で写真が制作できる感覚を掴みます。その後、歩いて足元の素材も探しながら、柳沢画廊へ。

瑛九のフォトデッサン『夜の子供達(瑛九フォトデッサン集-真昼の夢-より)』を鑑賞。またフォトデッサンに使用された型紙や、写真家細江英公が撮影した瑛九のフォトデッサンの制作風景も展示されていて、当時の制作を想像する時間となりました。

『夜の子供達(瑛九フォトデッサン集-真昼の夢-より)』瑛九 1950年作
『フォトデッサン型紙16』瑛九 制作年不明

3階のフロアには、現代作家たちの瑛九へのオマージュ作品が展示されています。私の作品は、『現在の青図-瑛九のアトリエの窓光-』。瑛九のアトリエの窓に感光布を当て、約20分の露光を得て撮影したサイアノタイプです。アトリエの解体前に現場に入り、窓を開け、アトリエをに入る光と風を受けて撮影した等身大の写真を展示しています。

『現在の青図-瑛九のアトリエの窓光-』浅見俊哉 2023年作


その後、ワークショップ会場に戻り、ジアゾタイプとサイアノタイプで作品を制作。ポジ像でイメージを得られるジアゾタイプとネガ像でイメージを得るサイアノタイプ の表現の違いも確認しました。


露光時間中に型紙を動かして動きを出したり、ペンライトの光で部分的な焼き付けを行ったりしながら、「画家の立場から印画紙を使う。」「デッサンや版画をやるような気持ちで印画紙を使う。」「画家として印画紙をとりあげる態度である」と1955年リビングデザインの中で瑛九が発言しているように、光と光に当たる感光面を用いて、絵や版画を制作する視点で作品制作を行うことで、瑛九の制作や表現への理解を深めました。

参加者からは、「制作することで漠然と作品を観ている時と比べてとても細かいところや考えまで想像しながら作品を観ることができた。」、「デザイン的にフォトグラムをつくるのではなく、絵を描くという感覚で制作をすることで、作品に物語性を込める制作ができた。」といった声が上がりました。

カメラを使わないフォトグラムの表現は様々な作家が様々な方法で行っていますが、画家や版画家としての態度を持ち、1930年頃に入ってきた西洋の表現をそのまま鵜呑みにすることなく、独自の態度と表現方法を持って作品制作を行なった瑛九の独自性と創造性をワークショップを通して改めて実感しました。

ご参加いただきました皆様、また会場提供していただいたONVO / コミュニティスペースの皆様に深く御礼申し上げます。

瑛九へのオマージュ展は24日まで。ぜひご来場ください。

□以下展覧会詳細

「瑛九へのオマージュ展」


●参加アーティスト:

瑛九、靉嘔、池田満寿夫、細江英公、青山恭之(アトリエ・リング )、浅見俊哉、塩﨑由美子、渋谷和良、鈴木のぞみ、高草木裕子、高島芳幸

●コンセプト:

瑛九は、戦後日本の美術界におけるアバンギャルド的な存在であり、多くの若手芸術家に多大な影響を与えました。また教育関係者とも交流があり、浦和のアトリエは、“瑛九のサロン”と呼ばれ、自然豊かな牧歌的環境の中で文化を育む起点となりました。

平屋のアトリエ兼住居は、我々の保存活動の甲斐もなく、今年1月5日に取り壊されてしまいました。アトリエの記憶は永遠に、我々の深層心理に存在することになりました。

瑛九の幅広い表現手段による作品の数々や、デモクラート美術家協会、創造美育運動などを検証すると現代にも生かせることが多いことに気づきます。本展では“瑛九アトリエを生かす会”の活動を振り返るとともに、調査研究報告書やアトリエ解体時に譲り受けた建具や庭木、その遺品から新たに制作した作品、瑛九へのオマージュ作品などが展示されます。また、生前の都夫人と懇意にしていた方々が保管する、瑛九への想いを繋ぐ貴重な作品もご紹介します。

●展覧会ウェブサイト:

https://eiq2023.wordpress.com/

●会期:

2024年11月8日(金)〜2024年11月24日(日)

●会場:

柳沢画廊

〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂2-14-16

http://yanagisawagallery.com/index.html

●開館時間:

11:00 〜 18:00

●休館日:

水曜日、木曜日

●入場料:

無料

⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター