質の高いサービスを提供する(STEEEP)
質の高いサービスを提供することは、医療機関や介護事業所の経営者にとって主要な責任の一つです。今回は質の高いサービスを評価するための有効なフレームワークであるSTEEEP(安全性、適時性、効果性、効率性、公平性、患者中心性)の各要素について解説します。
1. 安全性(Safety)
医療や介護サービスの安全性は、非常に重要な要素です。この安全とは、患者や利用者の身体的・精神的な安全を意味します。安全性は、設備の安全性を保証し、エラーや事故の予防に取り組むことから始まります。さらに、スタッフへの安全教育や意識向上の取り組み、安全に対する継続的な評価とフィードバックも重要な要素です。また、患者や利用者の個人情報の保護も含まれます。このような多岐にわたる安全性の確保は、高品質なサービスの必要不可欠な要素であり、組織全体の信頼と評価を高める上でも極めて重要です。
2. 適時性(Timeliness)
サービスの提供は迅速かつ適切な時期に行われる必要があります。これは患者や利用者の満足度と結果に大きな影響を及ぼします。例えば、急性の病状や緊急のケアが必要な場合、速やかに対応することが求められます。同様に、適時性は緊急ケアだけに限らず、予防や慢性疾患の管理においても重要です。患者や利用者が必要とするケアを適切なタイミングで受けられるようにすることが求められます。
3. 効果性(Effectiveness)
サービスの効果性は、提供されるサービスが科学的に証明された効果を有するものであることを意味します。これには、最新の研究に基づいた効果的な治療法や介護方法の利用も含まれます。さらに、スタッフの教育と継続的な学習も重要です。これらにより、患者や利用者に対するサービスの質が向上し、結果的には組織の評価と信頼性が向上します。科学的に証明された効果については、人を対象とした研究が第一優先であることは言うまでもありません。
4. 効率性(Efficiency)
効率性は、資源(人、モノ、カネ、時間、情報、技術)を最小限に抑えながら最高の結果を得ることを目指します。これには、プロセスの改善や不必要なサービスの削減などが含まれます。テクノロジーの活用がまず思いつくところですが、成果とプロセス(ワークフロー)を書き出すことから始めることをお勧めします。
5. 公平性(Equity)
医療や介護サービスは、患者や利用者の人種、宗教、性別、年齢、経済的地位などに関わらず、すべての患者や利用者に対して公平である必要があります。日本においてはまだまだ人種や宗教等の違いにより、医療・介護サービスの違いは出てきません。しかし容姿やいわゆる性格などの違いによって、提供者の心持ちが動いてしまいます。これはある意味では仕方のないことです。そのため組織として公平性を達成するために、個々のスタッフへの組織的な意識づけ(文化作り)や手順の見直し・改善を継続します。
6. 患者中心性(Patient-centerdness)
患者中心のケアは、患者や利用者のニーズと期待を中心にサービスを設計・提供することを意味します。これには、個別的な計画の作成、意思決定への患者の参加、コミュニケーションの強化、患者や利用者の経験(Px: Patient experience)と満足度(PS: Patient satisfaction)の追求が含まれます。患者中心のケアは、高品質なサービスの核心となる考え方であり、組織の評価と信頼性を向上させる上でも重要な要素です。
おわりに
これらの原則は、質の高い医療や介護サービスを提供するための基盤となります。経営者は、これらを組織全体に浸透させ、継続的に評価・改善していくことで、医療機関や介護事業所の品質と評価を最大限に引き上げることができます。ポイントは、継続的な改善です。気合を入れて短期的に行うものではなく、PDCAのそれぞれを定期的にセットして、日常業務の一環として改善していくことが、質の高いサービスの提供を可能にします。
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