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さいさんの地方創生 note【東京一極集中問題のおさらいとその本質を考える②】

リンクの前回は【「多極分散」という本質を思考する】として、

多極分散という言葉を使った時、多くの人がお金と権力を分散させるイメージを持ちます。つまり第二、第三の東京を日本のどこにおくかという思想、考え方です。
 
確かにリスク分散という視点では札幌や福岡。あるいは新潟のような地政学的に完全に条件の異なるエリアにバックアップ的な機能を持たせることで、どこかがダメでもどこかでカバーできる状況は作れます。
 
しかしこれ、本当の意味で多極集中と呼べるのでしょうか?

として新幹線の時間になりました。
今日はその続きですね!

☆まずは人口データを見てみよう

東京(*以下「東京」のみの語は、23区を傑出した中核とした関東圏を指す)と呼ばれるエリアは明治時代に皇室を移し、富国強兵の名のもとに中央集権体制を取り、今に至る基本をつくってきました。
 
とはいえ、1880年当時の人口を今の都道府県におきかえてみてみると、東京都の人口は17位に過ぎません。大阪府に至っては34位です。1位・石川県、2位・新潟県や山陰エリア等の「米所×樽前船」という日本海側が栄えていたことがわかります。これは米農業中心の江戸時代における藩やその経済(貿易・流通)の力が反映されているからと言えるでしょう。

それが1920年には東京都人口370万人、大阪府260万人に対し、石川県人口75万人、新潟県177万人とわずか40年でここまで変わってしまうわけです。その後も東京都は人口を増やし続けて戦前の1940年には700万人を突破。戦後もほどなく人口爆発の中心となり1962年には1000万人を超え、現在の状態に近づいています。人口を吸い続けているようなイメージですが、ここからの60年くらいは微増、高止まりという方がFACTとして言えそうです。実際、石川県は戦後の75万人を120万人くらいにまで回復させていますので、増加率としては、むしろこちらの方が伸びているともいえるので。
 
何よりも、1960年に発足した池田勇人内閣による「所得倍増計画」で行われた太平洋ベルト地帯による産業構造転換は、国内人口にも大きな影響を与えています。戦後人口の対比ではその象徴といえる愛知県が280万人から現在は750万と3倍弱の伸びを見せ、三重や静岡もほぼ倍増という伸びになっています。

つまりですね、人口問題は経済(産業構造)問題ということです。

稼げる地域に人は移動する。
そして移動する「目的」は「幸福」になりたいから・ということです。

直近だと、日本の若者たちが海外流出していくのも同じ理由です。
経済の豊かな国で機会をつかみたい。
最低時給1000円の地元より最低時給2500円の海外。学歴格差をひっくり返す為の環境(キャリア)が、日本にはない(と思い込んでいる)から。

このような若者が日本にいても意味がないと感じるような環境を作った人達が、よりよい状態を求める「人」として当然の行動に対し、法や規制で縛ろうとする。それ自体がナンセンスなんです。
 
人を動かそうとするならば、動くだけの動機となる「環境」をつくる。
環境を創るためには、規制を廃し、減じて、民間の自由を増やすことです。

先の池田内閣では1000億の政府支出と1000億の減税を同時に行って、わずか4年余で所得倍増を達成し、かつてない財政面での成果もあげました。それこそが結果を出す「政策」というものではないでしょうか?
 
増税や社会保障費の負担増で労働世代の財布からがっちり奪っておいて、お情け的にお釣りを渡すような政策では、結果が出ないのは当たり前です。(*1960年の初任給は約2万円で、現在の1割程度。令和における1兆円以上の減税に相当する)

☆地方への人口移動は「目的」ではない話

さて、ここからは公の逆視点で民から見るとわかりやすいかと思います。
 
あなたは「不幸」になってでも、日本の「人口」問題解決の為に指示、命令された「地域」に住むのですか?

という問いの中に、多くの答えがあると思います。上記でざっと見てきてもわかるように、人口の動態は「経済」に大きく左右される。
 
人として自分を家族を幸せにしたい。
その為の土台となる「稼ぎ」が必要。
だから、その機会がより多く得られる可能性のある場所に向かう。

現在の東京は阪神・淡路大震災を機に、より多くの本社機能を集中させることにもなりました。大学の大半もこの東京圏に集中しています。18歳~20歳の大学進学を機に若者が東京に集まり、日本の会社の集積地で就職活動をすることは、環境的側面からは止めようがありません。

実際には会社や公務員として生涯を遂げる人は全体の1割程度に過ぎないにも関わらず、私達はこの1割を「普通」と呼んで、その1割があたかも多数派で、その道を外れてしまうと人生そのものが終わってしまったり、負け組になってしまうかのようなイメージが植え付けられています。

しかも、経済再構築のポジションでも東京都が傑出していることがこの傾向に拍車をかけています。東京都はスタートアップ支援に200億を超える予算がついていて国内では断トツ。スウェーデン等の国と同等規模の予算があるのでパワーが違いますね。2位の愛知が120億で3位の大阪が15億でいきなり一桁なくなりますから、この格差が極めて厳しいこともまた理解する必要があります。

つまり、若い人がやりたいこれからの産業、新技術といった夢や可能性を感じる職業、仕事もまた、東京に集積してしまっている構図なのです。
うちの長野県とかだとスタートアップ!とか県や国立大が絡んでやって1位の褒賞が10万(爆)ぽっちとかですよ。審査員のギャラ以下みたいな感じで「まともなやつほど出ない。時間がもったいないだけ」と界隈では言っております。はい、悲しいですね。

というわけで、この環境下で補助金や規制をやれば国民が人口移動するなんてやり方、考え方自体がそもそも誤りなんです。

その無理な環境の中で「多極分散」を実行し、日本の持続性、未来を少しでも良い方向へ変えていこうとするならば、地方、地域の経済を再構築した新しいモデルを可視化しなければいけません。地方でも幸せになれる「人」の姿を実証、実行し、とにかく積み重ねること以外にはありません。

政策の意味では中央集権を緩め、地方に予算と権限を自ら渡すことが一丁目一番地でもあるのではないかと思います。予算や権限を手放さないままで、駒のように人だけを都合よく動かすことはできません。引っ越したら100万あげるみたいな話を国レベルでやるのは愚策でしかないのです。

そのうえで、この新しいモデルに対しきちんと投資することです。

ということで、そんな地方の一手は何かいな?というあたりを実践ベースで次回に続きたいと思います。では!

*おまけ【1961年1月・施政方針演説 池田勇人 抜粋】

こんな総理が欲しいです。自民党さんと総裁候補の方々よ。
お手すきの方は読んでみてください(金額は×10で今と同等という感じで)!

【この予算の最重点は、申すまでもなく、減税、社会保障及び公共投資であり、平年度1138億円に上る所得税と法人税を中心とする国税の軽減を初め、低所得層中心の社会保障費636億円、公共事業費689億円をそれぞれ増加計上しましたが、これはわが国財政史上空前のことでございます。さらに、文教の刷新充実と科学技術の振興に努め、貿易の振興と対外経済協力の推進をはかり、中小企業及び農林漁業の近代化と振興に特に配慮いたしました。

地方行政水準の向上と後進地域の開発については、地方の財政力の向上をもって足れりとせず、政府におきましても積極的な助成の道を開いたのであります。これにより、政府活動は、その全分野にわたって画期的な改善と前進を見ることは明らかであり、経済の成長が予算を通して国民に何をもたらすものであるかを如実に示すものであると思います。

しかも、本予算のもたらすものは、長期経済計画のほんの序幕にすぎず、この種の努力を年々歳々しんぼう強く積み重ねることによって、わが国の福祉国家としての内容はいよいよ豊かさと明るさを加え、先進諸国の水準に迫る日の遠くないことを確信するものでございます。

私は、わが国の福祉国家へのたくましい前進にあたって、いわゆる低所得層に属する不幸不運な人々に対する配慮に力点を置きつつ、ようやく体系を整え始めた社会保障制度の合理的発展と充実に思い切った努力をいたしました。しかし、社会保障に関しまして、国家をサンタクロースのごときものと考えることは間違いであるといわれておりますように、私は生活保護を必要とする状態に陥ることを防ぐとともに、この状態から自主的に立ち上がる機会を豊かに作り出すことを、われわれの長期経済計画の大きい使命の一つであると考えておるのであります。

雇用の状態は、近時著しく好転し、職種においてはもとより、地域によっても求人難を訴える向きもあります。しかし、わが国には、昭和37年より向こう3年間に500万人に及ぶ大量の生産年令人口の増加が見込まれるとともに、不完全就労の状態にあえぐ多数の労働人口がございます。
われわれの長期経済計画は、各人の能力に応ずる立派な職場を豊かに作り出すとともに、産業構造の変革に応ずる労働力の適正な配置をはからなければならぬ役割を持っておるのであります。

われわれがもくろんでおります経済の成長率は、その新規就労人口に見合って定められたものであり、従って、技術者、技能者の養成、職業訓練の拡充、雇用の流動化の促進等は、本予算の策定について特に意を用いたところであります。このことが、勤労人口、特に青少年に明るい希望と誇りとをもたらすことになると信じておるのであります。

所得倍増計画の使命は、申すまでもなく、地域的、構造的所得格差の解消を期することであります。われわれは、この計画の実行によって産業構造の高度化を実現するとともに、雇用の流動化を促進し、もって所得格差解消への条件の整備を急がなければなりません。さきに述べた社会保障の拡充と中小企業と農業の近代化は、後進地域の開発とともに、われわれが特に力を置かなければならぬ課題であります】



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