ミステリアスに描けないものか3
ずいぶんかかってしまいました。長く聴く気がしなかったエレカシの曲が聴けるようになりました。あのパワーを受けとめるためには、こちらにもパワーが必要です。ファスティングのおかげで、体も心も少し元気になってくれたようです。自分にも他人にも分からない軽い鬱だったのかもしれません。何もかもデトックスできればなあと思います。
【第二場…初めての冒険】after
わたしは、ゆらゆらと揺られながら眠っていました。カプセル型のベッドは体に合わせてピッタリしているので、安心です。すると、ふわりと体が宙に浮いて目が覚めました。
『カプッ!』
かじるような音が近づいてきます。
『シャリッ、シャリッ』
どういうわけか、わたしは、この音が嫌いです。それでも、じっと我慢していると、
「そーら!」
と声がします。今度は、宙に放り投げられました。わたしの体は、固い殻で包まれていて、自分では動けませんから、少しでも遠くに行けると思うと、うれしくなります。すーっと落ちかけたとたん、
『パクリ』
やわらかくて、生暖かいものの上に落ちたと思ったら、ザラザラしたものが、かぶさってきて、コロコロと転がされました。そして、固いものの上に置かれたと思ったら、
『ゴリッ、ゴリッ』
固いもので、はさんできます。ベッドごと体がつぶされてしまいそうです。
『苦しい、もう、ダメ…』
と思ったら、
『ゴクリ』
わたしは、ゆっくり下へと落ちていきました。
『ああ、助かったわ』
いくら固いカラに包まれていましても、あんなに強くはさまれたら、粉々になってしまいます。その証拠に、わたしのベッドは傷だらけで、外から液が漏れてきていました。ブワブワしたものの上に落ちると、床がぐにゃぐにゃ動きはじめて、ブワブワと一緒にもみくちゃにされていました。
『ああー、気持ちいい』
いろいろなにおいのシャワーがかかります。ブワブワがもっと柔らかくなった気がしました。そのうち、もみくちゃの方向が下から上に変わってきて、どんどん体が持ち上がります。気がつくと、また、
『ゴリッ、ゴリッ』
また、あのおっかない場所に逆戻りです。わたしは、転がされて、とうとうあの固いものにつかまりました。
『ゴリッ!』
もうダメだと、わたしの体はこわばってしまいました。
『ツルっ』
ベッドがわたしだけ逃がしてくれたんです。わたしはまた穴へとストン。今度は、ベチャベチャしたものの上に落ちました。さっきとは違うシャワーがかかります。ベッドがなくなって、わたしのカラは少しふやけてきました。そして、またもみくちゃです。だんだん、わたしは楽しくなってきました。やっと息ができたんです。わたしは、あんまりはしゃぎすぎて、いつのまにか疲れて眠ってしまいました。
どれだけ時間がたったのでしょう。強くムニュッと抱きしめられて目が覚めました。
『プリッ』
わたしは、固まった砂の上に落ちました。行商人を乗せた旅のラクダが、砂漠の真ん中でフンをしたのでした。
わたしは、次にどんな冒険が、はじまるのかと、ワクワクしていました。でも、何日待っても、寒くなったり、暑くなったりするだけで、何も起こりません。あくびをしてたら、頭が、かゆくなってきたので、
『んー!』
と頭に力を集めてみました。すると、
『やめとけ。死んじゃうぞ!』
と、声がしました。わたしは、リンゴの種で、十二粒の兄弟がいたのです。みんな、ラクダさんに食べられなかったみたいです。でも、そんなこと言われて、やめていたら、冒険なんかできません。 もっと力を入れると、パカッと、カラがわれました。
『あーあ かわいそうに…』
と、つぶやく声が聞こえました。
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