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読書メモ:放っておく力

本書は、禅の思想を土台に「放っておく力」を身につける大切さを説いた一冊です。情報や人間関係に振り回されがちな現代社会において、何を「放っておくべきか」そして何に集中すべきかを見極めることで、ストレスを減らし、より穏やかな気持ちで生きるためのヒントが数多く紹介されています。
「放っておく力」とは
必要以上に抱え込まず、過度な干渉をせず、適切な距離感を保つ力のこと。無責任になるのではなく、自分にとって本当に重要なことにフォーカスするための選択が大切だと説かれています。
「ドライ」な人間関係のすすめ
「ドライ」とは冷たいという意味ではなく、相手との距離感をほどよく保つ姿勢のこと。相手のプライベートに深入りしすぎず、お互いの領域を尊重する関係性が結果として良好なコミュニケーションを育むとされています。
自己中心的な考え方の克服
他人の価値観を押し付けない・尊重する。十人十色であることを前提に、「普通」や「正論」に過度にこだわるのではなく、相手の背景や立場を理解しようとする姿勢の大切さが語られています。
執着からの解放
過去の後悔や未来への不安といった「妄想」に縛られず、「いま、ここ」に集中する生き方を推奨。結果に固執するよりも、過程に全力を注ぐことで心が楽になるというメッセージが強調されています。
「あるがまま」を受け入れる
人生には良いことも悪いことも起こるものとして、そのすべてを否定せず「あるがまま」に受け止める。そこに余計な感情を重ねすぎず、流れに逆らわない姿勢が大切だと説かれています。
他者との比較をやめ、「昨日の自分」と比べる
他人と競うより、自分の成長や昨日までできなかったことができるようになる喜びを重視することが、長期的なモチベーションと自分らしい幸せを生むとされています。
人事を尽くして天命を待つ
自分ができる努力を精一杯したら、結果には執着せずに流れに任せる。悩んでも変えられない部分は切り離して考え、過度なストレスから自分を解放するのが賢明だと説いています。
夜に大きな決断をしない
心身ともに疲れが出やすい夜は悲観的・消極的な判断に陥りやすいので、できるだけエネルギーが高まる時間帯に考えたり決断したりすることが勧められています。
SNSとの適切な付き合い
SNSは便利なツールである一方、情報過多や過度な比較を招くことも多いため、意識的に距離を置くことで心の平穏を保つコツが紹介されています。
得意なことを伸ばす
苦手分野の克服だけにこだわるのではなく、自分の強みをより伸ばすことで、成果を上げやすく充実感も得やすいという考え方が示されています。
「縁」を大切にする
無理に逆らわず、やってきたチャンスや繋がりを素直に受け入れる。これによって、人間関係や行動の流れがよりスムーズになるという視点が提案されています。

日々の生活への具体的な活かし方


1. 会社員として(部下を持つ中間管理職として)

部下や同僚に干渉しすぎない
相手の仕事スタイルや思考を尊重し、必要以上に細部をコントロールしない。「ドライ」な距離を保ちながら、要点だけしっかり確認する。
「普通」「正論」を押し付けない
部下それぞれの得意・不得意、個性を理解し、評価基準を画一的にしない。
成果と過程のバランスを重視する
結果だけでなく取り組み方の工夫にも目を向け、成長をサポートする。失敗しても責めすぎず次の一手を一緒に考える姿勢が、チームのモチベーション向上につながる。
決断のタイミングを意識する
大事な会議や判断が必要な場面では、できるだけ自身も部下もコンディションが良い時間を活用するようスケジュールを調整する。
仕事の領域を明確にする
SNSを仕事用とプライベート用で分け、過剰に仕事仲間の私生活に踏み込まないようにする。


2. 日々の勉強を行う者として(能力開発を能動的に取り組む者として)

得意分野をさらに伸ばす学習計画
苦手分野ばかりに時間を割くより、自分が得意な領域を徹底的に強化し、成果を可視化することでモチベーションを高める。
他人との比較をやめる
学習仲間やSNSで見かける情報量に圧倒されないよう、「昨日の自分」と比べ、少しでも進歩していればOKとする。
時間帯に合わせた学習スケジュール
夜遅くに無理をして学ぶより、朝や日中の頭が冴えている時間帯を活用。疲労時の判断ミスを防ぐ。
必要以上に情報を集めすぎない
参考書や教材は厳選し、全部目を通さなくても「ここだけは押さえる」というポイントを明確にする。
「縁」を活かす
セミナーや勉強会など、偶然の繋がりを積極的に受け入れ、そこから学びを広げる姿勢を大切にする。


3. 父として(小学校高学年や私立中高一貫校の子どもの父として)

子どもの価値観を尊重する
「普通こうだ」という思い込みを押し付けず、子どもの興味・得意を理解しようと努める。
将来や進学に対する過度な不安を手放す
周囲の受験情報や比較に振り回されず、目の前で成長している子どもの状況をしっかり見守る。
適度な距離感を保つ
勉強や部活動など、必要以上に口出しせず、サポートが必要なときだけ手を貸す。子ども自身の自主性を大事にする。
一緒に楽しむ時間を作る
SNSやゲームにばかり没頭するのではなく、家族で会話や体験を共有し、ストレスを溜めさせない関係づくりを意識する。
失敗や課題を一緒に振り返る
うまくいかないことがあっても、その都度叱りつけるより「次どうする?」と前向きに話し合い、一緒に解決策を考える。


4. 家族の一員として(夫婦共働き家庭の夫として)

家事・育児の分担と「放っておく」バランス
すべてを完璧にこなそうとせず、各自が得意なところを担当。苦手な部分はある程度「頼る・外注する」ことでストレスを減らす。
パートナーの意見を尊重する
「自分が正しい」と思い込みすぎない。話し合いの上で折り合いをつける姿勢をもつ。
家族の空気が悪くなる前に距離をとる
口論になりそうなときやお互い疲れているときは、無理に解決しようとせず、少し時間を置きエネルギーが回復してから話し合う。
特別な行事よりも日常を大切にする
旅行やイベントだけでなく、普段の会話や食事の時間にも気を配り、家族の絆を深める。
SNSとの付き合い方を共通認識にする
夫婦間でSNSをどう使うか、ルールやマナーを共有し、家庭に不要なストレスを持ち込まないようにする。

優先順位TOP3とその理由

1. 「他者との比較をやめ、自分や家族の成長にフォーカスする」
理由: 日常的に情報が溢れる中、他人との比較はストレスを増やしやすい。自分や家族に目を向け「どれだけ成長したか」を喜ぶほうが、持続的なやる気や絆を育てられるから。
2. 「部下や子どもへの干渉を最小限にし、必要なサポートに集中する」
理由: コントロールしすぎると、お互いに窮屈になる。適度に「放っておく」ことで、相手の自主性・主体性が育ち、コミュニケーションもスムーズになるため。
3. 「決断や話し合いのタイミングを整え、疲れているときは無理をしない」
理由: 夜間や疲労時に重要な決断をすると、悲観的や短絡的な判断を下しやすい。十分な休養をとり、落ち着いた状態で考える習慣を身につけることで、結果的にミスやストレスを減らせるため。

これらのポイントは、どの立場であっても「自分がコントロールできる部分に集中し、コントロールできない部分には執着しない」という、本書が提唱する「放っておく力」のエッセンスを活かした行動だといえる。

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