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【暫定】第95回アカデミー賞各部門予想

みなさんこんばんは。
本日は次のアカデミー賞各部門の現時点での予想をしてみたいと思います。
なお、短編三賞(実写、アニメ、ドキュメンタリー)と長編ドキュメンタリーは現時点では全く分からないので割愛します。

※『作品名』(監督/公開日/配給)
※◎有力 ○可能性あり △大穴

作品賞

◎『Babylon』(デイミアン・チャゼル/12月25日/パラマウント)
◎『Empire of Light』(サム・メンデス/12月9日/サーチライト)
◎『The Fabelmans』(スティーヴン・スピルバーグ/11月11日/ユニバーサル)
○『The Son』(フローリアン・ゼレール/11月11日/ソニー)
○『Everything Everywhere All at Once』(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート/3月25日/A24)
○『エルヴィス』(バズ・ラーマン/6月24日/ワーナー)
○『Amsterdam』(デヴィッド・O・ラッセル/10月7日/20世紀)
○『She Said』(マリア・シュラーダー/11月18日/ユニバーサル)
○『ブロンド』(アンドリュー・ドミニク/9月28日/Netflix)
○『White Noise』(ノア・バームバック/未定/Netflix)

△『トップガン マーヴェリック』(ジョセフ・コシンスキー/5月27日/パラマウント)
△『NOPE ノープ』(ジョーダン・ピール/7月22日/ユニバーサル)
△『Decision to Leave』(パク・チャヌク/未定/MUBI)
△『Women Talking』(サラ・ポーリー/12月2日/ユナイテッド・アーティスツ)
△『ドント・ウォーリー・ダーリン』(オリヴィア・ワイルド/9月23日/ワーナー)

 『Empire of Light』はかなり有力、受賞もあり得るのではと思います。サム・メンデスはこのところ絶好調、大ハズシはなく、『1917』でとれなかった分今度は、というのもあると考えられます。『Babylon』はキャストや主題はオスカー向きではありますが、デイミアン・チャゼルは『ラ・ラ・ランド』で常連になるかと思いきや『ファーストマン』がほとんど無視されたので絶対とは言い切れないんですよね。『The Fabelmans』はスピルバーグですからまあ有力でしょう。ただ、『ウエスト・サイド・ストーリー』と2年連続は流石に…と敬遠する人がいてもおかしくなく、またこのところ監督の自伝的作品が続いており、またかと思う人がいてもおかしくないです。
 『The Son』はフローリアン・ゼレールの前作『ファーザー』が作品賞ノミネートされたため可能性はあると思うのですが、その年はコロナのため小品が多く、ラッキーなノミネートだったと言えなくもなく、有力だとは言い切れないと思います。『Everything Everywhere All at Once』は批評家も観客も大絶賛、興行的にも成功しているのですが、異色のファンタジーアクションという点が気になります。『エルヴィス』は作品規模としてはオスカー向きではあるのですが、批評があまり冴えないのが気になります。『Amsterdam』はオスカー常連デヴィッド・O・ラッセル作品ではあるのですが、トラブルが続いているという噂があるのと、前作『JOY』が作品賞から外れしまったので出来栄え次第では完全無視もあり得るかもしれません。『She Said』はワインスタインのセクハラを暴いた記者の物語ということで社会性は十分なのですが、監督の前作『アイム・ユア・マン』が微妙で、アメリカ映画デビューとなるのでそこがどう出るかだと思います。『ブロンド』はマリリン・モンローの伝記映画で一見有力そうなのですが、監督のアンドリュー・ドミニクは『ジェシー・ジェームズの暗殺』では複数ノミネートはされましたが作品賞には入らず、『ジャッキー・コーガン』はカンヌのコンペ作品ですが批評も芳しくなくオスカーでは無視されました。撮影や主演女優で拾われる可能性はありますが、作品賞ノミネートは微妙かもしれません。『White Noise』はおそらく今年のNetflixの勝負作、プロモーションは強力だと思いますが、本来ノア・バームバックはインディー向きの人、『マリッジ・ストーリー』は例外的な作品でしょう。今回は初の原作ものということでそれが有利にはたらくかどうかで決まってきそうです。
 『トップガン マーヴェリック』は批評的にも興行的にも文句なしなのですが、なんとなく『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』と同じ感じになりそうな。入ったら盛り上がるでしょうけどね。『NOPE ノープ』は本来オスカー受けの悪いホラー、『ゲット・アウト』は色んな条件が合った結果ノミネートされた作品であり例外的に考えたほうがよさそうです。前作の『アス』も批評、興行ともに成功しましたがオスカーでは無視されました。『Decision to Leave』は前回の『ドライブ・マイ・カー』的立ち位置になりそうな気がします。外国語映画だとパルムドールの『Triangle of Sadness』やイニャリトゥの『バルド、偽りの記憶と一握りの真実』も考えられますが、オストルンドのあのクセの強い作品が入るとは思えず、ライバルは『バルド』でしょうか。批評家協会賞をどれだけとれるかが鍵になってきそうです。『Women Talking』は監督作が全て高評価、そして女性を描いた女性による映画ということで有力に思えます。しかし今回『She Said』や『ドント・ウォーリー・ダーリン』と女性監督による似たテーマの作品があり互いに食い合う可能性があります。またサラ・ポーリーは高評価ではありますが地味な作風のためオスカー受けは悪いかもしれません。『ドント・ウォーリー・ダーリン』は監督デビュー作『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』が高い評価を得たオリヴィア・ワイルドによる待望の新作で、当然期待はされるでしょう。ただ上記の理由で食い合う可能性があるのと、スリラーである点が気になります。

監督賞

◎デイミアン・チャゼル『Babylon』
◎サム・メンデス『Empire of Light』
○スティーヴン・スピルバーグ『The Fabelmans』
○パク・チャヌク『Decision to Leave』
○ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート『Everything Everywhere All at Once』

△アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ『バルド、偽りの記録と一握りの真実』(未定/Netflix)
△サラ・ポーリー『Women Talking』
△トッド・フィールド『TÁR』(10月7日/フォーカス・フィーチャーズ)

 『Babylon』デイミアン・チャゼルは作品の出来次第ですね。及第点以上であればノミネートは有力だと思います。『Empire of Light』サム・メンデスは前作『1917』でとれなかった分というのと、作品BUZZ自体がかなり大きくなっているのでまず間違いないかと思います。『The Fabelmans』スティーヴン・スピルバーグは有力ではあるのですが、既に何度もノミネートされて二度受賞もしているので若い人に譲ってと思う人がいてもおかしくないですね。まあでも『ウエスト・サイド・ストーリー』でもその可能性はあったのに入りましたから結局入るでしょうね。『Decision to Leave』パク・チャヌクはまずカンヌで監督賞をとっているというのが強いですね。そしてこの部門は外国人に優しいので可能性は大いにあるでしょう。ただ懸念点としてはポン・ジュノ、濱口竜介とアジア人のノミネートが続いており食傷気味というのはあるかもしれません。『Everything Everywhere All at Once』ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナートは入ったら快挙です。まだ新人であり、ジャンル的にオスカー受けは悪そうですが、それを吹き飛ばすほどの勢いがあります。ダニエル・シャイナートの前作『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』がめちゃくちゃ好きなので入ったら嬉しいです。
 『バルド、偽りの記録と一握りの真実』アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥはパク・チャヌクと同じく外国語映画枠で入る可能性はあります。ただ既に二度受賞していること、自伝的作品ということでスピルバーグと被る、コメディタッチというのが気にかかります。内容が全く今のところ分からないので、ヴェネツィアでのプレミア次第かなと思います。『Women Talking』サラ・ポーリーは『She Said』マリア・シュラーダーや『ドント・ウォーリー・ダーリン』オリヴィア・ワイルドよりは可能性は高いと思います。むしろ今まで無視されてきたのがおかしいくらいの人ですからね。ただ、オリヴィア・ワイルドは『プロミシング・ヤング・ウーマン』級のBUZZを獲得した場合エメラルド・フェネルのように入ってくるかもしれません。その場合弾き出されるかもというのが懸念点です。『TÁR』トッド・フィールドは『イン・ザ・ベッドルーム』が作品賞など5部門ノミネート、『リトル・チルドレン』が主演女優賞など3部門にノミネートされてはいるのですが、どちらも監督賞ノミネートは逃しています。よほど強い作品BUZZを手にしないと難しいかなと思います。

主演男優賞

◎オースティン・バトラー『エルヴィス』
◎ヒュー・ジャックマン『The Son』
○コールマン・ドミンゴ『Rustin』(ジョージ・C・ウルフ/未定/Netflix)
○ビル・ナイ『Living』(オリヴァー・ハーマナス/未定/未定)
○アダム・ドライバー『White Noise』

△ブレンダン・フレイザー『The Whale』(ダーレン・アロノフスキー/未定/A24)
△クリスチャン・ベール『Amsterdam』
△トム・クルーズ『トップガン マーヴェリック』

 『エルヴィス』オースティン・バトラーはノミネートまでは間違いないんじゃないですかね。作品自体は賛否割れていますが彼の演技は絶賛されていますし。ただ思い出すのは『ロケットマン』のタロン・エガートン、彼も同じように若手で歌手を演じ絶賛されましたが結局ノミネートされませんでした。彼が若手のフレッシュな候補だとすると、ベテランの決定打となりそうなのが『The Son』ヒュー・ジャックマン。『レ・ミゼラブル』でノミネートはされていますが、本来『LOGAN』などスタータイプの人。そんな彼がじっくり演技をみせるのが今回でしょう。同じフローリアン・ゼレール監督作『ファーザー』アンソニー・ホプキンスのように勢いをつけられるかが勝負ですね。『Rustin』コールマン・ドミンゴは実在の人物を演じていること、『Zola』の助演演技が評判になったことから可能性は高いと思います。作品評価がよほど悪くない限りは大丈夫な気がします。『Living』ビル・ナイは『生きる』志村喬を考えたらかなり可能性は高く思えます。ただ彼は名優ではありますが、今までアカデミー賞とは無縁の人。下手するとインディペンデント・スピリット賞止まりになってしまうかもしれません。『White Noise』アダム・ドライバーは願望もあります。これまで彼の演技に失望したことはなく、本当だったら受賞しててもおかしくないと思うんです。『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバック作品ですからあのとき級の勢いをつけて候補入りしてほしいですね。
 『The Whale』ブレンダン・フレイザーは受賞するか無視されるかという危うい位置にいると思います。ダーレン・アロノフスキーは作品評価が大きく分かれる作家で、それがいい方に働けば『ブラック・スワン』ナタリー・ポートマンのように受賞すると思うんですが、悪い方に働けば『マザー!』ジェニファー・ローレンスのように全く無視される可能性もあります。『ハムナプトラ』大好きなので入ったら凄いカムバックだと思いますがどうできょう。『Amsterdam』クリスチャン・ベールはまあ助演でとってますし上手いのは当たり前なので可能性はなくはないと思います。ただ『Amsterdam』はアンサンブル色が強いと予想され、他の出演者にかき消されてしまうかもしれません。一番注目なのは『トップガン マーヴェリック』トム・クルーズでしょうね。彼もまたスタータイプで賞とは無縁の人。どんなに絶賛されていてもやっぱり僕はノミネートされるとは思えません。

主演女優賞

◎フローレンス・ピュー『ドント・ウォーリー・ダーリン』
◎オリヴィア・コールマン『Empire of Light』
○ケイト・ブランシェット『TÁR』
○ミシェル・ヨー『Everything Everywhere All at Once』
○アナ・デ・アルマス『ブロンド』

△ナオミ・アッキー『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(ケイシー・シモンズ/12月23日/ソニー)
△ヴィオラ・デイヴィス『The Woman King』(ジーナ・デイヴィス・バイスウッド/9月16日/ソニー)
△キャリー・マリガン『She Said』

 『ドント・ウォーリー・ダーリン』フローレンス・ピューは今最も注目の若手女優、今回が勝負となるでしょう。ノミネートされれば受賞の可能性も高いでしょう。ただし本作はスリラーで、『透明人間』エリザベス・モスや『アス』ルピタ・ニョンゴのように無視されてしまうという場合も…『Empire of Light』オリヴィア・コールマンは本当に作品選びが上手い。『女王陛下のお気に入り』で受賞してから『ファーザー』『ロスト・ドーター』と連続でノミネート、今一番オスカーに愛されている女優でしょうね。作品評価がよほど悪くない限りノミネートされるでしょう。ただしここまで順調だとそろそろやっかみが入る頃かもしれません。『TÁR』ケイト・ブランシェットは受賞もしていますしノミネートも何度もされています。しかし最後にノミネートされたのは2015年の『キャロル』とこのところ賞レースからは遠ざかっています。また単独主演も久しぶりです。久しぶりにアカデミー賞でケイト様をみたいですね。『Everything Everywhere All at Once』ミシェル・ヨーは入ってほしいという願望込みですが、可能性は決して低くないと思います。アジアでは昔からスターですが、このところ『クレイジー・リッチ!』『シャン・チー』とハリウッドでも絶好調、この部門にアジア人が入れば史上初となるのでぜひ入ってほしい。彼女はその栄誉に値するレジェンドだと思うので期待しています。『ブロンド』アナ・デ・アルマスは実在の人物というのは大きな強みですし、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』でみせた姿の支持票も入るかもしれません。ただ数年前にミシェル・ウィリアムズがマリリン・モンローを演じた『マリリン 7日間の恋』との比較は避けられないかもしれません。ただそちらも絶賛!というわけではなかったので「比べて劣ってる」という風にはならないと思いますが。
 『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』ナオミ・アッキーはもちろん実在の人物という意味では有利ですが、作品評価が抜群でないと難しいかもしれません。歌姫を演じたという意味で連想されるのは『リスペクト』ジェニファー・ハドソンでしょう。彼女は下馬評は高かったものの作品評価が伸びずノミネートを逃しました。『The Woman King』ヴィオラ・デイヴィスはその実力からかなり有力だと思われますが、作品が意外とエンタメ色が強めという噂がありそこが懸念材料です。『プロミシング・ヤング・ウーマン』の圧巻の演技にも関わらずフランシス・マクドーマンドにさらわれてしまったキャリー・マリガンは今年は『She Said』で勝負。ワインスタイン事件を暴いた記者役ということでかなりの見せ場が予想されます。いつか受賞してほしい女優の一人なので入ってくれるといいんですが。

助演男優賞

○ポール・ダノ『The Fabelmans』
○ウィレム・デフォー『The Northman』(ロバート・エガース/4月22日/フォーカス・フィーチャーズ)
○ロバート・デ・ニーロ『Amsterdam』
○アンソニー・ホプキンス『The Son』
○ベン・ウィショー『Women Talking』

△エイドリアン・ブロディ『ブロンド』
△ドン・チーゲル『White Noise』
△トム・ハンクス『エルヴィス』

 若手個性派として唯一無二の地位を築いている『The Fabelmans』ポール・ダノは意外にもアカデミー賞ノミネート経験はなし。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の怪演、初監督作『ワイルド・ライフ』の高評価、『THE BATMAN -ザ・バットマン-』での悪役などめきめきと存在感を増しているので今回初ノミネートになったら嬉しいです。『The Northman』ウィレム・デフォーは完全に願望ですね。無冠の名優の一人で、いつかはとってほしいのですが難しいかもしれません。同じロバート・エガース監督作『ライトハウス』でも有力視されつつもノミネートされませんでしたし、『ナイトメア・アリー』でもダメでしたね。『Amsterdam』ロバート・デ・ニーロは作品評価によるかなと思います。同じデヴィッド・O・ラッセル監督作『世界にひとつのプレイブック』でもノミネートされましたし相性はいいはず。あとはどれだけ見せ場があるかも関係してくるかも。『The Son』アンソニー・ホプキンスはかなり有力だと思います。『ファーザー』のサプライズ受賞のインパクトはかなりあり、その流れでノミネートされるのではないでしょうか。『Women Talking』ベン・ウィショーは『007』シリーズのQ役でもお馴染みの英国俳優ですが、これまで映画賞とはあまり縁がありませんでした。『ロブスター』『リトル・ジョー』など好きな映画にかなり出ていて安定した演技をみせているのでそろそろ一度くらいノミネートされてほしいなと思います。
 『ブロンド』エイドリアン・ブロディはよほど印象に残る演技をしないと難しい気がします。『戦場のピアニスト』でサプライズ受賞して以降は低迷、最近はウェス・アンダーソン作品の常連というイメージしかありません。特段アカデミー会員に好かれている感じでもないので可能性はなくはないけどかなり低いと思います。『White Noise』ドン・チーゲルは予告をみるとけっこう重要な役っぽいので可能性はあるかと思います。トニー賞、グラミー賞を受賞していて業界内のサポートはありそう。『エルヴィス』トム・ハンクスは個人的には最近の「いい人」イメージを覆した演技でとてもよかったと思うのですが、実は賛否両論です。他が弱ければ浮上してくるかもしれません。

助演女優賞

○グレタ・ガーウィグ『White Noise』
○ローラ・ダーン『The Son』
○シガニー・ウィーヴァー『Call Jane』(フィリス・ナジー/10月28日/Roadside Attractions)
○ジーン・スマート『Babylon』
○ミシェル・ウィリアムズ『The Fabelmans』

△ジェシカ・チャステイン『The Good Nurse』(トビアス・リンホルム/未定/Netflix)
△ジェイミー・リー・カーティス『Everything Everywhere All at Once』
△ホン・チャウ『The Whale』

 『White Noise』グレタ・ガーウィグは2015年『ミストレス・アメリカ』以来のバームバック作品出演、女優活動全体としても2016年『20センチュリー・ウーマン』以来の出演です。むしろ最近は『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』と監督として絶好調、そちらの方が知られていますよね。久しぶりの俳優活動カムバックで成果を残せるでしょうか。『The Son』ローラ・ダーンはこの間『マリッジ・ストーリー』で同部門を受賞したばかりですが、今回も安定の演技でノミネートを手にするでしょうか。懸念されるのは同じく助演のヴァネッサ・カービーとの票割れです。ヴァネッサ・カービーも『私というパズル』で候補に挙がったばかり、一度とったベテランよりも若手を応援したいという心理が働いてもおかしくありません。『Call Jane』シガニー・ウィーヴァーは報われてほしいスターの一人です。『エイリアン』という歴史に残る作品の主演なのに受賞経験がないのは納得できません。本作はサンダンス映画祭でお披露目され、ウィーヴァーの演技には賞賛の声が集まっています。1960年代の女性解放運動を描いた作品で、監督は『キャロル』の脚本家としても知られるフィリス・ナジー、主演はエリザベス・バンクスです。ただウィーヴァーはヴェネツィア国際映画祭に出品されているポール・シュレーダー監督作『Master Gardener』で主演を務めており、そちらの方が好評であれば票割れを起こすかもしれません。『Babylon』ジーン・スマートですが、この方初めて見たかもしれません。どちらかというとテレビ中心のキャリアのようで、6年続いた人気シットコム『浮気なおしゃれミディ』で有名のようです。その他には『24 -TWENTY FOUR-』『ファーゴ』といった人気テレビドラマでの出演があるようです。実在の脚本家役で、かなり美味しい役だということです。作品自体に勢いが出ればノミネートされるかもしれませんね。『The Fabelmans』ミシェル・ウィリアムズは現在の実力派スターの一人ですが、受賞経験はありません。そろそろ受賞してもいい頃ですが、どちらかというと主演の方が似合う人なので次の主演作で受賞してほしいですね。
 今年主演女優賞を受賞した『The Good Nurse』ジェシカ・チャステインはその勢いのまま候補入りする可能性は決して低くありません。監督はトマス・ヴィンターベアの『偽りなき者』『アナザーラウンド』で共同脚本をつとめ、監督した『ある戦争』で外国語映画賞にノミネートされたデンマークのトビアス・リンホルム、本作が初の英語作品となります。実在した「死の天使」と呼ばれた殺人鬼をエディ・レッドメインが演じ、チャステインは身の危険を感じながらも彼の逮捕に尽力する同僚看護師を演じるようです。なかなか面白そうな話で、アカデミー賞はさておきすごく観たくなりました。『Everything Everywhere All at Once』ジェイミー・リー・カーティスは『ハロウィン』で有名な性格スターですが、本作での演技は主演のミシェル・ヨーと並んで賞賛されています。ジャンル映画のため難しいスタートにはなりますが、この映画で初ノミネートとなったらすごく彼女らしいと思うのでぜひされてほしい。『The Whale』ホン・チャウはアレクサンダー・ペイン『ダウンサイズ』で注目されたベトナム系の女優です。多様性という昨今の潮流に乗ることができれば、大きなステップアップの機会になるはずです。

脚本賞

○『Everything Everywhere All at Once』
○『NOPE ノープ』
○『Babylon』
○『The Fabelmans』
○『Empire of Light』

△『Decision to Leave』
△『ドント・ウォーリー・ダーリン』
△『Amsterdam』

 『Babylon』『The Fabelmans』『Empire of Light』は作品賞有力ということからこの部門に入ってこないといけません。一方でこの部門は新人が認められやすく、その意味で『Everything Everywhere All at Once』は可能性があるでしょう。『NOPE ノープ』は『ゲット・アウト』の流れで可能性はあるでしょうが、『アス』は入ってこなかったので少し微妙ですね。
 『Decision to Leave』はパク・チャヌクらしい捻りのある話と言われており、『パラサイト』のように評価される可能性があります。『ドント・ウォーリー・ダーリン』は『プロミシング・ヤング・ウーマン』のように認められれば可能性はあります。『Amsterdam』は脚本が評価されやすいデヴィッド・O・ラッセル作品なので有力ですが、批評次第ですかね。

脚色賞

◎『She Said』
◎『The Son』
○『Women Talking』
○『White Noise』
○『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』(ライアン・ジョンソン/12月23日/Netflix)

△『Living』
△『The Whale』
△『トップガン マーヴェリック』

 『She Said』は作品の出来によりますが非常にタイムリーなので有力なのではと思います。『The Son』は『ファーザー』からの流れでかなり有力かなと思います。
 『Women Talking』は作品としての勢いがつけば十分あり得るでしょう。『White Noise』は堅そうですが、バームバック初の原作ものということで少し不安はあります。『ナイヴスアウト : グラスオニオン』は前作が脚本賞にノミネートされたということでその流れであり得るかなと。
 『Living』は『生きる』のリメイクということで注目度は高いものの、作品規模が小さすぎるのがどう働くか。『The Whale』は作品の評価次第ですね。『トップガン マーヴェリック』は作品賞ノミネートされるほど盛り上がれば可能性はありますが、この手の娯楽作、しかも続編ともなると厳しいと見た方がいいですね。

国際長編映画賞

◎『Decision to Leave』(韓国)
『Triangle of Sadness』(スウェーデン)
『Close』(ベルギー)
『バルド、偽りの記録と一握りの真実』(メキシコ)
『Alcarras』(スペイン)

△『Before, Now & Then』(インドネシア)
△『EO』(ポーランド)
△『Khers nist (No bears)』(イラン)

 この部門は各国の代表作品が決まらないと予想ができず、現時点で決定しているのは数カ国しかないため全く異なる可能性があります。
 そんな中既に代表に決定していて最有力なのが韓国の『Decision to Leave』です。カンヌの監督賞を受賞、国際長編映画賞だけでなく主要部門にも絡んでくるのではという予想が出ています。パク・チャヌク作品は恥ずかしながら『お嬢さん』しか観たことがないのですが、捻りのある展開が非常に面白い傑作でした。『お嬢さん』は韓国代表には選ばれなかったものの、批評家協会賞で外国語映画賞候補入りが多数、欧米にもファンがいるのは間違いないでしょう。スウェーデンの『Triangle of Sadness』はもちろんパルムドール受賞作で有力ではあるのですが、どうしてもオスカーには向かないような印象が拭えません。前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』がノミネートされたので実績はあるのですがどうしても絶対とは言えないというか…ベルギーの『Close』はカンヌで受賞していて好評です。ストレートな感動作であるようで可能性はかなり高いかなと。ただ代表作がダルデンヌ兄弟作品になるかもしれず、そうなるとまた話は変わってきますね。メキシコの『バルド、偽りの記録と一握りの真実』はイニャリトゥというネームバリューから可能性は低くないですが、ヴェネツィアでの評価はあまり芳しくないんですよね。その評判から代表に選ばれないかもしれないなと思い始めました。ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したスペインの『Alcarras』はかなり有力、『悲しみに、こんにちは』の作風をみてもオスカー向きの資質であるはずだと思います。
 インドネシアの『Before, Now & Then』はベルリン国際映画祭で助演俳優賞を受賞しました。ただ、フィルメックスで何作かカミラ・アンディニの作品は観たことがありますが、とてもいいのですがかなり観念的で、オスカーには向かないのではないかと思います。ポーランドの『EO』は代表作品に内定しました。カンヌ国際映画祭で評判が良かった作品の一つで、審査員賞を受賞しています。ポーランドはこれまで12回ノミネート、『イーダ』で受賞しており、安定した常連国の一つです。ただスコリモフスキは『イレブン・ミニッツ』で一度選出されたのみなのでアカデミー会員受けがいいかは分かりません。イランの『Khers nist (No bears)』はヴェネツィア国際映画祭出品作ですが、可能性はほぼないでしょう。というのは、監督のジャファル・パナヒは反体制の作家として知られ、今年に入ってイラン当局に拘束、収監されています。そんな作家の作品を代表には選ばないでしょう。実際『チャドルと生きる』で金獅子賞、『人生タクシー』で金熊賞を受賞しているのに代表作には選ばれませんでした。それでもここに入れたのは応援したかったからです。彼ほどの映画作家が収監されるなんて、腹立たしい限りです。

長編アニメーション映画賞

◎『私ときどきレッサーパンダ』(ドミー・シー/3月11日/ピクサー)
◎『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』(ドン・ホール/11月23日/ディズニー)
◎『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(ギレルモ・デル・トロ/12月/Netflix)
○『犬王』(湯浅政明/8月12日/GKids)
○『バッドガイズ』(ピエール・ペリフィル/4月22日/ドリームワークス)

△『バズ・ライトイヤー』(アンガス・マクレーン/6月17日/ピクサー)
△『Marcel the Shell with Shoes On』(ディーン・フレッチャー・キャンプ/6月24日/A24)
△『すずめの戸締まり』(新海誠/未定/クランチロール)

 『私ときどきレッサーパンダ』は確実、受賞もおそらくこれでしょう。評価も今年一と言っても過言ではないですし、多様性が重視される今の潮流にも乗っています。『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』は安定のディズニークオリティ、よほどの酷評でなければノミネートまではいけそうです。ここからが難しくて、ノミネート確実と言われていた『バズ・ライトイヤー』が予想外に評価が伸びず、浮上していたのが『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』です。Netflix作品では今までだと『クロース』がノミネートされたりと実績もあり、かつギレルモ・デル・トロというオスカー監督の作品でもあるのでかなり有力でしょう。『犬王』は少し難しいかなとは思いますが、『君と、波にのれたら』がいくつかの批評家賞で候補入りするなど健闘をみせ、かつ今回は日本らしいテーマということで可能性はなくはないかなと。『バッドガイズ』はドリームワークス作品で、評価も悪くないので堅いあたりかと思います。よほどのダークホースがこない限りは候補入りは有力でしょう。
 『バズ・ライトイヤー』はピクサーにしてはかなり賛否が割れた作品で、現時点では決して安泰とは言えません。しかしピクサーというネームバリューだけで入れる人も多そうなので、ないとは言い切れないと思いますね。『Marcel the Shell with Shoes On』は一番のダークホース、批評家からは大絶賛され、早くもカルト映画の仲間入りを果たしています。A24はこの部門では初めてですが強力な配給会社、この作品をプッシュしてくるでしょう。ノミネートされたらなかなか面白いことになりそうです。『すずめの戸締まり』はアニメファンからはかなり期待されている作品でしょう。しかし『君の名は。』『天気の子』とオスカー戦線には全く名乗りをあげてきませんでした。よほどの反響やヒットがないとちょっと難しいと思います。

美術賞

◎『アバター : ウェイ・オブ・ウォーター』(ジェームズ・キャメロン/12月16日/20世紀スタジオ)
◎『The Northman』
○『Empire of Light』
○『エルヴィス』
○『Babylon』

△『ピノキオ』(ロバート・ゼメキス/9月8日/ディズニー)
△『The Woman King』
△『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』(ライアン・クーグラー/11月11日/ディズニー)

 個人的には一番楽しみにしている部門です。
 『アバター : ウェイ・オブ・ウォーター』は前作の勢いを考えると主要部門にも入れるべきなのでしょうが、やはり続編ということを考えると技術部門中心になると考えるのが現実的ではないでしょうか。CGをつかった美しいビジュアルは間違いないあたりなのでここは堅いかなと。『The Northman』は主要部門に入らないのならせめてここくらいは入ってほしいですね。実際中世スカンジナビアを再現した美術は予告を見るだけでも素晴らしいので入ってほしい。『Empire of Light』もビジュアル派のサム・メンデスなので間違いなさそうです。この部門は現代劇より時代ものの方が強く、本作も1980年代という少し昔の話なので期待できそうです。『エルヴィス』は主要部門でシャットアウトされてもここは入るでしょう。衣装とともにその再現性は評価されるのではないかと思います。『Babylon』もサイレントからトーキーへの話なので華やかなビジュアルが期待できそうです。
 『ピノキオ』はディズニーの実写版。今更やる必要あるのかなとは思いつつ、技術系は強そうです。ゼメキスは作品評価が芳しくなかった『マリアンヌ』でも入っていますから可能性は低くはないでしょう。『The Woman King』は作品評価に関わらずある程度強いのではないかと考えます。上記の白人主人公の世界観とは違って独自の美術が予想されますからね。ただ『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』にお株を奪われる可能性もなきにしもあらず…前作がこの部門を制してますからね。

衣装デザイン賞

◎『エルヴィス』
○『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』
○『The Fabelmans』
○『ダウントン・アビー 新たなる時代へ』(サイモン・カーティス/5月20日/フォーカス・フィーチャーズ)
○『Babylon』

△『ピノキオ』
△『ブロンド』
△『ミセス・ハリス、パリへ行く』(アンソニー・ファビアン/7月15日/フォーカス・フィーチャーズ)

 『エルヴィス』は美術賞と同じ理由です。衣装を再現したことにも評価が集まるでしょう。『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』も同じですね。前作がこの部門とっているので。『The Fabelmans』はスピルバーグですから。衣装もきっと一流でしょう。勢いがどの程度かにもよりますね。『ダウントン・アビー 新たなる時代へ』は可能性は高くないと思いますが、前作の衣装が本当に素晴らしかったので入ってほしいです。作品評価はまずまずといったあたり。他の部門で候補入りするほどの勢いは感じられないのでここくらいは。『Babylon』も美術賞と同じ理由です。
 『ピノキオ』も同じ。『ほんとうのピノッキオ』がこの部門でノミネートされているので美術賞よりも可能性があるかもしれません。『ブロンド』はやはりマリリン・モンローの衣装は時代のアイコンですから。印象に残りやすいと思います。『ミセス・ハリス、パリへ行く』はかなり好評、主演のレスリー・マンヴィルは絶賛されています。パリの話ということで衣装が見ものでしょう。私もレスリー・マンヴィルは好きなので主演女優賞で入らないならここでフックアップしてほしいです。

撮影賞

◎『The Fabelmans』
◎『Empire of Light』
○『バルド、偽りの記録と一握りの真実』
○『Everything Everywhere All at Once』
○『アバター : ウェイ・オブ・ウォーター』

△『The Northman』
△『THE BATMAN -ザ・バットマン-』(マット・リーヴス/3月4日/ワーナー)
△『Rustin』

 『The Fabelmans』ヤヌス・カミンスキーと『Empire of Light』ロジャー・ディーキンスはもう当確でしょう。この二人が外れるということはないでしょうね。『バルド、偽りの記録と一握りの真実』はイニャリトゥの作品ですから、と思っていたんですがヴェネツィア国際映画祭での反応が思いの外悪く、これはあまり入ってこないかもと思い始めました。『Everything Everywhere All at Once』は作品賞候補にあがるくらいの強さならここは入ってくるでしょう。まだ観られてはいないので分かりませんが、マルチバースをどのように撮影しているのか興味津々です。『アバター : ウェイ・オブ・ウォーター』もまあ前作の流れからしても可能性は高いでしょう。
 『The Northman』も技術賞中心になるはず、入るとしたらこのあたりでしょう。前作『ライトハウス』もこの部門にノミネートされているので実績もあります。『THE BATMAN -ザ・バットマン-』は内容は賛否分かれるあたりですが、撮影は文句なしに素晴らしかったので『ジョーカー』的に評価されるのではと思います。『Rustin』は主演男優賞入るとしたらこのあたりに入っておかないと勢いがつかない気がします。作品評価の後押しがあれば確実なんですが。

編集賞

○『Everything Everywhere All at Once』
○『Empire of Light』
○『Babylon』
○『Women Talking』
○『The Fabelmans』

△『エルヴィス』
△『Amsterdam』
△『White Noise』

 ここは作品賞をとる上で重要な部門。正直この部門は作品を観てみないと分からないですし、観ても分からないことが多いので作品賞有力作品を並べてみました。組合賞をみてみないとこれは最後まで分かりません。

メイクアップ&ヘアスタイリング賞

◎『The Whale』
◎『Everything Everywhere All at Once』
○『エルヴィス』
○『The Woman King』
○『ブロンド』

△『THE BATMAN -ザ・バットマン-』
△『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』(サム・ライミ)
△『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』

 『The Whale』はブレンダン・フレイザーのあの衝撃的なビジュアルをつくりだしたのですから評価されて当然…と言いたいものの、果たしてあの姿は地なのか、CGの役割が大きいのかというのが疑問点ではあります笑『Everything Everywhere All at Once』はここは堅いでしょう。マルチバースの色んな世界観を表現したメイクの力が大きい作品でしょう。『エルヴィス』『ブロンド』はそれぞれプレスリー、モンローのそっくりさんメイクが評価されるでしょう。実在の人物のそっくりメイクはここではかなり強いですよね。『The Woman King』もヴィオラ・デイヴィスの前作『マ・レイニーのブラックボトム』の勢いのままいきそうな気がします。
 『THE BATMAN -ザ・バットマン-』のダークなメイク、『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』のグロメイクは印象的です。どちらも良かったので評価されてほしいという思いもあります。『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』もそっくりさんメイクですが、作品評価によるかなと思います。

視覚効果賞

◎『Everything Everywhere All at Once』
◎『アバター : ウェイ・オブ・ウォーター』
○『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』
○『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』
○『NOPE ノープ』

△『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
△『トップガン マーヴェリック』
△『ブレット・トレイン』(デヴィッド・リーチ/8月5日/ソニー)

 『Everything Everywhere All at Once』『アバター : ウェイ・オブ・ウォーター』は間違いないんじゃないでしょうか。前者は強大な作品評価がありますし、後者は前作の流れがあります。受賞もどちらかと考えるのが妥当かと。『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』はアメコミ勢として健闘することが予想されます。どちらも独自性のある視覚効果の使い方なので可能性は低くないかなと。『NOPE ノープ』もこれまでのジョーダン・ピール作品としてはかなり大きな規模の作品なのであり得ない話ではないでしょう。
 この部門は大作映画が強いので、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』『トップガン マーヴェリック』『ブレット・トレイン』あたりは安定した強さがありそうです。ただ『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』『ブレット・トレイン』は否定的意見が優勢のため、作品評価の後押しが得られないのが弱いところです。

録音賞

◎『トップガン マーヴェリック』
○『Babylon』
○『The Fabelmans』
○『エルヴィス』
○『NOPE ノープ』

△『バルド、偽りの記録と一握りの真実』
△『The Northman』
△『TÁR』

 『トップガン マーヴェリック』は何があってもここだけは揺るがないと思います。音が主役の映画ですから。
 同じような理由で『エルヴィス』『NOPE ノープ』も音が重要な映画なのでかなり有力でしょう。『Babylon』『The Fabelmans』は作品の勢い次第です。
 『バルド、偽りの記録と一握りの真実』はイニャリトゥ作品はいつも音がいいので評価されるかなと。『The Northman』は今までと同じような理由です。かなり迫力のある音づくりが期待されるので評価されるといいな。『TÁR』はやはり指揮者の物語ですからね。ここで候補入りしないでどうする、という気がします。

作曲賞

◎『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
◎『Women Talking』
◎『The Fabelmans』
○『Babylon』
○『Empire of Light』

△『TÁR』
△『The Northman』
△『Decision to Leave』

 ここはやはり作品を観ないと分かりません。ただ、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』のアレクサンドル・デスプラ、『Women Talking』のヒドゥル・グドナドッティル、『The Fabelmans』のジョン・ウィリアムズはいずれも同部門受賞経験のある方たち。このあたりは知名度もありますしよほどのことがない限り大丈夫だと思います。『Babylon』『Empire of Light』は作品の勢い次第ですね。
 『TÁR』は指揮者の話ですから、可能性は低くないかなと。『The Northman』も技術部門中心に稼ぐとすれば入ってもおかしくないです。『Decision to Leave』は前回の『パラレル・マザーズ』のような人気を集めるかなと思います。『お嬢さん』の音楽がすごくよかったので。

歌曲賞

○「Hold My Hand」by レディー・ガガ『トップガン マーヴェリック』
○「Nobody Like U」by ビリー・アイリッシュ&フィニアス・オコネル『私ときどきレッサーパンダ』
○未定『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』
○ダイアン・ウォーレン『未定』
○未定『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

 ここは正直全く分かりません。受賞は大体ヒット曲かディズニーですが、ノミネートでは意外な曲が入ってきたりして?という選出が多いです。
 現時点でヒットしていて高評価、知名度のある歌手ということだと「Hold My Hand」by レディー・ガガ『トップガン マーヴェリック』と「Nobody Like U」by ビリー・アイリッシュ&フィニアス・オコネル『私ときどきレッサーパンダ』かと思います。ただしどちらも曲としてはそんなにヒットしてはいないので微妙です。
 あとは13回のノミネート経験がありながら受賞が一度もないダイアン・ウォーレンの曲が入る可能性は高いです。去年の「Somehow You Do」『Four Good Days』なんて映画もほとんど知られていなければ評価もよくなかったのにダイアン・ウォーレンのネームバリューだけで入りましたからね。まあすごくいい曲で好きになってしまいましたが。リーバ・マッキンタイアさん素晴らしい。
 『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』の主題歌は前作でも入りましたし、可能性は低くないかなと。映画のヒットは確実でしょうしね。『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』はまあなんとなく。


ということであくまで「今のところ」の予想です。
今ヴェネツィア国際映画祭が開催中ですから、出品されているいくつかの作品はその時点で振り落とされる、または逆に上がってくるでしょう。
現時点では『White Noise』『バルド』があまり評判がよくなく、『TÁR』はかなりいいです。ブランシェットのノミネートは堅くなってきましたね。


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