
【総評】第79回アカデミー賞
みなさん、お久しぶりです。
暑い!辛い!ということでへたばっておりました。
それはさておき、久しぶりにこの企画をやります!
今回はスコセッシの『ディパーテッド』が作品賞に輝いた第79回アカデミー賞!その総括と個人的ランキングを書いていきます。
総括
この回ですが、外国語映画賞に大きなルール変更がありました。
①出品国の公用語以外で撮影された映画も資格あり
②二段階投票
①に関しては、例えば韓国語や中国語で登場人物たちが喋っていても、製作が日本なら日本代表になれるということです。実際この回でノミネートされた『ウォーター』はヒンドゥー語映画ですがカナダ代表として出品されました。
②は、いわゆる「ショートリスト」が始まったということです。まず全作品対象として投票して9作品まで絞り、その9作品から5作品をノミネート作品とするということです。
ノミネーションでは、前哨戦でも善戦していた『ドリームガールズ』が作品賞に入らなかったことがサプライズでした。『ドリームガールズ』はこの回最多8部門のノミネーションを受けたのに入らなかったのです。最多候補作品が作品賞にノミネートされなかった史上初のケースになりました。
また、外国語映画賞ではアルモドバルの『ボルベール<帰郷>』が落選したことも大きなサプライズでした。
また、イーストウッドの『硫黄島からの手紙』は日本語を使用した映画では初めて作品賞にノミネートされました。また、『バベル』菊地凛子が助演女優賞、『もしも昨日が選べたら』辻一弘がメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされ、日本勢がかなり入ってきた年となりました。
作品賞を受賞した『ディパーテッド』は外国映画のリメイクとして初めての作品賞となりました。生けるレジェンド、スコセッシが悲願のオスカーを獲得したことでも記憶されますよね。
10作品の選定
まず作品賞に入ったのは
ディパーテッド
バベル
硫黄島からの手紙
リトル・ミス・サンシャイン
クィーン
です。
そして監督賞に入ったのは
ユナイテッド93
でした。この6作品は決定。あとはノミネート数を見ていきます。上の6作品以外でノミネートが多いのは上から
ドリームガールズ(8)
パンズ・ラビリンス(6)
ブラッド・ダイヤモンド(5)
あるスキャンダルの覚え書き(4)
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト(4)
です。これでは11作品になってしまうので『あるスキャンダルの覚え書き』か『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』のどちらかを選びます。
ノミネートの内容は
あるスキャンダルの覚え書き : 主演女優賞、助演女優賞、脚色賞、作曲賞
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト : 美術賞、録音賞、音響編集賞、視覚効果賞
で、主要5部門に入っているのは『あるスキャンダルの覚え書き』なのでこちらを選びます。よって対象は
ディパーテッド
バベル
硫黄島からの手紙
リトル・ミス・サンシャイン
クィーン
ユナイテッド93
ドリームガールズ
パンズ・ラビリンス
ブラッド・ダイヤモンド
あるスキャンダルの覚え書き
とします。
個人的ランキング
第10位 『硫黄島からの手紙』

ノミネート : 作品賞、監督賞、脚本賞
受賞 : 音響編集賞
イーストウッドが監督した戦争映画で、『父親たちの星条旗』との二部作となっています。
すごくよくできている作品だと思いますが、どうしても戦争映画は苦手で…1シーンも印象に残っていないんですよね。
第9位 『ブラッド・ダイヤモンド』

ノミネート : 主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、助演男優賞(ジャイモン・フンスー)、編集賞、録音賞、音響編集賞
受賞 : なし
『ラスト サムライ』のエドワード・ズウィック監督がダイヤモンドの闇取引を描いた社会派エンタメです。
なぜか主演のディカプリオは『ディパーテッド』ではなくこちらでノミネートされました。
普通に楽しいエンタメ!という感じ。闇ルートで取引されるダイヤモンド、ソマリアの治安の悪さなどダークな部分も上手くエンタメに落とし込んでいました。
ただちょっと長すぎる。
第8位 『ディパーテッド』

ノミネート : 助演男優賞(マーク・ウォールバーグ)
受賞 : 作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞
スコセッシがようやくとったオスカー、がこれでいいのか…
日本でも絶大な人気のある香港映画『インファナル・アフェア』のリメイクで、ディカプリオやジャック・ニコルソンなど実力派キャストが揃った一級品だとは思います。
流石スコセッシという出来ではあるのですが、それまでのキャリアを考えるとこれでオスカーとって嬉しいのかなと思ってしまいます。
第7位 『あるスキャンダルの覚え書き』

ノミネート : 主演女優賞(ジュディ・デンチ)、助演女優賞(ケイト・ブランシェット)、脚色賞、作曲賞
受賞 : なし
ケイト・ブランシェット×ジュディ・デンチというすごい主演二人によるサスペンスフルな人間ドラマです。
テーマがテーマだけに好き嫌いは分かれそうですが、僕は過小評価されてる素晴らしい作品だと思います。ジュディ・デンチの行動はやり過ぎなんですが、気持ちはすごく分かるんです。当事者として。
あまり広まっていない小品ですが、是非観てもらいたい。
第6位 『リトル・ミス・サンシャイン』

ノミネート : 作品賞、助演男優賞、助演女優賞(アビゲイル・ブレスリン)
受賞 : 助演男優賞(アラン・アーキン)、脚本賞
この年のインディペンデント映画を代表する作品で、日本でもかなり人気がありますよね。アビゲイル・ブレスリン、アラン・アーキンの孫爺コンビが最高!
とても楽しく観ることが出来る名作です。ただ、コメディ映画が苦手というのもあってそこまで大好き!とはなれなかったです。
第5位 『ドリーム・ガールズ』

ノミネート : 助演男優賞(エディ・マーフィ)、美術賞、衣装デザイン賞、歌曲賞 (3)
受賞 : 助演女優賞(ジェニファー・ハドソン)、録音賞
最も下馬評が高かったのに作品賞から漏れてしまったミュージカル映画です。『ラ・ラ・ランド』といいこのところミュージカル映画はオスカー弱いですね。
歌がみんないい。本当に歌がいい。大好きなミュージカルです。ビヨンセはもちろんジェニファー・ハドソンの歌がもの凄い。ただ演技はちょっと力みすぎですね。
第4位 『ユナイテッド93』

ノミネート : 監督賞、編集賞
受賞 : なし
名匠ポール・グリーングラスによる実録サスペンスです。911の際、唯一目標に到達できず墜落した飛行機「ユナイテッド93」で何が起きていたのかを正確に描こうとした作品です。
実録だけあって手に汗握るハラハラドキドキな展開に目が釘付けでした。911関係の映画の中でも出色の出来ですし、流石グリーングラス、外さないですね。
第3位 『パンズ・ラビリンス』

ノミネート : 脚本賞、作曲賞、外国語映画賞
受賞 : 撮影賞、美術賞、メイクアップ賞
偏愛してやまないギレルモ・デル・トロ監督のブレイク作。スペイン語、それもダークなファンタジーなのにも関わらず脚本賞など6部門にノミネートされました。
本当にドキドキするダークで美しい美術、デルトロらしいギミックに溢れた傑作です。生涯ベストの一つでもあります。
単にファンタジーではなく、内戦下のスペインという当時の社会状況と結びつけられた世界観が本当に素晴らしい。悲劇的な結末にボロ泣きでした。
第2位 『バベル』

ノミネート : 作品賞、監督賞、助演女優賞(菊地凛子、アドリアナ・バラッザ)、脚本賞、編集賞
受賞 : 作曲賞
イニャリトゥ監督の群像ドラマです。日本パートでは渡辺謙、菊地凛子が出演し、助演女優賞に菊地凛子がノミネートされました。
パズルのようにはまっていく見事な群像劇で、世界各国を舞台とした展開が壮大な世界観を感じさせます。キャストも脇に至るまで見事な演技を見せています。イニャリトゥ作品の中で最も好きな作品です。
第1位 『クィーン』

ノミネート : 作品賞、監督賞、脚本賞、衣装デザイン賞、作曲賞
受賞 : 主演女優賞(ヘレン・ミレン)
スティーヴン・フリアーズ、僕好きなんですよね。この人も外さない。『危険な関係』も『あなたを抱きしめる日まで』もすごくよかった。パンチがあるというより包容力のある作品をつくる監督さんですよね。
しかしこれは作品の質としてダントツにすごかった。ヘレン・ミレンの演技ももちろん凄いんですが、作品全体に張り詰める空気が尋常じゃない。言わずとも伝わってくる静かな圧、というんでしょうか。
とにかくこれは映画としての出来が他の作品と桁違いですね。正直ダントツ1位です。