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【予習】第76回カンヌ国際映画祭-ある視点部門編
みなさんこんばんは。
コンペティション部門に続きある視点部門の作品紹介をしていきます。
『The Delinquents(Los Delincuentes)』
ロドリゴ・モレノ(アルゼンチン)
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ベルリン :
『El custodio』(2006/コンペ/アルフレッド・バウアー賞)
『Un mundo misterioso』(2011/コンペ)
ロドリゴ・モレノは90年代から活動する監督・脚本家で、本作が長編7作目となるようです。アルゼンチン映画は『人生スイッチ』『MONOS 猿と呼ばれ者たち』など不気味な存在感があり要注目です。
モランとロランという二人の銀行員を主人公にしたクライムスリラーということです。コンビということではなく、犯罪を犯した二人の男が交差するストーリーになるようです。
『How to Have Sex』
モリー・マニング・ウォーカー(イギリス)
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カンヌ :
『Good Thanks, You?』(2020/批評家週間)
その他 :
『Good Thanks, You?』(2020/釜山映画祭短編コンペ)
『The Forgotten C』(2020/英国インディペンデント映画賞短編映画賞ノミネート)
モリー・マニング・ウォーカーはイギリスの若手監督で、まだ29歳です。2020年の短編『Good Thanks, You?』がカンヌをはじめ各地の映画祭で好評を博し、初の長編映画がある視点部門入りとなりました。
スペインで休暇を過ごす3人のイギリス人ティーンエイジャーを主人公に、女性の友情や複雑なセクシャリティを描く作品とのこと。監督自身女性ですが短髪のボーイッシュな見た目の人物であり(それだけで判断してはいけませんが)、自身の経験が基になっているのかもしれませんね。
『Goodbye Julia』
モハメド・コルドファニ(スーダン)
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その他 :
『Nyerkuk』(2016/カルタゴ映画祭短編コンペ)
スーダン出身のモハメド・コルドファニ監督も本作が初長編作品。過去には短編が1作あるだけであり、かなりの快挙と言えそうです。
2011年に南北に分断される前のスーダンを舞台に、南北それぞれに住む2人の女性を描く物語です。
スーダン映画がカンヌの公式セレクションに選ばれるのは初めて、製作をつとめたのは初めてスーダンからアカデミー賞代表として提出された『You Will Die at Twenty』(2019)の監督ということです。
『The Buriti Flower(Crowrã)』
ジュアン・サラヴィザ、レネ・ナダル・メソラ(ブラジル)
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ベルリン :
『Rafa』(2012/短編コンペ作品賞)
『High Cities of Bone』(2017/短編コンペ)
『Russa』(2018/短編コンペ)
カンヌ :
『Arena』(2009/短編コンペ/パルムドール)
『Chuva é Cantoria na Aldeia dos Mortos』(2018/ある視点/審査員賞)
ヴェネツィア :
『Montanha』(2015/批評家週間)
ジュアン・サラヴィザが監督・脚本、レネ・ナダル・メソラは撮影監督として組んできたようで、今作は二人の共同監督としてクレジットされています。三大映画祭全てに出品経験があり、ある視点部門には審査員賞を受賞した『Chuva é Cantoria na Aldeia dos Mortos』以来二度目の選出です。
ブラジルの先住民族クラホ族の歴史を描いた作品で、3つの時代にまたがります。森に住む先住民の子供を通してブラジルの歴史が紐解かれます。
『The Nature of Love(Simple Comme Sylvain)』
モニア・ショクリ(カナダ)
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カンヌ :
『La femme de mon frère』(2019/ある視点/Jury Coup de Coeur賞)
その他 :
『Quelqu'un d'extraordinaire』(2013/ロカルノ映画祭短編コンペ/学生審査員賞)
監督のモニア・ショクリは俳優として知られ、『Babysitter』(2022)ではカナダ映画賞主演女優賞にノミネートされました。その『Babysitter』も自身が主演だけでなく監督もつとめた意欲作で、本作が長編三作目となるようです。
初長編『La femme de mon frère』が同部門入りし、今回が二度目となります。モントリオールの哲学教授は夫と10年間暮らしてきたが、家の改修に雇われた大工のシルヴァンに惹かれてしまう・・・という恋愛ドラマです。
社会的な立場の異なる二人の恋愛観と人生観、そして浮気という許されない関係にどう落とし前をつけるのか楽しみですね。
『The Mother of All Lies(Kadib Abyad)』
アスマエ・エル・ムーディル(モロッコ)
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その他 :
『The Postcard』(2020/アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭)
アスマエ・エル・ムーディルはカナダのドキュメンタリー作家で、まだ33歳と若いです。これまでに何本か作品を発表していますが、2020年の『The Postcard』で頭角を現し、今年は本作を含め日本が公開予定とのこと(Netflixでのプロジェクトもあるよう?)です。
本作もドキュメンタリーで、アスマエ自身が実家の引っ越しの手伝いに行き、その様子と自らの過去を振り返るという内容のようです。
『The Settlers(Los Colonos)』
フェリペ・ガルヴェス・ハベルレ(チリ)
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フェリペ監督は本作が初長編となりますが、編集者として長く映画に携わってきたようです。日本で観られるものでは『聖なる飼育』(2017)の編集を担当しています。
1901年のチリ、裕福な領主に雇われた3人の騎士を描く歴史ドラマのようです。その3人の中に先住民の若者がいるようで、彼がメインとなるのでしょうか。白人による植民地化をみつける作品でしょう。
『Omen(Augure)』
バロジ・ツィアニ(コンゴ)
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監督はどうやらラッパー「Baloji」として知られる人物のようで、『フィフティ・シェイズ』シリーズのサントラに参加した経験もあるよう。長編はこれが初のようで、脚本も手掛けています。
4人の魔術師、魔女とされる登場人物たちを主人公にしたファンタジックな作品のようです。アフリカならではの迷信、魔術を存分に味わえる語り口になるのではないでしょうか。コンゴの映画というのは観たことがない気がするので興味があります。
『The Breaking Ice(燃冬)』
アンソニー・チェン(シンガポール)
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ベルリン :
『Haze』(2008/短編コンペ)
カンヌ :
『Ah ma』(2007/短編コンペ/スペシャル・メンション)
『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013/監督週間/カメラドール)
『The Year of the Everlasting Storm』(2021/ドキュメンタリー)
その他 :
『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013/金馬奨/脚本賞・新人監督賞受賞)
『熱帯雨』(2019/金馬奨/監督賞・脚本賞ノミネート)
初長編の『イロイロ ぬくもりの記憶』でカメラドール、日本公開もされたシンガポールの俊英、アンソニー・チェンの新作!『熱帯雨』は日本公開はされていませんがフィルメックスで観てとても好きでした。
今回は大雪の中、3人の若者の人間関係が変化していく様子を描いているようです。しっとりとした風土の中の叙情的な描写が特徴のアンソニー・チェンですが、中国本土に舞台を移しどのように語っていくのか楽しみです。一般公開はともかくフィルメックスでの上映は間違いなさそうなので絶対に観ます。
『Rosalie』
ステファニー・ディ・グスト(フランス)
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カンヌ :
『ザ・ダンサー』(2016/ある視点)
その他 :
『ザ・ダンサー』(2016/セザール賞/第一回作品賞ノミネート)
ダンサーの伝記映画『ザ・ダンサー』が日本でも公開されたステファニー・ディ・グスト監督の第二作です。『ピアニスト』ブノワ・マジメル、『悪なき殺人』ナディア・テレスツィエンキーヴィッツが主演の歴史ドラマです。
1870年のフランスが舞台で、全身が毛で覆われているロザリーという女性を描きます。カフェのオーナーと出会い結婚することになりますが、彼に秘密を打ち明けることができない・・・
そんな風変わりな設定となるようです。ありのままの彼女を果たして受け入れてくれるのか、そこがポイントとなりそうです。
『If Only I Could Hibernate』
ゾルヤルガル・プレヴダシュ(モンゴル)
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その他 :
『階段』(2020/ショート・ショート・フィルムフェスティバル&アジア/環境賞)
初長編となるモンゴルのゾルヤルガル・プレヴダシュ監督は、短編『階段』がSSFFAで受賞しています。車いすと階段をテーマにしたストレートなメッセージを持つ秀作だったと記憶しています。
本作は貧しい少年が家族と進学の間で揺れ動くという物語のようです。家族を支えなければならないが、もっと勉強もしたい、そんな葛藤をどう描くのかが見ものです。
『Hopeless(Hwaran)』
キム・チャンホン(韓国)
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韓国のキム・チャンホン監督は初の長編作品となるようです。キャストはドラマ『太陽の末裔』ソン・ジュンギや元IZONEイェナと「SMILEY」でコラボした歌手のBIBIが名を連ねます。
妹と貧しく暮らす男が犯罪組織に身を投じるクライム・サスペンスです。韓国映画お得意という感じのストーリーですね。初長編となるこの監督の手腕はいかに。
『Terrestrial Verses』
アリ・アスガリ、アリレザ・ハータミー(イラン)
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ベルリン :
『Bishtar az do saat』(2013/短編コンペ)
『Il silenzio』(2016/短編コンペ作品賞)
『Ta farda』(2020/パノラマ部門)
カンヌ :
『Bishtar az do saat』(2013/短編コンペ)
『Il silenzio』(2016/短編コンペ)
ヴェネツィア :
『Bacheh』(2014/オリゾンテ部門短編部門)
『Los Versos del Olvido』(2017/オリゾンテ部門/作品賞)
『Disappearance』(2017/オリゾンテ部門)
短編とはいえ三大映画祭全てに出品経験があるイランの監督コンビです。とはいえ常に共同でやってきたわけではなく、単独作の方が多く、それぞれに実績を残しています。アリ・アスガリ監督はベルリン短編コンペの作品賞、アリレザ・ハータミー監督はヴェネツィアのオリゾンテ部門を制しています。
内容については未だ何も分かっていないようです。これからの情報を待ちましょう。イランはパナヒの不当逮捕など不穏な状況が続くので不安ですよね。映画人の自由が尊重されますように。
『Rien à Perdre』
デルフィーネ・デロゲット(フランス)
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その他 :
『Tigre』(2019/モスクワ映画祭/短編部門作品賞)
デルフィーネ監督も初長編です。『ベネデッタ』で主演したヴィルジニー・エフィラが主演を務める人間ドラマです。2人のこどもと暮らすシングルマザーがあるとき、子供の怪我をきっかけに施設に預けられてしまいます。彼女は子供を取り戻そうとしますが・・・
現代フランスの行政、福祉の矛盾を突いた社会派ドラマのようです。『ベネデッタ』の演技が強烈だったヴィルジニー・エフィラ、今度はどのような顔を見せてくれるのでしょうか。
『Les Meutes』
カマル・ラズラク(モロッコ)
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カンヌ :
『Drari』(2010/シネフォンダシオン)
こちらも初の長編映画となります。モロッコ映画もなかなか珍しいですが、『モロッコ、彼女たちの朝』(2019)は同じくある視点部門に出品され日本公開もされましたね。
さて本作は労働者階級の父子が、裏社会の組織のために働くというノワールのようです。マラケシュ映画祭のワークショップで受賞し援助を受けて製作された作品とのことです。モロッコ映画、秘かに注目株なのではないでしょうか。
『Le règne animal』
トマ・カイエ(フランス)
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カンヌ :
『ラヴ・アット・ファースト・ファイト』(2014/監督週間/FIPRESCI賞他全4冠)
その他 :
『ラヴ・アット・ファースト・ファイト』(2014/セザール賞/第一回作品賞受賞)
初長編となる『ラヴ・アット・ファースト・ファイト』が監督週間で受賞したトマ・カイエ監督の第二作です。『ラヴ・アット・ファースト・ファイト』は一般公開はされていませんが、フランス映画祭の関連企画としてアンスティチュ・フランセで上映されたようです。
本作はロマン・デュリス、アデル・エグザルコプロス、ポール・キルヒャーといったスターを迎えたSF作品です。
人間が動物へ突然変異する現象が起こった2年後が舞台です。彼らを保護する施設が設立されたが、護送車の事故により「動物」たちが逃げてしまうという物語です。
なかなかにパンチの効いた設定ですが、珍作に終わらないことを祈ります。アデルさんは変わった作品を選びがち。
ということである視点部門の紹介をしてきました。
どの程度日本で公開されるのかは未知数ですが、最も楽しみなアンソニー・チェンの新作をはじめ日本で観られるのを楽しみに待ちたいと思います。
また、初監督や珍しい国からのエントリーが多く、新しい才能にも注目したいですね。