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第94回アカデミー賞振り返り
こんにちは。
アカデミー賞、ついに発表となりましたね。
皆さん、戦績はいかがでしたか?
雑感
正直に言うと、あまり楽しくない回だったなと思います。これならまだ前回の方がよかった。
まずはウィル・スミス事件ですよね。クリス・ロックが妻の髪をいじり激怒したというものです。もちろんロックの言動はジョークとしては全く笑えないものです。彼女は脱毛症なのですから、そんな軽くいじっていいものではありません。ただ、殴打する必要があったでしょうか?それこそ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が提示してみせた「有害な男性性」なのではないでしょうか?もちろん怒るのは当然ですが、殴る必要はなかったと思います。主演男優賞のスピーチでも「俺が男として家族を守るんだ」というようなことを言っていて、『ドリームプラン』の作品自体にも感じた行き過ぎた父性、男性性のようなものを感じてしまいました。
あとは、『コーダ』の作品賞ですね。僕も泣きましたしいい作品だと思います。でもやはりリメイクですし、Netflixより先にAppleがとるというのに違和感を覚えました。
また、サプライズがあまりなかったですね。作品賞はサプライズですが、あまり嬉しいサプライズではなかったです。
司会者の三人も頑張っていたとは思いますが、影が薄かったですね。あまり面白いとは思えなかったです。ただ、エイミー・シューマーのあの対応はグッジョブだと思いました。
あとはやはり8部門の事前収録ですね。短くしたいと思う気持ちも分からなくはないですが、やはり全部門のスピーチが聞きたいんですよ。例えば今回カットされた作曲賞、『ジョーカー』で女性初の受賞となった方は簡潔ながらすごくいいスピーチでした。
全23部門中17部門と割と高い的中率でしたが、あまりいいサプライズがなく嬉しくはないです。推し作品だった『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『ドライブ・マイ・カー』が1部門のみ、『ナイトメア・アリー』は無冠ということで残念でした。
作品賞
予想→パワー・オブ・ザ・ドッグ
結果→コーダ あいのうた
勢い的には『コーダ』だなぁとは思っていましたが、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の方がやっぱり質的にも段違いに優れていると思うし、オリジナルが勝つべきだと思うのであんまりいただけないですね。
『コーダ』は好きですよ!でも『エール!』ありきの作品だし、監督賞にもノミネートされてないし…特殊な投票方式故の弊害という感じがしてしまいました。
監督賞
予想→ジェーン・カンピオン
結果→ジェーン・カンピオン
ここはもう「そりゃそう」枠ですよね。文句なしです。一番監督の力を感じた作品でしたし、『ピアノ・レッスン』でとれなかった分も合わせてというのも納得です。
主演男優賞
予想→ウィル・スミス
結果→ウィル・スミス
うーん、まあそうですよねって感じですけど本当はカンバーバッチにとってほしかったなぁ。あとは上記の理由で素直に感動できなかったです。
主演女優賞
予想→ジェシカ・チャステイン
結果→ジェシカ・チャステイン
ここは本当によかった!今までのブログでも書きましたがジェシカ・チャステインは過小評価されてきたと思っているのでとってくれてよかったです。一度BUZZが完全に消失したかなと思ったのですが、見事に盛り返しましたね。このパターンはなかなか珍しいのでは?
スピーチも喜びが溢れつつ、孤独に寄り添うような内容で感動しました。
助演男優賞
予想→トロイ・コッツァー
結果→トロイ・コッツァー
予想通りではあります。聾の男優が初受賞というのは今の多様性時代喜ばしいことです。ただ、やはりマクフィーにとってほしかったというのが本音です。
助演女優賞
予想→アリアナ・デボース
結果→アリアナ・デボース
よかった!アリアナ・デボースのスピーチもとても感動的でしたね。僕自身クィアなので本当に勇気と自信をもらいました。これからも活躍すること間違いなしの俳優さんなので注目です!
脚本賞
予想→ベルファスト
結果→ベルファスト
ケネス・ブラナー、ここで認められてよかった。今まで意識していなかったですし、正直そこまで監督として上手いと思っていなかったのですが、快心の作品でオスカーに輝いたというのは喜ばしいですね。
脚色賞
予想→パワー・オブ・ザ・ドッグ
結果→コーダ
前哨戦的にもパワー・オブ・ザ・ドッグかコーダかなとは思っていましたが、ここでコーダがとった瞬間「あ、これは作品賞いくな」と思いました。ドライブ・マイ・カーもチャンスはあると思っていたんですが残念です。
国際長編映画賞
予想→ドライブ・マイ・カー
結果→ドライブ・マイ・カー
ここはまあ当然ですが、『おくりびと』が唯一の受賞作品というのが本当に嫌だったので、この作品が更新してくれて嬉しい。『わたしは最悪。』がかなり粘っているとは聞いていたので心配だったのですが、とれて一安心でした。
そして、これを機に日本の映画界が正しく見直されるといいなと思います。日本政府は文化にお金をつぎ込みません。そのため本作も制作や配給も大手ではないですし、他の作品に比べれば段違いに低予算です。この受賞を「日本すごい!」と受け取らず、次は作品賞をとれるように芸術分野に正しくお金をかけるようにしなければこの国に未来はありません。
長編アニメーション映画賞
予想→ミラベルと魔法だらけの家
結果→ミラベルと魔法だらけの家
予想通りでしたが、ここで嬉しいサプライズがあればよかったのになあと思いましたね。ミッチェル家とマシンの反乱やFLEEとか。ディズニーの壁は厚いですね。宮崎駿の新作がその牙城を再び壊してくれるといいのですが。
長編ドキュメンタリー映画賞
予想→サマー・オブ・ソウル
結果→サマー・オブ・ソウル
これは文句なしです。後は他の作品も日本公開お願いします!
撮影賞
予想→パワー・オブ・ザ・ドッグ
結果→DUNE
いやー、DUNEがここまで技術賞総ナメにするとは。パワー・オブ・ザ・ドッグの撮影が本当に美しかったですし、女性初ということであげたかったんですけどね。
美術賞
予想→DUNE
結果→DUNE
予想はDUNEとしつつも、ナイトメア・アリーの可能性を信じてたのですが残念でした。というか美術賞超重要なのに事前収録にされても困るんですが!?
衣装デザイン賞
予想→クルエラ
結果→クルエラ
納得です。今年はこれ以外考えられないでしょう。Wエマのまとった衣装が本当に素晴らしくて、本当だったらもっとノミネートされていい作品だと思います。
編集賞
予想→ドリームプラン
結果→DUNE
いやー、編集までDUNEがとるとは思っていませんでした。これは完全に予想外です。ドリームプランかチック、チック・・・ブーン!、大穴でドント・ルック・アップだと思っていたので。
作曲賞
予想→DUNE
結果→DUNE
まあそうでしょうね。ハンス・ジマーは二度目の受賞に値すると思います。他の選択肢はないですよね。
音響賞
予想→DUNE
結果→DUNE
上に同じです。劇場で音響の力を感じたのは圧倒的にDUNEでしたから。納得です。
歌曲賞
予想→No Time to Die
結果→No Time to Die
ここは当然だと思ったのですが、思いがけずビリー・アイリッシュが好きになってしまいました。作品に合わせたシックな衣装やルック、パフォーマンスも堂々として確かな歌唱力を披露していましたね。そして受賞したときのリアクションも最高でかわいらしかったですね。やっぱりまだ20歳の女の子なんだなとほっこりしました。
視覚効果賞
予想→DUNE
結果→DUNE
ここも「そりゃそう」枠ですよね。今年これ以外はあり得ないでしょう。DUNEはマッドマックス、ゼロ・グラビティ、アバターなんかに近い雰囲気ありますね。
メイク&ヘアスタイリング賞
予想→タミー・フェイの瞳
結果→タミー・フェイの瞳
ここは正直自信なかったんです。組合賞は『星の王子ニューヨークへ行く2』が席巻してましたし。でもやはり凄いメイクだったので納得ですね。強いて言えばハウス・オブ・グッチとタイ受賞でもよかったのではとは思ってしまいますが。
短編実写映画賞
予想→The Long Goodbye
結果→The Long Goodbye
まあ僕は正直気に入った作品ではないのですが、他の作品を観てないのでなんとも。下馬評通りですね。
短編アニメーション映画賞
予想→ことりのロビン
結果→The Windshield Wiper
The Windshield Wiperはノミネート作の中で一番印象が薄くてなんとも言えないですね。下馬評ではことりのロビン、個人的なお気に入りはBestiaだったのですが。また、次の短編ドキュメンタリーもそうなんですが、そこまでNetflixに賞あげたくないのか、と思ってしまいました。
短編ドキュメンタリー映画賞
予想→オーディブル : 鼓動を響かせて
結果→The Queen of Basketball
いい作品だとは思いますよ。でもここはオーディブルにあげたかったなあ。正直コーダより好きなんですよね。
まとめ
結局Netflixは監督賞のみですか。配信会社として良質な作品を数々手がけてきただけにこれは残念です。11部門12ノミネートで受賞したのが1つだけというのは本当に残念。今までもカラーパープル、アメリカン・ハッスルとかアイリッシュマンがありましたが、作品賞本命とされながらもここまでほとんど何も受賞できなかったのは珍しいのではないでしょうか?
DUNEが最多の6部門、次がコーダの3部門、次がなんとタミー・フェイの瞳の2部門というのはバランス悪すぎませんか。いかに各部門散ったかが分かりますね。コーダは監督賞ノミネートされずに作品賞をとったのはグリーンブック以来、3部門以下のノミネートで作品賞をとったのはグランド・ホテル以来2作品目ということですから、いかに例外的であるかが分かりますね。