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読書メモ: GNH 「誕生」を巡る基礎的文献研究

日本の心を照らします☀
鉄舟です!

近頃は記事の更新が滞っておりますが、前々から氣になっていた国民総幸福「GNH (Gross National Happiness)」がどのようにして確立されたのか、に関する論文を読みましたので、アウトプット致します。

結論としては、日本におけるブータンのイメージは、実際より美化されすぎている、しかしGNH の概念を知っておくことは重要であるという認識を持ちました。


みなさん、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

ブータンは、国民総生産(GDP) ではなく、国民総幸福(GNH) を提唱した国であり、世界一幸福な国であると。

僕は、そのように聞いていたので、現代において、国を見る上で、物質的な指標ではなく、心的な指標を用いる唯一の国がブータンである、という認識を持っていました。

そんな国がどのような雰囲氣の国であるのか、実際に現地で見てみたいと思っていました。

大学院を休学してアジアを回ってた時に、金と時間が許したので、一週間ほどブータンを旅行しました。

現地で感じたことは、自然と人の営みが見事に調和された、近代化する前の日本に来たかのような感覚でした。

実際、寺や棚田など、日本の原風景に近い景色が多く、初めて来た場所なのに妙に懐かしい感覚を得ました。

現地のガイドから、「GNH には4本の柱がある。どれかが欠けても国民は幸せになれない」という説明を受けました。


現地ガイドによるGNH を支える4本の柱は、以下のようなものでした。

①国の文化伝統を守ること
②国の自然を守ること
③経済発展すること
④世界の平和を祈ること

※一般的には、4本目の柱は「良き統治」となっている。

この概念の説明を受け、衝撃を受けました。

現地のブータンの雰囲氣や、現地の人々の澄み切った瞳、篤く仏教を信仰している国民を見ていて、内容に納得がいったからです。

ブータン人は、顔も宗教・文化も日本と非常に似ていて、遠い過去は同じ場所に住んでいたのではないか、同じ民族だったのではないか、と感じました。

ブータン人に幸福に対する考え方は、日本人にも適応できると確信しました。

しかし、ブータン人も受験競争や農村の過疎化、都市部への人口集中など、日本と同じような社会問題を抱えていました。

また、情報が自由化されて以降、ブータン人の幸福度が急落しているという話もあります。

はたして、本当にブータン人は幸せといえるのだろうか?GNHを支える4本の柱の概念は、本当に採用すべき概念だろうか?そんな疑問が湧きました。

そこで、GNHの概念、とりわけ4本の柱の概念が形成された経緯を知れば、GNH の概念が本当に意義の大きいものなのか、納得できるのではないかと思いました。

日本で「ブータン勉強会」なるオンライン無料セミナーを開催している、お茶の水女子大学の平山雄大先生に、ダメ元でメールにて、GNHの4本の柱が成立した経緯について質問させていただきました。

端的にポイントをご教示くださりつつ、ご自身のGNH 誕生に関する研究論文をご紹介くださりました。

その論文を拝読し、自分の持っていた認識と実際が異なることをよく理解しました。

例えば、以下のような点です。
・GNH は、あくまで国外向けに発信された概念であること
・国民には、経済的自立と官民協働を継続的に訴えていたこと
・4本の柱の概念がGNH と正式にリンクしたのは21世紀に入ってからであること

とりわけ重要な点としては、「ブータンはGNH の最大化を既に成し遂げた国ではない。他の多くの開発途上国と同様、政府は国民の基本的なニーズを満たすために日々奮闘している」ということを強調しておきたいです。

GNH を提唱した国 = 世界一幸福な国 (≒GNH 最大化を成し遂げた国) と、単純に考えてしまう人がほとんどだと思います。

僕もそうでした。

実際には、幸福になるために日々奮闘しており、GNH の概念は、そうした奮闘の中で考え出された概念であり、世界一幸福な国と捉えるのは早急だったと思います。

ただし、GNHを支える4本の柱とは、第4代国王が目指す幸福な国家像を反映していることは、確かであるようです。

まだ各種統計がなくてGDPを算出できなかった時代、第4代国王は、豊かな自然、伝統的な宗教・文化、麗しい人と人との結びつき、良き統治というものをブータンの財産とし、こうした貴重な財産を重視して経済計画策定を試みました。

あくまで苦肉の策として出てきたGNH ではありましたが、強い伝統や文化を保持し続けた開発を考えていく上で、4 本の柱は確固たる信念になったようです。

第4代ブータン国王は、非常に聡明で高い人格を有した素晴らしいリーダーだったようです。 

そのような方が、本氣で国民の幸福を願って編み出した概念がGNH であるので、普遍性を持った概念とも思います。

世界一幸福な国というのは、我々が勝手に抱いた虚像ではありましたが、GNH 誕生にはどのような背景があったのか、よく知ることができました。

経済発展だけでは、人は幸福になれない。
独自の文化を貫き、自然を守りつつ、経済的に自立することで、国家主権を強くする。
そのために官民の協力が必要不可欠であること。

現代日本を生きる僕たちに、自尊自立の精神を育むこの考え方や意識は、大変重要ではないかと思います。


今回拝読した論文は、以下の「GNH研究」第三号に掲載されています。


もしご興味ありましたらご一読ください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

参考文献
平山雄大 (2016) , GNH 「誕生」を巡る基礎的文献研究, GNH(国民総幸福度)研究〜GNH研究の最前線〜, vol 3, p9-35.




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