
大企業を蝕む「成功の毒性」4つの兆候とトヨタのカイゼンサイクル
もはや定着した感のある「人生100年時代」というコトバ。人間はどんどん長生きするようになっています。一方で、企業は短命です。アメリカ企業を対象にした調査では、40年存続する企業はごく少数で、0.1%に満たないことが分かっています。
我が世の春を謳歌していた大企業が、わずか数年の間に凋落する姿は洋の東西を問わず繰り返されてきました。
今回はノキアを例に、大企業を蝕む「成功の毒性」について整理します。2000年代最強の携帯電話メーカーだった同社は、スマホシフトに失敗し一時は倒産の危機に陥りましたが、大胆な改革に着手することで復活しました。
成功の毒性の4つのサインとは?
ノキア再建の立役者・リスト・シラスマ会長は「企業の成功には毒性がある」と語ります。そして成功の毒性には4つのサインが存在することを示しています。
企業は成功を重ねることで、無意識のうちに「これまで成功してきたのだから、将来の成功も保証されている」という錯覚に陥りがちです。特に過去に大成功を収めた企業は、間違いに向き合うことが難しくなります。
成功の毒性を示す典型的なサインは、悪いニュースがトップマネジメントまで届かなくなることです。失敗を厳しく叱責する企業文化が形成されてしまうと、従業員には失敗を隠蔽しようというインセンティブが働きます。
しかし、失敗の隠蔽は長期的に何のメリットももたらしません。本来、失敗は組織が学習するチャンスなのです。
トヨタの「バッド・ニュース・ファースト」の原則
トヨタ自動車には、悪いニュースはすぐに報告し、学習するという企業文化があります。失敗をオープンにし、組織で共有することによって、カイゼンサイクルを回すチャンスが生まれるからです。
トヨタ式が大切にしていることの一つは「バッド・ニュース・ファースト」です。どんな小さなミスや異常でも「隠す」とか「あとで何とかする」のではなく、「すぐに」「みんなに見える」ようにしてこそ、ミスや失敗は「より良いもの」をつくるチャンスになり、その人だけでなく、みんなの成長の糧になるのです。
そうはいっても、都合が悪いことは隠したくなるのが人間です。失敗をオープンにするためには、それをサポートする企業文化が欠かせません。
「人を責めるな、しくみを責めろ」
トヨタには、「人を責めるな、しくみを責めろ」という言葉があります。誰かが失敗したとき、その作業者個人を責めるのではなく、失敗を起こしてしまった仕組みを改善することに重きを置いているのです。
問題を徹底して構造化しカイゼンしていく企業文化が、トヨタという企業の強さ、現場力の高さに繋がっています。
過去の成功体験に安住しないためには、オープンな企業文化が欠かせません。悪いニュースがトップマネジメントまで届かなくなると、組織は弱体化してしまうというわけです。
今回は以上です。