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【決算解説】オンワードHDの巨額赤字を調べたら、百貨店で服が売れなくなっていた。
アパレル大手のオンワードホールディングスが、2020年2月期に521億円もの巨額の赤字を計上しました。不採算店舗の閉鎖や希望退職の実施による特別損失が大きく膨らんだことが原因です。
今回は、そんなオンワードホールディングスの決算と、同社が進めるデジタルトランスフォーメーションについて整理します。
事業構造改革の痛み
上のグラフは、過去10年間のオンワードホールディングスの当期純利益を示しています。
これまで、同社の当期純利益は概ね30億円~50億円で推移してきました。それだけに、今回の当期純損失の大きさが際立ちます。事業構造改革の痛みが非常に大きいわけです。
2年間で1400店舗を閉店
オンワードホールディングスは、2019年と2020年に合計1400店舗を閉店する計画を進めています。これは、従来の店舗数の約50%にあたります。
同社が店舗数を半減させる狙いは、デジタルシフトにあります。企業に体力のあるうちに、事業構造改革をやり切ってしまおうという狙いが見えます。
売上の半分をECで稼ぐ
オンワードホールディングス代表取締役の保元氏は、メディアからの取材に対し「デジタルシフトを3倍速で進めていく必要がある」と述べています。
リアル店舗は縮小し、売上高の半分以上をECで稼げるようにすることを目指しています。※ 現在の同社のEC売上比率は1割強
キーワードは百貨店×女性
上記は、オンワードホールディングスの中核子会社であるオンワード樫山のチャネル別、品種別の売上高を示しています。
ヒトコトでまとめると、これまでオンワードは「百貨店の女性をターゲットにしてきた」と言えます。
チャネル別では、6割超を百貨店売上が占めており、品種別では婦人服が7割超と圧倒的に高い比率を示しています。
これこそが、オンワードが事業構造改革を急ぐ理由です。百貨店への依存度が高い状態を解消する必要に迫られているのです。
百貨店で服を買う女性が半減
百貨店の婦人服売上は過去15年間で半減しました。
2004年には年間2兆円近くあった婦人服の売上が、2019年には約1兆円に急減しています。女性が百貨店で服を買わなくなっているわけです。
このことは、百貨店に売上の6割を依存するオンワードにとって重要な意味を持ちます。
この先も百貨店離れのトレンドは続くことでしょうから、先手をとって事業構造改革を進める必要があるのです。
沈みゆくタイタニック号からいち早く脱出しようとしている、とも言えるかもしれません。
今回は以上です。