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宿泊施設0件の町で寺泊をはじめた坊主の振り返り
構想約3年
2023年1月30日 一粒万倍日
宿泊施設が1件もない町に寺泊(お寺の宿泊施設。ここではあえて宿坊とは呼ばず、寺泊と呼びます)をオープンしました。この1年間の振り返りをここに記していきたいと思います。さあどうなるか、なかなかチャレンジングな取り組みです。観光地であればその地が目的地となり、宿泊施設が選ばれますが、観光の「か」の字もないこの地域。そのインセンティブが一切働かきません。宿泊施設自体が目的地とならなければならず、ハードル高めです。
ちなみに、開業の経緯や想いなどは長くなってしまうので、こちらには綴らず、ホームページや取材記事にてご覧ください。(といっても長いエントリーですが笑)
さてさて、さまざまなハードルがありましたが、たくさんの方々のお力添えでオープンまでたどり着くことができました。
素晴らしいアイディアの設計
それを持ち前の腕っぷしで実現する職人
今までとは異なる表情を演出する照明デザイナー
完成した施設の魅力を最大化するカメラマン
表には見えないけどとても重要な設備士、工事士
同じ町内で活躍する仏教語テーマで珈琲豆つくりたい!というむちゃぶりに答えてくれる焙煎士(2023年12月、町内に焙煎所兼カフェオープン!)
この魅力を最大限引き上げて発信してくれる広報
ここには上げきれないほどのご支援を多方面からいただき、ついにオープン。お寺の歴史に新たな1ページを描いたこの1年を振り返りたいと思います。余談ですが、私自身についてはこちらの記事で気持ちよくまとめてくれているので、ご笑覧くださいませ。
陸の孤島と呼ばれた町
宿の話をする前に、どんな場所にこの宿泊施設があるのかをお伝えしておきたいと思います。1にも2にも場所、と言われるぐらい宿泊施設の運営にとって場所は重要です。その条件を一切無視(ここでやるしかない笑)した環境での挑戦です。
そして、なぜ陸の孤島と呼ばれるのか。この千代田町、関東平野のど真ん中に位置する真っ平らな町です。東京から直線距離だと70kmぐらい。意外と近いのですが、大きな大きな川に阻まれています。そう、利根川。この利根川があるからこそ、この地域は水資源などは豊かで生活するにはとてもいい環境なのですが、如何せんアクセスが悪い。そして、横長な町。この町にたどり着くには、利根川を渡って隣町からぐるっとまわっていかないとたどり着けない。
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そんな条件下のこの町。群馬県の形をよく「鶴」に例えて話すのですが、その鶴の首のあたりが千代田町。(鶴舞う形の群馬県、というフレーズは群馬県民なら絶対通じる)
町に駅はおろか、電車の線路すらかすめていない
高速のインターもない
国道すら走ってない
片側二車線道路すらない・・・?
町にかかる正式な橋もない
※ついに新橋建設が決まりました😭
そして、人口は約1万1000人。交通アクセスは車がなければ超悪条件というこの町ですが(逆に車だと結構アクセス良い)、ふるさと納税が群馬県内でぶっちぎり1位という追い風もあり、いざオープン。お寺を起点とした地域おこしが始まります。
プレスリリースの影響力
オープンの際には兼ねてからの友人に広報のプロがいたので、その方の力を借りてプレスリリースを配信。この影響力がすごかった。特に影響力があったのが「FASHION PRESS」
さすがはFASHION PRESS。いいねが1000件近く、表示回数も40万。これをみて予約してくれたという方もたくさんいらっしゃり本当に有り難い限り🙏
この他にもたくさんのメディアに取り上げていただきました。メディアの力ってすごい、肌で感じた瞬間でした。個人的にかなり嬉しかったのは「TIME OUT」でのこの記事
こうして取り上げていただけるとテンションあがります笑
ふるさと納税の活用
そして活用しない手はないだろう、ふるさと納税。千代田町にはサントリー天然水のビール工場があり、宅飲み需要が増えたこともあり激増。宿泊補助券という形で掲載させていただいております。これまたメディアバリューが高まり、非常に有り難い宣伝効果です。
デービッド・アトキンソン氏ご来山
そして6月。超絶驚きのビッグイベントが突如到来。あの知る人ぞ知る(いや皆知ってるか)デービッド・アトキンソン氏がなんとお越しくださいました!群馬県の観光アドバイザー?をされているそうで、その流れでTEMPLESTAY ZENSŌが選ばれ、わざわざ足をお運びくださいました😭 会いたくて会える方ではなく、この奇跡たるや!Newspicks等で画面越しに見ていた方が目の前に。かれこれ2時間強、直接対話することができ、宿のこと、お寺のこと、地域のこと、なんとも贅沢な時間を過ごさせていただきました。
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インフルエンサーという破壊力
開業時のPRはなかなか幸先の良いスタート。春先ぐらいまでこの影響力のおかげもあって、ご予約をたくさんいただきました^^ しかし、観光業界全体で鈍化する6月、ホッと一息つくとともに予約も一息ついてしまう。先を見越していろいろと施策を講じていかなければ、と思っていた矢先。とんでもないミラクルが起こります。なんとたまたま宿泊に来てくれた方でインフルエンサーの方で、その影響力が絶大過ぎました・・・!
タイトル未設定になってしまっていますが、TikTok(Douyin)とbilibiliです。中国パワー・・・!その威力や。いかんせん桁が違う。
周辺施設を調べたときにワンちゃんOKの宿がないなと思い、ワンちゃんOKで設計していったことが功を奏しました。下のMapをみてもらうとわかるのですが、宿泊施設があってもビジネスホテル(旅館)ばかり。観光に適した宿泊施設がこのエリアはほぼないのです。ましてやワンちゃんOKな宿なんて尚更。(縮尺小さく表示する方法がわからず、大きいままになってしまいました)
そして、この投稿があった7月から一気にインバウンド色が強くなっていきます。国内だけでなくインバウンドの方々のレビューも溜まっていったことにより、そのレビューをみて更に予約が入るという好スパイラルが起こってくれたのではないかと思います。が、しかしここで大きな課題に直面します。
ちょっと余談。動画にも写っているこの船。川の上にある公道。赤岩渡船。なかなかユニークな場所です。なぜかは不明ですが、中国の方々に意外と人気です笑 ワンちゃんも乗れて自転車も乗れます。
二次交通・ラストワンマイルの脆さ
大きな課題。そう宿にたどりつくまでの交通手段、あるいは連泊時の移動手段です。この宿に公共交通機関を利用して来る場合、電車であれば最寄り駅は東武小泉線東小泉駅になります。そこから約4km。タクシーは呼ばないと来ない駅です。が、しかし、呼んで来てくれればまだいいのですが、呼べないことも。以前タクシーで帰ろうと思って地元のタクシー会社に電話をしたら、なんと営業時間外アナウンス・・・。たしか金曜日の夜。稼ぎ時じゃないのか!まさかまさか、よくテレビなどで報じられているような人手不足の話、山間部などのことかと思いきや、身近なところでも。東小泉駅まできて、途中まで歩いて向かっていたという猛者もいました・・・!(この方は途中で連絡あり、迎えに行き、事なきを得ました)
そして、もう1つが滞在時の交通手段。比較的1泊2日でのご利用が多いのですが、2泊、3泊滞在していただく機会も増えていきました。車でお越しいただければそれなりにいけるところはたくさんあるのですが、公共交通機関で来るとその後がどうにもならない。一緒に食材の買い出しにいったりとご案内もたまーにしております・・・✌
もちろんお寺での滞在コンテンツは色々とご用意しております。坐禅、写経、朝のお勤めにはじまり、BBQやピザ窯、町内事業者と連携した飲食物の提供などなど。が、しかし、やはりこの宿を起点として周遊できたほうがよい。そして地元のお店に足を運んでほしい。
「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の採択
ということで、千代田町と一緒に観光庁の補助事業へ応募し、無事に採択!その中で自転車を整備し周遊観光につなげるという取り組みがあり、実装間近!(なはず笑)
この事業の中で、台湾向けのPRとして発信していただいたのがこちら。
こちらもたくさんの方に認知していただけたのかと思います🙌
ゲストの声
もともとは研修用にと思って、施設内に透明ホワイトボードを設置していたのですが、何も書いていない透明ホワイトボードに最初の方のゲストがコメントを残してくれると、それがきっかけとなって、泊まる人泊まる人それぞれがコメントを書いてくれるようになりました^^
これがまたとても心温まる声で、運営の励みになっています。ゲストが帰るとなにか書いてくれてるかな?とちょっと期待しています笑
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もちろんこれ以外にもAirbnbやGoogleMapのレビューも書いてくださっており、これも非常に有り難い🙏 Airbnbは評価5.0をいただけており、本当に感謝。これを継続できるよう精進せねばと気合が入ります。
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数字の振り返り
さて、つらつらとこの1年間を思い返し書き記してきましたが、その結果やいかに。ということで数字的な振り返りをきちんとしておきましょう。
国別実績:国内:65%|インバウンド:35%
オープンから半年は9割国内でしたが、後半から怒涛のインバウンド!
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自社予約比率:43% ← 我ながらあっぱれ。
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宿泊者属性:年代:30代以下が約70% なかなか興味深い
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宿泊者属性:性別
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宿泊者属性:居住地(日本のみ) 圧倒的東京。
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平均滞在日数:1.3日 ← ここをもっと伸ばしていきたい
平均宿泊人数:3.03人 ※定員6名 ← 目指せ4.0
当初想定よりかなり順調にご予約いただいており、良い結果を残せています。宿泊施設0件の町なので、この数字が活きたデータとしては非常に意味あるものになるかなと思っています。年末のご挨拶とこの数値をもって、先日町長に報告に伺わせていただきました。町への玄関口となるわかりやすい交通手段のない町で、若者の比率が高いことに驚いていました。
ワンオペで回している宿泊施設にしては、これでもかというぐらいやり込んだ1年。まさにロケットスタート。まずは、この町に1つのユニークな点を創り出すことができました。そして、2023年12月には更にユニークな点がもう1つできました。TEMPLESTAY ZENSŌの開業時からただ飲むだけでなく、体験として取り入れていくことを一緒に実現していただいたhiraku coffeeさん。ついにお店がオープン!こだわりが詰め込まれたあったかいお店です。
点と点をつなぎ、そして、面へ。
ビギナーズラックとならぬよう、この良い機運、流れのまま来年度も取り組んでいきます!
来年度(将来)取り組みたいこと
この1年間やれることはやりきった感満載ですが、まだまだこの宿泊施設の付加価値を高めていきたいと思っています。というよりこれからですね。オープンして2年目、3年目が勝負どころ。とにかくローカル、この地に来たからにはこの地のものを。
いろいろアイディアは浮かんできますが、実現可能性が高いもの、未知数なもの等グラデーションがありますが、そのアイディアを脳みそ置き場的にここに記しておきたいと思います。
サウナ設置:「調う」文脈は禅宗にハマる。
井戸水が豊富で水質もよくとても冷たい良い水風呂ができるので、水風呂としての価値も高められる。
パンフレットの作成
なにかと紙媒体があると便利。まだ一度もつくっていないので、作成したい。
ホームページの多言語化
やろうと思ってなかなか着手できていない。英語と中国語で作成したい。
宿泊者用作務衣の提供
現状パジャマの提供はなし。お寺に来たからには作務衣着てみたいというニーズも少なからずあるのでは?
町内周遊用の自転車の整備
今年度の事業できちんと整備できれば来年度から運用開始できる?!
普茶料理の提供
よりお寺体験の深度を上げていくためのコンテンツ。黄檗宗といえば普茶料理(黄檗版精進料理)これだけで関東だとかなりレア。
独自商品の開発
この宿でしか体験できない商品、飲食物等の提供。お寺ならではのお土産づくりをしていきたい。
町内でのアクティビティの整備
利根川河川敷の活用などなど
広域連携
訪れる方はこの千代田だけでなく、その周辺も導線になる。邑楽郡という平成の大合併で唯一独立を保ったこの5町は、いまとなってはそれぞれがユニークな自治体。単体では弱いかもしれないが、この邑楽郡がDMOのように稼働すれば、非常に面白くなるのではと思っている。
ご祈祷付きプラン等高付加価値滞在プラン
ご祈祷や祈願等その方のためだけのオリジナル滞在プランの提供
お盆期間中の販売 ←超難題!
お盆参りもあり、現状のリソースでは販売できていない。しかし1年で最も販売チャンスの大きい時期の1つに提供できない機会損失は大きい。ここを地域連携を進めてなんとかクリアしたい。
地域農家と連携した収穫体験×BBQ
檀家さんとの連携ももっと進めていきたい。
豊富な地下水を活かしたコンテンツづくり
近くにはサントリー天然水のビール工場があり、この地域の地下水の品質は折り込み済み。この豊富な水を活用したい。
お寺で研修
お寺で泊まる最もディープな体験を実現するには研修としての活用が必要かなと。
一緒に盛り上げてくれる人、大募集!
まだまだやれることはたくさんあるはず。こんな地域にあるこんなお寺の宿ですが、一緒に取り組めそうなことがあればぜひご一緒しましょう。アイディアベースでももちろんウェルカムです!気軽にご連絡いただけますと幸いです!
ご予約はこちら
振り返ってみれば怒涛の1年だった2023年。本当にあっという間。卯の如く高く飛び、そして来年は辰の如く美しく舞い踊っていこうじゃありませんか。
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次年度も引き続きTEMPLESTAY ZENSŌをよろしくお願いいたします🙏
Shunko