健康のためなら……いやいや、だまされるな!
『健康第一! 健康のためなら死んでもいい!』
何度か訪れる「健康ブーム」のたびに、皮肉をこめたジョークを耳にします。
紅茶キノコだったり、ウコンだったり、青汁、軟骨成分、各種ポリフェノール、エフェドラ、マイナスイオンなど、その時々によって流行の主役が代わり、あまり効かないモノ、摂りすぎると害になるモノもありましたね。
私の父も一時「ウコン」に凝り、狭い庭を全てウコン農園にして大量のウコンを生産し、老人仲間に分けていました。
「ウコンも摂りすぎは有害らしいよ」
そう言っても、なかなか信じませんでした。
『……死んでもいい!』
とはさすがに思わなくても、
『健康のためには、お金を惜しんじゃいけない!」
と考える人は多いでしょうね。
ユウタくんがおばあちゃんに連れて行かれたのも、健康食品のお店です:
このコメディを書いたのは、10日ほど前、ある地域を探検中に、健康食品と発酵食品のお店を見かけたのがきっかけです。中を覗くと、絵に描いたようにお年寄りが集められ、何かの説明会が始まろうとしていました。
帰宅して妻に話すと、友人から聞いたエピソードを話してくれました。
年老いてひとり暮らしだった母親が施設に入ることになり、空き家になった家の整理を始めると、各種健康食品と、その購入に関わる書類が山のように出て来たそうです。
かなりの金額のものもあり、購入のためローンまで組んでいたそうです。
「催眠商法」で検索すると、警察、国民生活センター、全国の自治体から「注意喚起」がされています。
「注意喚起」が全国の自治体に渡り、異常な多さなのは、被害に合う人もそれだけ多いということでしょう。
最初は「日用品がタダでもらえる!」というようなチラシで人を集めるようですね。あとは個別に隔離して買わないと申し訳ないと思わせる作戦だったり、説明会場に集められその場の雰囲気に酔った状態で購入させたりなど、いくつかのパターンがあるようです。
ある種の宗教勧誘に似ています。
「クーリングオフ」期間内の解約は可能ですが、
・判断したのは自分なんだから
・相手に迷惑がかかるから
などと、ためらうケースが多いようです。
高齢者の子供世代はネットでこうした警告を見る機会があるでしょうが、やはり離れて暮らす高齢者自身が、直接目にする形で警告するのがいいでしょう。
町内の掲示板に貼り紙したり、民生委員が回って警告したりするのがいいかもしれません。
2年ほど前だったか、伊藤忠商事会長CEOの岡藤正広さんが、夕刊コラムに書いておられた:
この「人に迷惑をかけるな」という幼い頃からのしつけ ── 本来は美徳のはずですが、これが昨今の「特殊詐欺や詐欺まがい商法に遭いやすい」日本人(特に高齢者)を生んでいないだろうか?
核家族化でひとり暮らしになった高齢者が、他人に世話にならずに自分ひとりで判断しようとする ── その結果として……。
子供の頃から「人にだまされるな」を教えていかねばならない時代が来ているのかもしれません。