
「また、コビトさんがいたよ」
私の家にはコビトさんが住んでいる ── らしい。
どこにいるかって?
まずは小さなワインクーラーと乾燥機が置いてある、裏口に面した1畳あまりの小部屋。
そして、私の寝室に付属している、これも1畳あまりのウォークイン・クローゼット。
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「ちょっとアンタ! またクローゼットの電灯、点けっぱなしだったわよ!」
「え? オレじゃないよ」
「アンタじゃなかったら誰なのよ! アタシ、あんなところに入らないわよ」
「うーむ……」
どこの家にでもあるこんなやりとり、コビトさんが解決してくれます。
「……あ、わかった! コビトさんたちがクローゼットで集会を開いていたんだ! ……それでキミが突然入って来たから大急ぎで隠れて電灯消す暇がなかったんだ! コビトさんの仕業に間違いない!」
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「おーい、風呂から上がってバスタオルを乾燥機にかけた後、電灯消し忘れてたぞ!」
「え? アタシじゃないわよ。……夜の間、コビトさんがあそこ、使ってるみたいよ」
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このやりとりは次第に『進化』していきます ── そして家庭に『平和』が訪れます。
「おーい、また裏口、コビトさんが出没してたぞ」
「ええ? またなの?」
「クローゼット、コビトさんが消し忘れてたよ」
「しょうがないなあ、コビトさんたち!」
── 家主の高年齢化と共に、コビトさんたちの出現確率は高くなっていくようでした。
(……そのうち、乗っ取られるのでは??)