クリスマスに観るべき2つの物語
何も捨てることができない人には
何も変えることはできないだろう
―――――アルミン・アルレルト(『進撃の巨人』より)
▼▼▼クリスマスについて▼▼▼
今日はクリスマスだ。
子どものころはプレゼントをもらえる日、
みたいにテンションが上がっていた。
20代のころは、
何かよく分からないけれど、
テンションを上げなければならないような気がする、
世の中が全体が軽薄で浮ついている感じが嫌で、
けっこう苦手な日だった。
30代は転職とか結婚とか鬱とかで、
もう、あんまりよく覚えていない。
妻と二人でクリスマスを祝ったときは、
とても幸せだったことだけは覚えているが。
40代になった今、
子どもがプレゼントをもらってテンションが上がるのが、
楽しみになると同時に、
「イエスの誕生」をしみじみと神に感謝する、
という本来の意味にやっと帰ってきた感じがする。
たどり着いた、というか。
▼▼▼2つの物語▼▼▼
クリスマスになると思い出す物語が2つある。
ひとつは『クリスマス・キャロル』。
チャールズ・ディケンズの名作だ。
ディケンズはカール・マルクスが『資本論』を執筆した、
産業革命後の19世紀のロンドンで活躍した。
ちなみにマルクスはディケンズの愛読者だったそうだ。
僕がちゃんと『クリスマス・キャロル』を観たのは、
2009年のディズニーのバージョンだ。
とにかくこの話しを知りたい、
という人は2009年のディズニー版をお勧めする。
クリスマスに観るのに最高の映画だ。
それから後日、
原作の日本語訳を岩波文庫で読んだ。
その後書きがとても良くて、
当時のイギリス社会の文脈と、
この物語が書かれた必然がとてもよく分かるし、
そして実は『クリスマス・キャロル』は、
とても現代的なテーマでもあることがよく分かる。
当時のイギリスは、
「資本家と労働者」という二つの階級に分裂した時期だった。
資本家は生産手段を独占し蓄財した。
労働者は生産手段を奪われ、
子どもですら長時間時間労働をしなければ食っていけなくなった。
工場の排気ガスで肺炎になり多くの人々が命を落とした。
当時に作られた法律で、
「16歳以下の子どもの労働を、
1日に12時間以内に制限する」
というのがある。
実態は12時間以上、子どもが働いていたということだ。
エンゲルスがこれを告発している。
ディケンズ自身も父親が借金を払えずに、
監獄生活をしたこともある、
「労働者階級の辛酸」を舐めた人物だった。
イギリスは一方で、
ジョン・ウェスレーに端を発する、
キリスト教の博愛精神の発祥の地でもある。
ウェスレーは言った。
「できるかぎり勤勉に働き、
可能な限り節約し貯蓄せよ。
そして、あたう限り大胆に他者に与えよ。」
最初の二つは守られるが、
最後のひとつは守られないようになった。
格差は拡大し、マルクスは、
「革命以外にこの状況を変えることができない」と考え、
「プロレタリアート革命」を呼びかけた。
万国の労働者よ、団結せよ。
『GAFA 四騎士が創り変えた世界』を著した、
スコット・ギャロウェイは、
「現代のアメリカは300万人の資本家と、
3億人の奴隷が暮らす国になった、
もはや資本主義国家ではない。」
と言っている。
曰く、「経済」の目的は中産階級を作ることだが、
1970年以降、「中流」がごっそりいなくなり、
一握りの超富裕層と、
低賃金労働で搾り取られ、
親の時代より貧しい労働者に二極化した。
現代のアメリカの政治不安も、
実はこの貧富の格差と二極化が根底にある。
本当にマルクスの言うように、
革命しかないのか。
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