思考と考察の往復は往復でありながら螺旋状であること
今日はKyotographieも最終日ですが、もうひとつ。galerie lieu lieuとしては石場文子個展も本日最終日です。自分のnote習慣が間に合わなくてけっきょく最終日になってしまいました……せめて最終日にひとつだけでも……ということで。それを踏まえて夏以降の予定にご期待いただければ(圧倒的ポジティブ)幸いです。
そも。石場作品はパッと書けるような感じでもなくて、あれこれ考えながらいるとあっという間に時空を超越します。
作品の方向性として、視覚的な面白さや意外性的なフックもさることながら、基本的に「考える」ことを要する作品たち。
いろいろ考えることが楽しく、ぐるぐると思考を巡らせていくのが好きな人はすごく良いと思います。
逆に「ドン!バン!キラーン!」ってハリウッド映画的な派手な感じが好きな人は合わないかもしれません。シンプルではあるのですが、絶対的にわかりやすくはないです。わかりやすいと感じたのであれば、それは残念ながらまだ深淵の淵の淵の安全なところから奥を眺めているだけですので、ぜひもう少し踏み込んでいただけると良いかなと。いっそ踏み外しても宜しいかと。
作家自身、一過性のアイディアで作っているわけではなく、今回の展示タイトルにもある通り短い距離を行ったり来たりを繰り返す運動、それを作品制作を考える時間の積み重ねと思考の揺れ動きになぞらえています。
そう聞くと瞬発力(=発想力?)がキーワードかと思われますが、本来のシャトルランの目的としては実際のところ測定するのは「持久力」だそうで。
自分もむしろ、実はその「持久力」の方が作品を見ていく上で重要なポイントになっていくのではないか……
今回に限らず、アートを鑑賞していく(あるいは制作していく)上で実はけっこう重要な要素って持久性にあるような気がしています。
ひとつ今回改めてそう感じたことのひとつに、自分の周囲でご観覧いただいた方との会話で、思考を有するが故に初見(少しの時間では)では何か感情が動く気持ちはあってもその瞬間では消化しきれない。ということ。
たしかに。
最初にみて、次にみて、また……と繰り返し、その都度、思ったことや感じたことを考えながら徐々に積み上げていくからこそ見えてくるものがあるかもしれません。
一度みた体験をその場で「そういうことか」とせず、なんとなくふとした瞬間に「あれ?あれってそういうこと……」みたいな揺り返しをゆっくりとしていくような。
作家や作品の内容にもより、大なり小なりアートはかくもそういうものであるとも言えますね。初見で圧倒されるものも中にはありますが、ある意味で作品と鑑賞者として自分との関係性を構築していく……そういう時間を経て作っていくというのとても良い体験な気がします。
そして同じところをぐるぐる回るのではなく、螺旋状に登っていけるとなおさら良い。
そういう点と点として発信していったり、提供できる機会をいかに作っていくが、が自分たちとしても必要なのかも。ともいろいろ考えつつ。
デジタル的に食べやすいものがもてはやされる時代かもしれませんが、スローライフな嗜好よろしく、あえて噛んで噛んで噛んでいくことの充実感をぜひ。
*
石場文子個展「 Shuttle Run 2022」
会期:2022年4月22日(金)-5月8日(日)
営業時間:12:00-19:00
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?