津軽海峡。
2年振りに訪れた津軽海峡。
恐らく私は日本でトップレベルにクロマグロ遊漁問題に取り組んでいますが海上に立つのは久しぶり。
海はいつもと変わらず私たちを迎えてくれた。
マグロ釣りの聖地、青森県小泊漁港は変わらず活気に溢れている。
港からすぐ、漢たちの聖地の定宿津軽小泊館を訪れると女将さんがいつもの笑顔で迎えてくれた。実家に帰省した気分だ。
青く眩しい空と海。
港から出るとすぐ右には「津軽海峡冬景色」でも歌われた竜飛岬、左には権現崎が悠々と立ち並ぶ。いつ見ても濃く生い茂る緑と勇敢な岩壁の迫力に圧倒される。
きっと何百年も前から同じ景色を先人たちが見ていたのだと妄想するのが大好きだ。
クロマグロは現在厳しい資源管理が実施され自由に釣りをすることはできない。
特に青森県や北海道は毎年釣り禁止期間が多くなってしまい、遊漁船や地元事業者は大きなダメージを受けている。
規制をする政府水産庁も認識しており、月別の採捕上限を導入したりと工夫をするが毎年海況が異なるのでなかなかうまくいかない。
それでも事業者たちは団結し、ルールを守り、キャッチアンドリリースの普及に努め水産庁とも連携できるようになった。環境はこの数年で格段と良くなっている。
いろいろな思いで海に立つと、すぐに答えてくれた。
船の目の前で数匹のシイラが跳ねると突然数メートルの水柱が立つ。
そう、「シイラパターン」と呼ばれるモンスターマグロの出現だ。50cmほどあるシイラをマグロが捕食する。
クロマグロ遊漁船事業者協議会の代表で取りまとめも行い共に活動するベテラン工藤船長は叫んだ。「こりゃでかい、300kgはあるぞ」
マグロの跳ねに近づくとシイラを捕食して跳ねている。もはや魚ではなく動物、圧巻の光景だ。ルアーをキャストするもタイミングが合わずにマグロのバイトはなかった。
少し立つと遠方でシイラの群れが水面を跳ねながら逃げ始めた。どうだろう、100匹近い群れだろうか。一直線に並び逃げ続けるシイラの群れに向かい船を走らせる。すると突如シイラの群れは一斉に水面下に潜り見えなくなった。
その直後、巨大なマグロが水面から飛び出てシイラの捕食を開始した。15匹ほどの巨大なマグロの群れが見事なチームプレーでシイラを捕食している。
どれも200kgから300kgほどの巨大マグロたちだ。圧巻の光景。自然界を120%目の当たりにしている感覚だ。
マグロはシイラを捕食して水中に飛び出すと、まるでスローモーションを見ているかのように空中を飛んで再び海に飛び込んでいく。
マグロの目や顔がはっきり認識できるほどに大きく、堂々と海面を割って出現する。
50cmほどあるシイラが小魚のように見えてしまう。船長は言う。冷蔵庫が跳ねてるみたいでしょ?と。
私も興奮を抑えようとするも心臓が破裂しそうになりながらステラ30000という巨大リールにPE12号、ソウルズアシュラのホウキのようなロッドを振ってルアーのキャストを繰り返す。
大きなマグロが跳ねた場所にルアーが落ちた。マグロがドカーンと出る様子を妄想しつつも結局は出なかった。
初めて遭遇したシイラパターン。わずか数分の出来事だったがとてつもない光景だった。
この日海上にいた船は15隻ほど。マグロをキャッチした船はゼロ。
恐らく私の釣り人生でも最後になるかもしれないほどの大チャンスだった。巨大なマグロたちが空中を舞う様子が鮮明に脳裏に焼きついている。
そもそもヒットをさせてもマグロをキャッチできる確率は船長曰く30パーセントからよくて50パーセント。
津軽海峡はよく時化るので出船率も月に半分に満たない。
マグロはとても映える魚だ。写真を見ればインパクトが大きい。たくさん釣れているように感じる。でも現場はこれが現実だ。まず釣れない。マグロの跳ねにも出会えない。
巨大なシイラパターンのマグロたちを見て、この資源を末長く、そして多くの釣り人や地元関係者が楽しめるようにしたいと再度強く感じた。
ルールを整備しながらキャッチアンドリリースなどを含め私たちの子どもや孫の世代まで、私が見ているこの津軽海峡の海と、元気で勇敢なクロマグロたちを残したい。
こんなにも夢と興奮を与えてくれる自然に感謝だ。
クロマグロ遊漁問題に挑戦しながら取り組んでいても心無い批判や上手くいかないこともたくさんある。それでも一歩ずつ前に進みこの資源、文化を残していきたい。
だめだ、この文章を書きながらマグロの跳ねが脳内再生されて悔しくて仕方なくなってきた。絶対また再チャレンジしますw
関係者の皆様、いつもありがとうございます。