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TRAP/トラップ

監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ジョシュ・ハートネット、サレカ・シャマラン、アリエル・ドノヒュー、ヘイリー・ミルズ、アリソン・ピル

あらすじ

クーパー(ジョシュ・ハートネット[と娘のライリーは、ライリーが熱狂的に推しているディーバ、レディ・レイヴンのコンサートに行く。しかしクーパーは異様に多い警察官や、監視カメラに不審を抱く。グッズ売り場の店員と親しくなったクーパーは、実はこのコンサート全体が連続殺人犯を逮捕するための「罠(トラップ)」であることを知る。

感想

予告編でも「シャマランと言えば」などんでん返しを押していたが、この予告編の作り方が上手く、想像していた数段上をいく展開とサスペンスが現出しており、非常に楽しめる映画だった。

予告編でも分かると言えば分かることなのだが、実は主人公クーパーが連続殺人犯であり、閉鎖されたコンサートホールからどのように逃げ出すのか、という部分が前半の山場である。面白いのが父親としてのクーパーはちゃんとライリーを愛しており、レディ・レイヴンのライブはきちんと楽しませてあげようとするところだ。
また、クーパーのその場を切り抜ける演技力によっても緊張感が生まれており、売店の定員に返送して屋上に出て様子を見ようとしたところを捜査員に見つかるところの演技などは、ジョシュ・ハートネット自身の演技力が冴えわたっている。(同時に白々しすぎて笑えるシーンにもなっている)
 
後半、さらに意外な展開を見せるのだが、この映画で唯一超現実的なシーンが、クーパーがたまに見る恐らく厳しくされた母親の幻視だ。(ただしクーパーにとっては「現実」であると思われる。)
観客にもわかるようにギョッとしたタイミングで現れるため、ホラー的な要素にもなっていると同時に、この設定により連続殺人犯であるクーパーに絶妙な深みのようなものが生まれている。また、当然この設定はヒッチコックの『サイコ』を想像させる。
 
レディ・レイヴンがライブ中の演出として「心の中で許せない人を思い浮かべて。その人を許せたらスマホのライトをつけよう」と呼びかけるシーンで、クーパーの周りのファンはライリーを含めてライトをつけている。
ただ、クーパーはライトをつけていない。予告編のサムネイルにも使われているシーンだが、最初普通に観ている時は、単純にこの演出にクーパーが戸惑っているだけのようにも見えたが、映画を見終えてから思い返すとこれはクーパーが母親を許せておらず、だから犯行を繰り返しているのではないかと示唆しているようにも見える。
 
ひとつ気になったところが、クィアな登場人物の描き方だ。レディ・レイヴンのフィーチャリングアーティストのラッパーはおそらくゲイである。裏ではスタッフに厳しく当たり、クーパーには色目を使うシーンはあるが、特に展開に活かされもしないため、単なるコメディリリーフ的な使われ方のわりに面白くもないという状況になっている。
 
とはいえサスペンス描写や展開が最後まで面白く、その割にホラー要素は薄いが、笑いどころも多い、『シックス・センス』に次ぐ最近のシャマラン映画の入門編にもってこいの映画だと思う。

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