イメージトレーニングで筋力・柔軟性アップ?!?!

スポーツのパフォーマンス向上や,新しいスキルの獲得にイメージトレーニングをする人は多いと思います.メンタルトレーニングには,試合の状況などをイメージする”状況のイメージ”と運動をイメージする”運動イメージ”がある.パフォーマンス向上やスキルの獲得には,運動イメージを行う人が多いのではないでしょうか?(反対にプレッシャーや不安を克服するために状況イメージを行うでしょう)

今回は,運動イメージがスキルの向上のみならず,筋力や柔軟性を向上させることを示した研究を紹介します.


運動イメージの分類

研究を紹介する前に,運動イメージの種類について述べたいと思います.

運動イメージには視覚的イメージ筋感覚イメージがあります.

視覚的イメージ

視覚的イメージとは,三人称イメージとも呼ばれ,他者が運動している様を観察していることを脳内でイメージすることである.

筋感覚イメージ

筋感覚イメージは反対に,一人称イメージとも呼ばれ,自分自身が運動していることを脳内でイメージすることである.つまり,自分自身の筋を働かせ,自身の体(筋)が動いていることをイメージすること.

*研究によって定義が異なる場合もある.

*運動スキルの獲得には,筋感覚イメージの方が効果的である.

身体トレーニングとの比較

運動イメージトレーニングは,スキルの獲得やパフォーマンス向上に効果的であるが,実際の身体トレーニングよりも効果は少ない.したがって,運動イメージトレーニングのみを行うのはあまり効率的でないが,身体トレーニングとうまく組み合わせることによって効果的な練習をすることができる.とくに新規の課題(自身ができない運動のイメージトレーニング)は効果がないので,身体トレーニングは必須である.

効果的なイメージトレーニング

イメージトレーニングをする時に,イメージする運動(動作)を観察することによってイメージトレーニングの効果が上がる.

イメージする動作に関連した触覚を得ること.(必要な道具を持ってイメージするなど)

運動イメージの鮮明性の評価方法

脳活動の測定:日常生活では難しいが,多くの研究で用いられている.  アンケート:イメージ力を評価するアンケートに回答する        時間測定:実際の運動と,イメージで行なった運動の時間を測定し,その誤差を評価する.

ここまで,運動イメージを包括的に説明したが,ここから,運動イメージトレーニングが筋力・柔軟性に及ぼす影響について検討した研究を紹介する.

研究紹介

イメージトレーニングが筋力を増加させる


目的;運動イメージトレーニングと身体トレーニングの組み合わせは,身体トレーニングのみよりも筋力を増強させるかを検討すること.

方法;

被験者:スポーツしている学生(平均19.75歳)(日頃筋トレはしていない)

測定項目;最大随意収縮(MVC),80%MVCでの最大反復回数,筋サイズ(腕,胸,もも)

グループ;MI:運動イメージ+身体トレ:CTRL;身体トレのみ

期間;週3回4週間

イメージトレーニング教示;自分自身がトレーニングして言うこと目を閉じて想像してください.頭にカメラがついていて周りのものが動くのことと自身の体の感覚を感じてください.その際,筋肉は動かさないでください.

トレーニング内容

画像1

両群共に同じ身体トレーニング(ベンチプレス&レッグプレス)を行なったが,イメージトレーニング群はセット間にイメージトレーニングを行なった.

結果;

画像2

レッグプレス;両群共にトレーニング介入後に有意な筋力向上を示した.さらに,MI(イメトレ群)はCTRLよりも有意に大きな筋力向上を示した.

ベンチプレスでは,両群共にトレーニングに有意に筋力が向上したが群間差はなかった.

筋サイズの変化はなし


考察;イメージトレーニングは少なくとも,下半身の筋力向上に効果的である.この効果は,筋肥大を介さずに引き起こされる.

したがって,身体トレーニングができない時などにイメージトレーニングは効果的である.

参考文献

Lebon, F, Collet, C, and Guillot, A. Benefits of motor imagery training on muscle strength. J Strength Cond Res 24(6): 1680-1687, 2010

運動イメージが柔軟性を向上させる

目的;ストレッチとイメージトレーニングの組み合わせはストレッチのみよりも柔軟性を向上させるか検討すること

方法

被験者:女性シンクロ水泳選手(15.2 + 1.5歳)

頻度;1回1時間週3回5週間

ストレッチ;フロントスプリット,長座体前屈,サイドスプリット,肩の柔軟性;棒を持て肩回し(exercise #52 in Alter, 2004),足首

群;イメージ群;ストレッチ間にイメージトレーニング.コントロール群;セット間に統制課題

イメージ教示;自身が完璧にストレッチをしているところ想像し感じてください

結果

画像3

フロントスプリット,長座体前屈,足首の柔軟性がイメージ群においてコントロール群よりも有意に向上した.

参考文献

Guillot et al(2010)Does motor imagery enhance stretching and flexibility?,Journal of Sports Sciences 28(3):291-8

https://www.researchgate.net/publication/41030222_Does_motor_imagery_enhance_stretching_and_flexibility

まとめ

運動イメージトレーニングは,運動スキルの獲得のみならず,筋力や柔軟性の向上に効果的な方法である.身体トレーニングが十分にできない時や,リハビリ中,オーバートレーニング防止などにかなり効果的な方法になる.

主に,スポーツ医学や子どものスポーツに関することについて配信します.