だからその企画は通らない
なんで誰もこの企画の良さをわかってくれないんだ!!
ありますよね、うんうん、あるある。これ聞いてOKしない意思決定者マジセンスねーなって思うこともありますよね。
社会人になってからほぼずっとと言っても過言ではないくらい新規サービスや事業が生み出される部署に所属していたので、自然と人の企画を見ることも自分で企画を持ち込むことも両方の機会に恵まれていました。
そうすると不思議なことに開始3分くらいで「あ、これ多分通らないやつだな」ってシックスセンスが語りかけてくるようになるんですよね。
そんな私のシックスセンスをちょっとだけ言語化し、つらい思いをする新規事業マンが少しでも減るように社会貢献していこうと思います。
風が読めていない
おいおい、いきなりプロゴルファーかよってツッコミが聞こえそうですがこれがGOが出ない要因の半分くらいを占めてると思います。
あなたが所属している組織には当然のように戦略や方針と言われる、どっちに行きたいのかという意思が存在します。
例えば居酒屋さんが潤沢な調理設備を利用して、夜だけじゃなくランチ営業という未開拓領域に進出していきたい、みたいに次に何がしたいかのイメージがあります。
上記例みたいに割と明確な場合もあるし、最終的に料亭になりたい!みたいなぼんやりとした場合もあるかもしれませんが、全くなんのイメージもありません!というケースはかなりまれです。
そんな居酒屋さんに対して、「俺まじスニーカー超詳しいっす!卸ルートとかデザイナーとかもう抑えてあるんで年商10億カタいっす!居酒屋居抜きでスニーカーショップにしましょうよ!」って新規事業案出してきたらどう思うでしょうか?
この案がどれだけ完成されていて、居酒屋業よりも儲かるものだったとしても受け入れられないのはイメージがつくはずです。
これはかなり極端なわかり易い例ですが、組織の進みたい風向きを理解した上でその方向への推進力になる企画であることが重要なのです。
もう一つ重要なコツがあるとしたら組織のミッションを大きく解釈しないことです。
組織のミッションや最終ゴールは割とぼんやりしています。それを逆手にいろんなアイデアをぶつけると、将来そうなれるといいね、という感想しかもらえなくなるでしょう。
ただしこれが組織が描く次の3ステップ以内にとても密接に関わるアイデアだったらどうでしょう?
きっとかなり真剣に話を聞いてくれるようになるはずです。
冒頭の「これ聞いてOKしない意思決定者マジセンスねーな」ってパターンはあなたがそう思っているのと同時に「うわぁこいつ今までこっちの話し聞いてなかったのかな」って思われてるいることがほとんどだと思って企画案を練り直したほうが良いでしょう。
深淵を覗き込むときなんちゃらかんちゃらですね。
ちなみに前提書き忘れてましたけど企業内新規事業起案を前提としていますが、CVCからの出資を検討するみたいな場合にも該当はすると思います。
手触り感がない
次の課題は企画案そのもののお話です。
こういうのやりたいんです!って言ってる割に全部デスクトップリサーチを根拠にしてたり、インタビューしました!だからこんな課題があることがわかりました!って言ってるのに聞いてみると友達と居酒屋で盛り上がっただけとか。
壁打ちなら全然OKです!これから練っていくという第一歩の取っ掛かりが上記のようなものなのはむしろどんどんやっていくべきなのですが、気合い入れたプレゼンの根拠が手の届く範囲で十分得られるデータだけで構成されている事が透けて見えると急激に聞き手は冷めていきます。
新規事業の起案承認はその組織が次に向かう方向への投資です。
そのため精緻な設計をした上での十分な量のインタビュー結果から探り出した課題感であったり、その業界の専門家から聞かないとわからないような商習慣や売上構成比等の情報のように地に足がついた手触り感のある情報が含まれている必要があります。
でなければその提案にベットするなんて、とてもじゃないけど怖くて意思決定できません。
デスクトップリサーチをするなと言っているわけではないです。するんだったらその企画が属する業界構造をプロ並みに理解できるほどやる必要があると言っています。
市場規模○○○○億円、対象人口○○○○万人これのX%が取れれば年間XX億円が売上となります!とか言われても、それくらいの情報なら聞き手も5分ググればわかっちゃうので、そのレベルで勝負するのは絶対にやめておきましょう。やる気ねぇなという評価がついてしまったら超もったいないです。
とはいえ自分の企画って完成したときには一部のスキもないものに見えますよね。こんなキラキラした企画案他にないだろう!って思いますよね。
否定する人がいたらそいつのセンスがクソなんだって思いますよね。超わかる。
でもその企画書3年後見るとマジでスパークリングう○こってことも超あるんですよね。
スパークリングうん○生み出さないようにするにはどうするか。
シンプルです。いきなり決戦に赴かないことです。距離が近い上司や先輩、同僚にみてもらってアイデアの壁打ちをしてもらうことです。
そうすることによって、調査の粗さや、やらなければならないことがシャープになっていきます。
最低限あなたの身近な人で一番センスがある人からのツッコミがなくなってから勝負を始めましょう。
信頼残高が溜まってない
あなたが言っても通らないのに、他の人がほとんど同じこと言ったら通った、みたいな経験一度くらいありませんか?
わたしは山ほどあります。
なぜか。これもシンプルにあなたよりその人のほうが信頼されているからです。
その人は風読み能力においてあなたより長けている方ではありませんか?
必要なときに必要なことを必要なだけ提供する人はどんどん組織における信頼残高をためていきます。
だからその人の発言は「きっとやったほうがいいのだろう」というバイアスがかかりやすいのです。
一方で新人や転職したて、異動したての人は残高ゼロの状態からなので、すごくいいこと言ってても任せていいのかな?と不安になることは想像に難くないはずです。
そもそも新人がそこに来た理由の多くは新規事業考えて、というお題ではなく別なものがあるはずなので、まず本業やってくれねーかなと思われるのもとても自然なことです。
かなり身も蓋もない項目ではありますが、前述したとおり新規事業の起案承認はその組織が次に向かう方向への投資です。
投資対象は企画自体はもちろん企画者であるあなた自身でもあるのです。
自分は投資に足る人間であることを示すことはとても大事で、その実績もない状態でエレン・イェーガーのいうように「いいから黙って全部俺に投資しろ」なんて言おうもんなら社会的に蹴っ飛ばされてもやむなしかなと・・。
(出典:進撃の巨人)
まとめ
思いのほか政治的な話でがっかりしたんじゃないでしょうか?新規事業ってもっと自由にいろんなアイデアをぶつけられるものだって思ってました!って言われるかもしれません。
新規事業は自分のアイデアを実現するためのものでもなければ、ただ単純に利益を生み出すためのものでもありません。
組織の次の方向性を探るための投資なのです。
実現したい絵を見定め、緻密な調査を経て、信頼に足る人間が実行することがスタートラインに立つ最低限の要件であり、一つでも欠ければ成功しないことを意思決定者は知っています。
どうすれば欠けることなく用意できるのかは、場数を積んだり場数を踏んだ人たちと一緒に仕事をすることで学んでいけるのです。
やや強引ですがそういう機会うちの部めっちゃありまっせというCMを相変わらずのお約束として末筆に記載させていただきますかしこ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?