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【随想】天の光はすべて友

夜にひとりで散歩をするとき、僕は灯りについて思いを巡らせる

道の並びに等間隔で伸びる街路灯
横断歩道を見下ろす信号機
ガードレールの反射板
小さな店舗の看板たち
帰ってくる住民を迎え入れる団地のエントランス
冗談のような最大光量で夜更けに抵抗するコンビニ
それに比べて少しだけ忖度が見えるドラッグストア
忘れ去られても使命感を胸に令和に残る電話ボックス

どの灯りにも意味はあって、事情があって、ねらいがある
ワケアリなひかりたちはお互いにその由来を明かさないまま、
無秩序に夜の合間を分けいっていく

どの町にも等しく夜はやってくるけれど、
表情はだいぶ違う

神楽坂の夜は、静かだけれど張り詰めておらず
躍動の余韻もある一方で、とても穏やかだった
一定の敷居もあるから特別に融和的でもないのに、
まったくもって排他的ではなかった

冷え始めた11月の空気を頬で感じながら
中華屋を後にして友と労い合いながら駅へ向かう坂道へ歩いていた
あるいは
帳の降りる隠れ家に迎え入れられ炙られた食材に友と高揚していた
あるいは
ベンチにこしかけて、友と共に友を待っていた

東京の夜は星が見えない
そこに寂しさも安らぎも矛盾せず胸のうちに同居している
沖縄で見た夜空は炸裂する煌めきが暗闇の圧力に拮抗するようで
震えるほどの感動と共になぜかとてもこわかった記憶がある

星の光はロマンチックとかそういう範疇におさまるものじゃない
太陽のフレアが放った閃光の面影が、綺麗なだけなはずがない
自ら光を生み出す恒星ならば尚のこと

21個の一等星よりさらに多い24の極等星

まばゆい光を放つ面々をおさめた画像に音を乗せながら

僕は何度も身体中の神経が電送するイメージに見舞われた

21個の一等星よりさらに多い24の極等星

見上げる先に広がるのはこわいものでは全くない
勇気をもらえるエネルギーの結晶たち
天の光はすべて友



-フレドリック・ブラウンに敬意を込めて-
『The Lights in the Sky Are Stars』

文責:俊


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