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Interview15/This is my turn
モニカ(ブラジル出身・語学学校のクラスメイト)
10代後半から20代の生徒が中心の語学学校で、
授業中に誰よりも質問をし、発言をし、
「あなたも言ってみ!」と周りに助け舟まで
出してくれる、素敵な大人の生徒がいました。
私の同級生の1人、モニカさんです。
ブラジルでの仕事を1か月間お休みし、
英語を学ぶためにトロントに来たといいます。
物怖じのない快活な人、という第一印象は、
その後も変わることはありませんでした。
ブラジルだろうと日本だろうと
生まれ育った場所は関係なく、
誰でも年を重ねれば重ねる分だけ、
いろんなやるべきことが
のしかかってくるものだと思います。
そんな中でも、仕事や家庭以外の何かに打ち込んでいる先輩の存在というのはカッコいいし、
希望の光に見えます。
私もモニカさんのように、
やらなきゃいけないことだけに留まらない、
大胆で軽やかな大人になりたいなと思いました。
(取材:2022年3月)
帰国を目前に
モニカ
今日はこの後、友達とバーでお酒を飲んで、バスケの試合を観に行くつもり。
――いいねえトロント生活すごく楽しんでるね。
モニカ
今しかできないからね! 明日が卒業日だし、土曜にはブラジルに帰るから。
――そっか。留学は1か月間でしたっけ。出発の日が近いけど、今の心境はどう?
モニカ
Mixed。うれしい気持ちもあるし、悲しい気持ちもある。まず家族に会えるのはうれしいでしょ。早く息子と孫に会いたい。でも、ここでもっと英語を勉強したいから、その点では寂しいかな。ものすごく寂しいかって言われれば、そうでもない。めいっぱい楽しめたから。
――1か月間どんなことを楽しめた?
モニカ
いろんな国の料理が食べられたり、雪が見られたり。私の住む町では雪は降らないから、雪なんて片手で数えられる程度しか見たことなかったの。本当に美しかった。いろんな国の料理を食べたのも楽しかった。口に合わなかったものもあったけど、試すこと自体が大切だよね。人生は一度きり。
やりたいことを持っておく
――モニカは確か、40代でしたっけ。息子さんは今おいくつなんですか?
モニカ
そうなの。息子は25歳。
――大人になって留学するのって、日本では珍しいんです。仕事や家庭のことがあるから。だからモニカみたいに実際に行動できる大人はすごくカッコいいと思います。
モニカ
ありがとう。分かるよ。仕事や家族を最優先するのは私たちの国でも普通のことだから。でも私の場合は違って、何かやりたいことがあったら、絶対にあきらめないのが信条なの。やりきるまではあきらめたくない。
――かっこいいです。英語の勉強はお仕事のため?
モニカ
いいえ。私はブラジルの銀行で働いてるんだけど、私の業務に英語は必要ない。だからただ純粋に、自分のためだけに勉強してるの。英語を学びたいから。
――シンプルだけど簡単な決断じゃないし、素敵です。何をきっかけに英語の勉強を始めたの?
モニカ
最初のきっかけは音楽。小さい頃から洋楽をよく聴いてたの。エルビスプレスリー、フレディ・マーキュリー、マイケルジャクソン。もうみんな死んじゃったけど、有名だから知ってるよね? ティーンエイジャーの頃には歌詞を理解したい、歌えるようになりたいって思うようになって英語を勉強し始めたの。その後海外旅行に夢中になって、もっと現地の人とコミュニケーションがとれるようになったらいいなと思って、さらに英語へのモチベーションが上がった。英会話スクールに若い頃から通って、勉強を続けたのね。
――小さい頃からずっと続けていることがあるってすごいことですよね。
モニカ
でもね、息子が生まれてから、やっぱりそれが難しくなったの。息子が5歳の時に離婚して、1人で育てることになったからなおさら。長く続けてた英会話スクールは、お金の都合で私は身を引いて、息子に行ってもらうことにした。彼が14歳になった頃、彼はもうある程度英語が話せるようになったのね。それで私は「また英会話スクールに通いたい」って息子に相談して、英語の勉強を再開したの。それでもやっぱり、自分のこと以外も忙しいから、再開しても止まったり、また再開したり……の繰り返し。
――家庭のことも仕事のこともあるから、他のことをやるのってきっと大変ですよね……。
モニカ
そうなの。そうやって細々続けて。今日、息子は25歳で私は一人暮らし。パンデミックが起きて、明日どうなるか分からない状況になったでしょ。それで「今こそちゃんと勉強しなきゃ!」って気持ちになった。そんな時に仲良しの英語の先生から、「モニカ、留学してみたら? 英語環境に身を置くことが一番の上達方法だよ」ってお勧めされた。それで息子に言ったの。「Now is my turn」って。
――おおお。留学の話をしたとき、息子さんはどんな反応でした?
モニカ
何も迷うことなく賛成してくれたよ! 「Mom, go and enjoy it!」って。彼はね、私の息子でありよき理解者、親友でもあるんだよ。ああ思い出したらもっと会いたくなってきた。(少し涙ぐむモニカ)
でももし息子に反対されたとしても、ここに来たよ。だってこれは私の人生だし、なんでも挑戦することの大切さを息子に教えたいから。「Try Every good things」って。さっきも言ったけど、人生はこれ切り。私はカトリックで、生まれ変わることを信じてないの。だから私たちがすべきことは、めいっぱい今を楽しむこと。そうすれば、神様がいい方向に導いてくれるって。
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あとね、やりたいことをずっと胸に持っておくのは大事だと思う。今それができなくても、それを持っておけばいつか、チャンスはどこかでやってくるはず。
周りを気にするのはもったいない
――モニカは前向きで、友達もたくさんいてうらやましいなって思います。明るい性格が素敵ですよね。
モニカ
学校で50人の友達ができたよ。私は若くないけど、シャイじゃない。語学学校に若い人ばかりいても気にしない。私は私のためにここに通ってるんだし、私のために先生がいるんだから、クラスの子たちのレベルは気にせず、分からないことはすぐ聞いて、どんどん発言しようってやっていった。人も好きだから、コミュニケーションをとることも積極的になれて、自然と友達が増えた気がするな。
――入学当初、私が怖気づいていたときに「さっきの考えよかったから、言ってみな!」って助け船出してくれたのが懐かしいです。嬉しかったな。
モニカ
覚えてるよ。ここにきて思ったんだけど、シャイな子がほんとに多くてもったいない! 人生はあなたのための時間なんだから、周りを気にしないでどんどん挑戦していっていいのよ。
みんなとはブラジルに戻っても連絡を取り続けたいな。英語でチャットするのも英語の上達のチャンスだし。だからあなたも連絡頂戴ね。
――ぜひ! 連絡取り合いましょ! 今後もブラジルで英語の勉強を続けるんですか?
モニカ
もちろん! これからもいろんな国に旅行したいし。特にヨーロッパ行きたいなあ。ファッションが大好きだから。現地で友達も作りたいし、違う文化も学びたい。そうなるとやっぱり英語が必要だよ。
そろそろ行かなきゃ。今日は素敵な経験をさせてくれてありがとう。私の世界、少しでも分かってくれたらうれしいな。ハグしてもいい?
――もちろん。ありがとう(ギュー)。楽しい夜を!
(おわり)