最長片道切符【0日目】「ひたすら西へ」
出発地を目指して
いよいよ最長片道切符の出発地、竹松駅に向かう。18きっぷを使って鈍行で向かうのも面白そうだが、ここから数週間に渡って鉄道に乗り続けることになることは目に見えている。それならば、あえて鉄道を一切使わずに九州まで向かってみようと思った。
前々から東京と九州ははかた号という夜行バスによって結ばれていることは知っていたが、今まで乗車するのに丁度よいタイミングが無かった。だから、今回ははかた号に乗車する絶好のタイミングだと思い予約した。
キングオブ夜行バス「はかた号」とは
博多行の便は21時にバスタ新宿を出発し、静岡SA(静岡県)と佐波川SA(山口県)で休憩しつつ、翌朝の10時前に小倉駅に、そして終点の博多バスターミナルには11時過ぎに到着する。バスタ新宿から博多バスターミナルまでの1,144kmを14時間強で走破する夜行高速バスだ。時期によって金額は多少異なるが、おそらくLCCのほうが費用面でも所要時間という点においても一般的には便利だろう。効率を求める人には向かないのではないか。はかた号は移動手段として利用するひとよりも旅の目的の一つとして利用しているひとのほうが多いのではないだろうか。
はかた号は1990年10月12日に天神と新宿駅西口(約1,161.8km)を結ぶ日本最長の走行距離を誇る夜行高速バスとしてデビューした。「ケツの肉がとれる夢」の頃とは違い現在は4列シートは無い。そして、2009年には2階建て車両が、2014年には個室型シートが、2020年には新型車両が導入されている。
最長片道切符の旅自体かなりの費用がかかるものであり、極力支出は抑えたいものである。旅行自体がそもそも浪費のようなものであると思いつつも、お金は使うときは使うときべきであるとも思っている。なので、今回は少し奮発して4席しかないプレミアムシートに乗車することにした。
昼行の高速バスの乗車経験はあるものの、自分にとって初めて夜行バスへの乗車である。多少なりとも14時間への畏れがあるのかもしれない。
はかた号乗車記
バスタ新宿到着
「バスタ新宿」の名はテレビでよく聞いていたものの、いままで来たことがなかった。
3階のタクシー乗り場はあまり人気がなかったが、いざ4階に来るとあまりの人に多さに驚いた。老若男女問わず、さまざまな人が利用しているようだ。
夏休み中ということもあってか、今夜のはかた号は満席になっている。はかた号はD10から出発するらしい。まだまだ時間に余裕が、散策も兼ねて乗り場に向かった。
まだ30分前だというのにはかた号を待っているであろう客もちらほら確認できる。
20:45頃にバスがやってきた。周辺のビルの存在もあいまって、まるで地上にいるかのごとく錯覚してしまう。
いざ乗車
今回は0003号車が来たようだ。てっきり0001号車が来るものだと思っていた。予約時に0003号車が来るのを少し期待したのは確かだが、まさか本当にやって来るとは思いもしなかった。
アイマスクやボディシートも頂けると思っていたため少し残念に思ったが、そんなことはなかった。ボディシートやアイマスク、スリッパは予めポケットに用意してあった。
アメニティー代も運賃に含まれているのだろうが、このようにもらえると嬉しいものだ。車両の古さを感じるのは否めないものの、電源コンセントやWi-Fiの設備は備え付けられているので困ることはない。新型車両のように置くだけで充電できるというような充電器は設置されていなさそうだ。
なお、いくつかの点で新型車両と異なる設備がある。大きな点は「プライベートガラス」の有無であろう。0003号車などの旧型車両の最前列2席にはプライベートガラスが備えられており、前面展望を楽しむことができる。また、視線が気になるときは通路側のコンセント付近のスイッチで曇りガラスに切り替えることができる。
21:00 バスタ新宿出発
バスタを時間通りに出発し、初台南出入口から首都高に入ったようだ。
23:20頃 静岡SA着
静岡SAでは15分程度の休憩があった。到着前には静岡SAを出ると佐波川SAに明朝の08:10着予定という放送もあった。お手洗い、食料調達、散策を15分でこなすのは少し忙しないが、仕方あるまい。
翌01:55頃 鈴鹿PA着
静岡SAを出てから2時間ほどで鈴鹿PAに到着し、乗務員交代をしたようだ。
翌03:45頃 三木SA着
出発からおよそ7時間、距離的にも中間地点といったところだろうか。少し長めの停車だった。乗務員交代だけではなく車両点検もしたのだろうか。
消灯時間中でも気兼ねなく外を楽しむことができるのは個室の強みだろう。
翌06:00頃 福山SA着
すっかり外は明るくなった。もう広島県にいるとは。
翌08:20頃 佐波川SA着
到着の10分ほど前におはよう放送とでもいうのだろうか、佐波川SAでの「洗顔休憩」の放送が入った。いざSAに降り立ってみると建物の小ささに驚く。再びコンビニで物資を調達し、残りの3時間ほどの乗車に備える。
翌09:35頃 関門橋通過
海沿いを走るのかと思いきや、美祢市を通過したようだ。ついに九州上陸だ。新宿を出てから実に半日である。
もうすぐ博多というところで渋滞に巻き込まれる。多少の遅延は想定しているものの、あまりに遅れると予定に狂いが生じてしまうので心配だ。
例えばこの2点間では約5分かかっている。
翌11:46 博多バスターミナル着
天神を経由しつつ、予定より30分ほど遅れて終点の博多バスターミナルに到着した。設備の豪華さゆえか15時間弱の乗車でも意外とキツさは感じなかった。ビジネスシートだと感想は違うのかもしれない。さすがに快眠とは言わないが、しっかりと眠れたように感じた。機会があれば再び乗車したい。
次回:最長片道切符【1日目】
「ついに始まる」
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