アフリカの”ご飯”ってどんなの? | アフリカ全土の主食分布
日本人にとって「米」とはどんな存在だろうか。
唐揚げを頬張る傍ら米がないときの空虚感、夜食を食べようと炊飯器も冷凍庫にもストックが無かったときの喪失感、長い外国生活を終えたあとに空港内の牛丼屋に駆け込みたくなる気持ちなんかが米の存在感を表しているように思う。
日本人の精神と主食は密接に関わり合っているのだ。
日本から遠い遠い異国の地、アフリカでも同様の気持ちを持っているに違いない。
彼らは一体なにを主食としているのだろう。
そこにはアフリカ大陸という厳しい環境に適応したバリエーション豊かな食文化が眠っていた。
アフリカ全土の主食分布
序章
コトの始まりはアフリカ料理店に訪れた際、メニュー説明欄にトウモロシ粉を使ったウガリ、キャッサバを使ったクワンガだとあった。以前、ナイジェリア料理を食べた際に「ガリ made from キャッサバ」とナイジェリア人から教えて頂いたので名前の似たウガリとガリであっても素材は異なることを知る。
つまり、名称から辿るとウガリ≒ガリであり、素材から辿るとガリ=クワンガである。
すっかり混乱した私はこれらをまとめるついでに、アフリカ全土の主食について調べることにした。
アフリカ全土の主食分布
アフリカ全土の主食分布をマップに書いてみた。
欧州が勝手に切り分けした国境で分布を書き分けるには不正確でナンセンスだが、ざっくりした分布だと考えていただきたい。
また、今回は芋やキャッサバ由来の主食を念頭に置くため、南アフリカなどのトウモロコシ由来と簡単に書くこととなった。
早速、各主食について見ていこう。
各主食の詳細
クスクス
このクスクスはマグリブ地方(青色)と呼ばれるエリアで主に食べられているデュラム小麦由来の食べ物だ。サハラ砂漠以北に位置づけされ、比較的ヨーロッパとのつながりも深い国々が主食としている。
引用文にもあるように常食とされ、ツブツブの小麦を米のようにして食べる。
フフ
フフはヤム芋やキャッサバなどを茹でて、臼で挽いて作られる。地域によってはトウモロコシや雑穀の粉を熱湯で練ることで「餅」のような状態で食べられる。現代では米やジャガイモで作られることもあるようなので、この「餅の状態」をフフと呼ぶのだろう。
サハラ、サハラ以南に位置づけされ、ナイジェリアやガーナなどアフリカ経済の中心地で多く食べられていることもあり、アフリカを代表するポピュラーな食べ物である。
ここでフフ(クスクス)としたカメルーンあたりの地域では、フフのことをクスクスと呼ぶ。マグリブ地域のクスクスと名前が同じだが、モノは異なる。広い地域で食べられているので他にも名称があるが代表してフフとする。
私達がお餅をアレンジするようにフフも様々なアレンジがあるようだ。タロイモやプランテン(食用バナナ)、トウモロコシ、ガリを混ぜられることもある。
ガリが登場してきたわけだが、一旦、紹介はあとにしたい。
ウガリ
ウガリはフフに似た料理だ。フフと異なるのは素材に雑穀やコーンミール(トウモロコシ)が使われていることだ。他にキャッサバを混ぜて作られる。
コンゴ以南、南アフリカで食べられる。名称は似ているがガリとは異なる。
地域によってンシマ、ポショなど呼び方が異なり、硬さや弾力も異なる。また、それによるのか直接食べる、スープにつけて食べるなど食べ方のスタイルも変わる。
クワンガ
アフリカ料理店で私を大変混乱させたクワンガだ。コンゴ民主共和国で食べられるキャッサバの粉を練った食べ物だ。携帯しやすいようにバナナの皮で巻いて食べられる。
コンゴ民主共和国では主食がウガリで、携帯食やおやつとしての位置づけがウガンダのようだ。日本でいうと「おにぎり」として見るのが良いのかもしれない。
詳細については英語の説明ページも存在せず、実際に訪れた人の記録を辿るしかなく、情報が少ない。
ガリ
ナイジェリア料理店に訪れたときに登場したガリである。キャッサバを潰して水分を抜きながら発酵させて作る食べ物だ。発酵させることもあり、厳しい環境でも日持ちする保存食となる。
キャッサバの特徴か、発酵の特徴か分からないが、酸味が強い食べものだ。クワンガを食べたときにも酸味を感じたため作り方は近いものだと予想できる。
まとめ
ガリはキャッサバ由来であるためフフ、ウガリとの中間地点とした。実際、ガリとクワンガは似た味をしているため分類としては間違ってはないだろう。
アフリカ全土からすると極一部しか書き加えられていない上、専門家から見ると自由研究程度の内容であるが、これまで登場した国々で主食とされている素材とケッペンの気候区分は当てはまるように予想する。
そのため、本章では細かな国毎の名称、素材について追うことはせず、次章で気候区分からなんとなく主食を言い当ててみよう。
気候区分と主食の関係
高校で地理を選択していない人にとったら”なんやそれは”といった謎マップだろう。
ケッペンの気候区分とは、ケッペンさんが世界中の共通点がたくさん見られる気候毎に区分けし、それぞれに名前をつけた分布地図のことである。気候が分かれば、気候に関連する育つ植物、浸透しやすい宗教、古来の人の貿易などの断片が見えてくるのである。
早速、今回作製した主食マップと比べてみる。
先にも述べたように、私が作製した主食分布は国境で分けたざっくりしたものである。
ぱっと見ていただけるだけで気候区分と主食の分類は似ていることがわかるだろう。思えば当然の話だが、気候にあった身近にある植物が主食になるのだ。
砂漠気候
ケッペンの気候区分が示す赤色、砂漠気候のエリアについて考える。
フフ(黄緑)とクスクス(青)の境界帯にはサハラ砂漠が東西に伸びており、砂漠という言葉が示すように多くの水を必要とするため、植物を育てる環境に向いていない。
この土地では多くの割合をクスクス、つまり硬質小麦が占めている。硬質小麦は比較的乾燥した土地を好み、気候と主食のつながりが見える。
サバンナ気候
ケッペンの気候区分の水色、サバンナ気候はどうだろうか。
アフリカはサハラ砂漠が大きいせいで砂漠ばかりの印象が強いが、そうでもない。サバンナ気候は乾季と雨季が明確に分かれたイネ科の植物が生える比較的肥沃な赤色土の土地で広がりやすい。
フフやウガリが主食とされているエリアはサバンナ気候と被る。
先程とは違った目線から見てみよう。キャッサバやヤムイモはどういったところでできるのだろうか。
気温が高く、比較的肥沃な土地でありながら、水はけが良い土地に向いており、酸性が強い赤色土の土地でも育つ事を予想することができる。
実際そのとおりの条件で育ち易いのだが、これらは痩せた土地でも育ち長期間保存できることも、この地で主食の原料として根ざせた理由があるだろう。
さらに踏み込んで考えてみよう。
キャッサバやヤムイモなど、イモ類は土地の肥沃度に対して栄養価が高く、たくさんできる。つまり、多くの人口の腹を満たすことができる。
このあたりの人口が多い理由にも繋がらないだろうか。食の心配がなくなれば、経済の発展に力を入れることができる。経済の発展と気候に深い相関性があるのだ。もちろん他の鉱物資源などにも深い関わりがあるため一概には言えない。
さらにイモ類は土からの養分を沢山吸収するため、痩せた土地が更に痩せてしまう。一番手っ取り早く土に養分を与える方法は”焼畑農業”だ。このあたりは森林がどんどんなくなって行きやすいことも予想できる。
温帯湿潤気候
クローズアップしておきたいのが、米を食べるマダガスカルだ。フフやウガリの話からはそれてしまうが、ついでだ。
温帯湿潤気候とは四季が明瞭で年間通して降水量の高い気候区分だ。日本の半分くらいがこの気候区分に属する。日本で米が育てやすいのと同様にこの気候区分では米の育成に向いている。
マダガスカルはこの温帯湿潤気候だけでなく、様々な気候区分が含まれているが、「米」を主食とできる環境にあることは間違いないだろう。
地球の反対の遠い島国であっても、似たようなところに少し親近感を覚える
後述
もっと細かく紹介したいが、あまりにも長くなるため、ここまでとする。
雑穀を主食とする地域は植物を育てるのに向いていない気候区分に属しているなど、この記事を読んでくださっている読者の方々それぞれがなにかしらの発見があると思う。
そんな発見を是非教えてほしい。
連絡をお待ちしております。