アルヘシラス〜海を越えればそこはモロッコ〜
マドリードから電車でスペインの南端、アルヘシラスに向かう。
そこまでいけば、旅の終着点のサハラ砂漠も近い。
準備と振り返り
マドリードのアトーチャ駅から電車でアルヘシラスを目指す。
電車の時間は午後3時ごろ。
午前中は洗濯や荷物のパッキング、今後の計画を考えるなど準備に費やした。
日本を出てから2ヶ月ほど経つ。
改めてバックパックを眺め、少し感慨に浸る。
あらかた準備も済んだので、ホステル近くのカフェで一休み。
店員のお姉さんに拙いスペイン語で注文を伝える。
注文したドーナツとオレンジジュースを受け取り、カウンターにあったナプキンを取ろうと右手を伸ばす。
トレイを片手で持っていたので、知らないうちに傾いて飲み物がこぼれていた。
一部始終を見ていたお姉さんが、あらまあ大変、みたいな表情をしている。
ちょっと憂鬱な気持ちでテーブルにつき、こぼれたオレンジジュースの香りがするチョコドーナツを頬張る。
思ったより悪くない。
そんなことを考えていると先ほどのお姉さんがこちらに歩いてきた。
お姉さんは笑顔で何か言うと、さっきこぼして減ってしまったオレンジジュースを注ぎ足してくれた。
ああ、少しくらいドーナツがオレンジの香りでもいいじゃないか。
マドリードとトレドでは、こういうエピソードが多くてよかった。
マドリード to アルヘシラス
午後3時ごろ、アトーチャ駅で電車に乗り込む。
マドリードからアルヘシラスは、およそ5時間かかる。
日本の新幹線だと、私の地元・岩手から京都までくらいの所要時間だろう。
長時間電車に乗るのは、ギリシャのメテオラ以来だ。
マルセイユからミラノまで一日中電車で移動したことを考えれば、このくらいは短く感じてしまう。
車内には外気温の表示があり、なんとなくチェックしていた。
本当に何気なしに見ていたのだが、 南にいくにつれてどんどん気温が上昇していく。
ここはまだスペイン、モロッコに入る前に気が滅入る。
現代の旅行はスマホ
自分もアナログだけで旅しているわけではないが、ことあるごとに現代の旅はスマホありきだな、と感じてしまう。
電車の向かい側の席に、綺麗なブロンドヘアーのおばあちゃん軍団がいて、スマホを見ながら旅の予定を確認していた。
画面をポチポチいじりつつ、あーだこーだ言って楽しそう。
現代では、おばあちゃんたちもスマホを使いこなして旅をするんだ、と感心した。
直行便では?
マドリードからアルヘシラス行きの電車は直行便だったはず。
ユーレイルパスやその他の表示でも乗り換えの記載はなかった。
しかし、突如マラガに停車したきり、電車が動かない。
とりあえず、周りの人に合わせて電車を降り、駅員に促されるまま歩いて行くとなぜか駅の外へ。
連れて行かれた先には一台のバスが停車していた。
乗り換えは乗り換えでもバスに乗り換えるらしい。
どうしてこうなったのか、これが通常の手順なのかもわからない。
でも、なんだか面白くなってきたので言われるがままバスに乗り込んだ。
結果的にちゃんと目的地に着いたので一安心。
さよならスペイン
アルヘシラスには時間通りに到着した。
停車位置の目の前には予約したホテルがあり、すぐさまチェックインできた。
予約した一人部屋には大きな浴槽が。
ここにきて嬉しいサプライズ。
ホステルばかりに泊まってきたので、ゆっくりと湯船に浸かるのはいつぶりだろう。
実際、飛び跳ねそうなくらい喜んだ。
もう明日にはフェリーでアフリカ・モロッコに渡る。
スペインも終わり、さらばヨーロッパ。
あとがき
最初にサハラ砂漠に行きたいと考えた時はモロッコだけ行こうかと思っていた。
しかし、せっかくだからヨーロッパを巡り、フェリーでスペインからモロッコに渡ることを決めた。
この旅を考える一つのきっかけになった村上由佳さんの小説「遥かなる水の音」。
その中でもフェリーを使っていたし、バックパッカーとしてアルヘシラスからジブラルタル海峡を越えたいという気持ちがあったかもしれない。
ここまで来ると、ひしひしと旅の終わりを感じていた。
旅の疲れもあって終わりへの安堵と、夢から覚めてしまうような寂しさが共存していた。
旅の終着点、サハラ砂漠に向かってモロッコを歩き出す。
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