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趣味の宗教|聖典をよむ(1)よく分かんね

自らの信仰ではなく聖書やお経を読む人がいます。悩みを解消たかったり、文学として味わってみたり、何となく知っておきたかったり、理由はさまざまです。

ただ、「読んでみたらよく分からんかった」という声をよく聞きます。聖典を読みたい、読んだけど挫折した方に、はじめの一歩どころか靴を履くところのお話をしてみます。

なお、ここで「聖典」は、ある宗教で大事にされている書物という意味です。聖書、お経、コーランをとりあげます。

なぜ挫折するか?聖典のイメージをみてみよう

普通に本を読むとき、小説なのか専門書か辞書なのかも分からず読むことはないでしょう。その上で、作品が書かれた背景、筆者の経歴などがあると更に楽しめます。

聖典で考えると、「イスラム教の本」だとか、「アダムとイブの話がある」とかは、後者の追加情報です。そして挫折する人は多くの場合、そもそも小説か辞書か、のイメージができていないんじゃないでしょうか。今回はそこを見てみましょう。

ということで、それぞれのイメージはこちら!
聖書=角川文庫
お経=スティーブ・ジョブズ講演集
コーラン=家電の取扱説明書

聖書=角川文庫

まず聖書。一冊の本として売ってますが、一冊ではなく、複数の本が合わさった作りになっています。
「それなら知ってるよ、旧約と新約でしょ。だから2冊だ!」
そんな少しではありません。手元の聖書を開いて数えてみました。81冊です。

聖書は、筆者も時代も内容も、元は言語さえ異なった本を集めているのです。見た目は一冊ですが、ある出版社の文庫本詰め合わせくらいに幅が広いものだと考えておきましょう。逆に、同じ物語を複数の人が書いていることもあります。

お経=スティーブ・ジョブズ講演集

つづいて、お経。みんなだいすき『般若心経』や『法華経』『阿弥陀経』などなど、多くは「〇〇経」といわれるものです。『歎異抄』とかもあるけどね。

これは、一人の人物が語った内容を、一講演一冊まとめたもの。それに加えて、講演の難しい部分に注釈をつけた本や、講演を比較した本、講演やそれに対する注釈を更に評論した本、今生きていればこう言ったんじゃないか、などなど。一人の天才的な語りをもとにどんどん展開していく様は、たとえればジョブズやオバマやらの講演集と関連本に近いイメージです。

中心はひとりの人物の語りなんですが、なにせ講演の数は八万四千とも言われるうえに関連書も数が膨大過ぎて、一冊にはなりません。いちばん普及しているもので100巻セット!定価200万!ぐぇ。

いちおう注意ですが、「経」の範疇は文脈により様々です。講演のみ指したり関連本まで指したり。広く指すときには大蔵経(だいぞうきょう)、三蔵とも呼ばれます。


コーラン=家電の取扱説明書

もっというと、説明書のはじめと終わり、注意と警告と「故障かなと思ったら」の指示が並ぶところです。

「〇〇してください」あるいは「しないでください。」ということと仕様が説明されています。ひとつひとつの内容は分かる(こともある)んですが、順番や分量はぐちゃぐちゃ。「水をかけないで」の次に「本製品は産業規格XXに対応し…」、「各部の名称」が続いたりするのです。本当は緻密に考えられているかもしれませんが、素人には分かりません。

だから、通読してもストーリーは見えてこないし、「その製品使ったことないからよくわからんなぁ」となることも多いでしょう。

バラバラな印象はありますが、形式としては、ひとりの語りをまとめたものです。そういう意味では一貫したシンプルな形式で、お経と似たようなものだと言えるでしょう。お経と違って、注釈や関連本は含まれません。もちろん関連本自体はいっぱいあるんですが、『コーラン』としてまとめることはないということです。


いざ聖典をひらこう

これで、まず本をペラペラ覗いていてみる準備ができました。本屋で手に取る段階。「こんな語り口かー」「アンソロジーか。知ってる著者いるかなー」「あとがきだけ読んでみるか」の段階です。

それぞれの内容は、また次回以降触れていく予定です。
いずれも書店に売ってますし、オンラインで読めるものも多いので、パラパラしてみるのもいいかもしれませんね。

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