理学療法士の就職図鑑
仕事の概要に関するインタビュー
Q:インタビュアー【バッシー 就職図鑑】
A:インタビュイー【Kさん、勤務理学療法士】
Q「本日は理学療法士のKさんにお越しいただきました。理学療法士という仕事についてや就職活動の流れについてインタビューさせていただきます。本日はよろしくお願いします.」
A「よろしくお願いします.」
Q「まず,どんな仕事をしているのですか?」
A「理学療法士というリハビリテーションに携わる仕事です.どの病院にもリハビリテーション科という部署があり,そこに属します.医師や看護師,薬剤師と同様に,厚生労働省に認められている国家資格のひとつです.病院で勤務している理学療法士が大多数を占めていますが,中にはトレーナーとしてスポーツチームに帯同したり,独立して保険診療外で活躍している方もいます.理学療法士の養成校である専門学校や大学などで教員をするというのも,働き方のひとつです.」
Q「1日の流れを教えてください」
A「基本的に業務時間のほとんどを患者さんのリハビリに使っています.リハビリ以外には,カルテ入力や書類作成も必要です.また,カンファレンスといって医師や看護師,薬剤師,心理士などと情報共有する時間もあり患者さんの今後の治療方針を確認します.」
Q「国家資格ですと,やはり初任給やボーナスなど給料はいいんでしょうか?」
A「給料は施設によって多少異なるのが実際です.初任給ですと18万〜23万といったとことが相場でしょうか.給料の伸び代も全く異なります.1年間で1000円しか昇給しない施設もあれば,県立病院や市立病院などは30〜40歳代からいっきに増えていき,50歳代で50万程度の給料に加えて,ボーナスは100万近いなんてこともあります.役職手当も3万程度付くと思います.」
Q「施設間での違いが大きいんですね.給料以外に福利厚生も職場選びで大切な点ですが,いかがでしょうか?」
A「やはり福利厚生も,大学病院や赤十字病院,県立病院は特に優遇されているのではないでしょうか.賃貸住宅に住んでいる場合は,家賃を負担してくれたり,怪我や入院した場合の治療費を全額負担してくれたり,学会や研修会の参加費も負担してくれます.結婚祝いや出産祝いはどの施設でも頂けると思います.有給取得に関しても,施設間で異なります.毎月させてくれる施設や年に数回なんてこともありますが,現在は年5日は有給を取得することが定められておりますので,もし5日も有給をくれないという施設はブラック企業と言えるでしょうね.育休や産休なんかは,職場の雰囲気次第でしょうね.これは,どの企業や職種も同じですが...」
Q「福利厚生も給料と同じて働いやすさに大きく影響しますから,転職や就職する場合は確認すべき項目ですね.働いていて楽しいこと,きついこと,理学療法士をしていてのメリット・デメリットはありますか?」
A「楽しいことは,やはり患者さんや対象者の方が元気になっていく姿を間近でみられることです.これは,どの理学療法士もきっと同じです.他には,医療の知識を勉強することは非常に楽しいですし,勉強しても勉強しても知らないことがあるので,それもまた勉強意欲をそそられます.きついことは,理学療法士は予想以上に重労働です.なんせ,自分一人で歩けない人や立ち上がれない人の介助や,トイレや入浴の介助など,本当に体のあちこちが筋肉痛なんてことは珍しくありません.それが嫌なら,勉強を頑張って養成校の教員になるか,大学病院などで研究者の道を探すしかありません.また,患者さんは元気になっていくばかりでなく,時には亡くなることもあり,悲しい思いをすることは避けられません.理学療法士として働くメリットは,医療の知識に詳しくなることです.家族が入院した時や体調が優れない時は少しばかり力に慣れるかもしれません.理学療法士の専門とする分野は幅広く,骨折や転倒,循環器疾患,呼吸器疾患,栄養管理などしっかり勉強すれば幅広い分野の知識が身につきます.それを,仕事以外でも活かせる時がたびたびあります.また,国家資格ですから転職は意外と簡単です.現在の職場が気に入らなくても,超高齢社会の今,理学療法士を必要としている職場は多いです.デメリットは,あまり思い浮かびませんが,強いていうのならば,自己研鑽が必須ということでしょうか.医学は日進月歩ですから,勉強していないと現場で命を奪いかねません.ですので,コツコツ努力できるような方は理学療法士に向いていますよ.」
Q「子育てなどで忙しくて自己研鑽できない人も多いのではないでしょうか?」
A「もちろん,そのような方は少なくありません.ですから,職場で定期的に研修会を開催している施設もあります.自己研鑽することを否定的に見ている人たちもいるのも実際です.例えば,「そんなに勉強しても給料上がらないんだから...」なんて思われる施設も多いと思いますよ,ですから,就職の際は必ず見学に行って職場の雰囲気を確認しましょう.みんなが同じ方向を向いて努力しているか,というのは就職の際に確認すべきポイントです.」
Q「最近はライフワークバランスなんて事が頻繁に言われますが,趣味に使う時間は取れるのでしょうか」
A「正直,それは人それぞれです.理学療法士の資格取得後も,さらなる専門分野の資格はたくさんあり,それらの資格取得に向けて努力しているような方もいます.そのような方は仕事=趣味みたいな感覚だと思います.どの仕事でもありがちですよね.しかし,理学療法士は医師と違って休日に呼び出されたりすることは,ほとんどありませんし,週に2回程度の休みがありますから,家族と過ごす時間や趣味に充てる時間は十分に取れると思います.ただし,専門職としての研鑽は怠らず,給料の一部は教科書代や講習会への参加費に充てるのが望ましいのではないでしょうか.理学療法士の力を必要としている患者さんがいることを忘れてはなりません.」
Q「やはり,医療系のお仕事は就職しても生涯勉強なんですね...大変そうですが,誰かに頼られる仕事であることは間違いないですし,やりがいはありそうですね.
ここからはPさん自身の就職活動の経験等について伺っていきます. 理学療法士になるために学生時代にするべきことや必要なことを教えてください」
A「やはり,理学療法士は国家資格ですから,国家試験合格は避けて通れません.また,普通の大学ではなく,理学療法士を育成している専門の科をもつ大学および専門学校への入学が必要です.そのような学校へ入学後,3年〜4年の教育課程を経て学校を卒業と同時に理学療法士国家試験の受験資格を得るわけです.ここで勘違いしてはいけない事が,学校卒業=理学療法士免許取得ではありません.あくまで,学校卒業=国家試験の受験資格を取得できるという事です.また,在学中は授業だけでなく,学生にとって避けて通れない大きな課題が臨床実習です.実習は,1年生の時は1週間程度の病院見学で済みますが,2年生以降は患者さんに理学療法を提供したり,検査を行なったり,一気にハードルが上がり,求められるスキルが高くなります.また,学校での座学だけで乗り切れるほど実習は甘くありません.対象者とのコミュニケーションスキルやとっさの判断力が求められます.実習が苦で学校を辞めてしまう学生も珍しくありません.数年前,実習中に自殺した理学療法学科の学生がニュースになったのを覚えていますか?」
Q「はい.実習ってやっぱり辛くてしんどいんでしょうか?」
A「そのニュース以降,厚生労働省の指示で実習の緩和がなされました.一昔前のようにレポート提出は禁止,必ず定時で実習を終了するなど,学生にとって取組みやすい環境になりました.」
Q「実習がクリアしやすくなったおかげで,理学療法士になれる学生が増えそうですね」
A「そうなんですが,理学療法士の質が低下するのではないかと,懸念されているのも実際です.実は,一部では,理学療法士の数が増えすぎているといことも心配されています.ですから,よりスキルの高い,意欲のある理学療法士のみが生き残り,そうでない理学療法士は職を失う,または正当に扱われない可能性が考えられます.」
Q「それなら,今の学生は,学生の時からしっかり勉強してスキルを身につける必要がありますね」
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