arica01-02|「好きの在処」を見つける|言語化した「好き」を集める&分解することで見えるもの。
前回のコラムでは自分の中にあるぼんやりとした「好き」という感覚を、「すがた」と「きもち」という2つの要素に分けて言語化してみました。
それを踏まえて今回はさらに自分の「好き」を深堀りしてみます。
01|具体的な「すがた」を集めるとあなたの世界観が見えてくる
なぜ「すがた」として言語化した具体的な好きの要素を「集める」必要があるかというと、それはいまのあなた自身が持っている【 世界観 】を目に見える形に集約してみるためです。
「コラージュ」ということばを聞いたことがある方も多いと思います。具体的なやり方としては言語化した「好き」の要素を持つ画像を集めて1枚の画像にします。
簡単に写真をコラージュできるアプリもいろいろあるので、活用してみると1枚の画像にまとめやすいと思います!
写真は5-7枚程度。こうして写真を集めてみると、1枚1枚の写真では見えてこなかった「集合体」としての世界観が見えてきます。
「何の写真を集めたらいいのかわからない」という方には下記のやり方がおすすめです。
「3つ」の要素を意識して集めてみる
漫然と「好きなものの写真を集めてみよう」と思ってもいきなりは難しい方が多いと思います。そこでやってみてほしいのが、要素を3つに分けてそれぞれの写真を集めるというやり方です。
■「量」や「距離」などの違いなら…
遠|近|接
→遠くの風景|近くの人物写真|接写の料理写真
多|少|単
→多くの商品が並ぶ棚|少ない5個以内のコスメ|単一の1輪挿しの花瓶
■「暮らし」などを構成する要素なら…
衣|食|住
→衣服やクッションカバー|料理やスイーツの写真|インテリアの写真
人|事|物
→憧れる人|趣味や習い事など|食べ物や服や乗り物など
方向がうまく定まらないときや要素が多く絞り込みが難しい場面で、クリエイティブのお仕事の中でも一度、3つ程度の要素に分けて思考することがよくあります。
1つだと比較対象がないですし、2つだと対立構造になってしまう。3つの要素が集まるとそれぞれの要素を引き立て合うようにバランスよく全体を見渡せるようになります。
「おしゃれかどうか」より「自分に嘘がないか」が大切
集める写真はもちろん自分が撮ったものだけでなく、検索した画像なども入れ込んでみてください。そのときに無理に「おしゃれそう」なものを詰め込もうとしなくて大丈夫です。
というよりむしろ、「おしゃれかどうか」は意識的に一旦置いておくことが重要です。
ここで見えてくるのは、現時点のあなたの中にある「好き」を集めた世界観であり、「おしゃれな誰か」になろうと無理をしていない、いまのあなたを写すことが大切だからです。
そうして、その「自分に嘘がない」状態の「好き」をたくさん集めてみると、それぞれは「服の写真」「料理の写真」と具体的だったものが、ぼんやりと浮かび上がるように、個々の状態では見えてこなかった世界が見えてくる。
これが「抽象化」というやつのひとつの方法です。抽象化/具体化というと小難しく感じてしまいますが、写真を集めるだけでもう立派に抽象化できてしまっているわけです。
このコラージュのようなやり方も、「かわいい」という言葉だけでは人によってイメージに差が出てしまうようなデザインの仕事の場面でよく使いますが、対話する相手が自分自身のときでさえ、こうして見える形にしないとわからないものなのです。
自分の好きな世界観を一度全力で肯定する
コラージュ画像として写真を集めてみる。そうして出来上がったものは現時点でしっくりきていなくても、なんだか好い感じに見えなかったとしても、今まであなたが自分自身を良い状態に導こうとして選んできた結果であり、どんなかたちであれ尊いものです。
いまあなたは、自分のもの選びのセンスや価値観が信じきれなくてこの記事を読んでくれているかもしれませんが、こちらのコラムにも書いた通り、「現状を卑下した状態」を前提にスタートしてしまうといずれ「自分にムチ打たないと成長できない / 変われない」というようなスパルタ設定を選ぶことになります。
いまの世界観を活かすにせよ、現状を踏まえて大きく変化するにせよ、「あー、自分は自分を好い感じにしてあげるために頑張ってきたんだな…えらい…えらすぎるかもしれないな…」
と、まずは一度自分のこれまでの選択を認めてあげること。それが今後の選択の質をよくしていくための第一歩です。
このコラージュをつくった意味は「このままではダサいままだ!」「統一感もなにもないじゃないか!」と卑下するためでも、逆に「この世界観を崩してはいけない!」と選択を縛るためでもありません。
次の選択をしていくためのひとつの基準にするためのものです。
楽な気持ちでやってみて1年後、2年後と定期的につくってみると自分の変化が目に見えてわかっておもしろいですよ。
02|抽象的な「きもち」の奥にある本質的な望みを知る
もう一方でやることは「きもち」で言い表した「好き」の要素をもう1度捉え直すことで「本質的なの望み」を理解し、それを叶えられそうなものや方法を具体化してみることです。
「もの」はわたしたちに何を気づかせてくれる?
もの選びについて書いているのに矛盾するようですが、本当に重要なのは「もの」それ自体ではありません。
わたしたちが何かを手にしたいと思ったり、何かを好きだと感じたりするのはそのものや体験を通して自分の奥底にある「本質的な望み」を映し出すためです。
誤解を恐れずに言ってしまえばそこに伴うもの選びの悩みのひとつひとつは「ダミー」だったりします。
こう言ってしまうとそもそも自分は何が好きかなんて考えるのは意味のないことのように思えるかもしれませんがそうではないのです。
自分の感性が「もの選び」という行為を通して自分自身に叶えさせようとしていることは何か? をよく分解して観察してみよう。
ということなのです。
例えば、
「料理が美味しそうに見えるお皿」
それは突き詰めると自分にとって何を叶えてくれるものなのか?
料理を美味しそうに見せたいのはなぜ?
そのお皿はどんな気持ちにしてくれる?
そのお皿はどんな自分になることを実現してくれる?
その奥底にあるのは、
「家族で囲む食卓をより豊かで楽しい時間にしたい」だったり
「仕事をしているときとは違う本来の自分を表現していきたい」または
「忙しい日々の中で食事の間だけでも自分らしさに立ち返るものがほしい」
という願いかもしれません。
そんな願いを叶えようと思ったら、必ずしも素敵なお皿だけが選択肢ではないかもしれないし、そもそもお皿でなくても良いかもしれない。
「その願いを叶えるためには他にも色々な選択肢がある」と気づけたら、自分ではないおしゃれな誰かになるためにもの選びに迷い、焦っていたときとはまったく違うものが選択肢に入ってきそうじゃないですか?
それくらい「ものを選ぶ」という行為には現状の自分の感性や願いなどさまざまな要素が反映されているのです。
それなのに、わたしたちはどうしても「もの」だけに囚われてしまうのです。(そんなところも人間らしくて可愛くて最高! なのですが!)
このあたりは自分1人でこっそりやってもいいですが、ワークショップなどで色々な人の「好き」を見たりしながらやってみるとおもしろいし、他の人が思いがけない自分の一面を見つけてくれることもあります。
aricaでは先ほどお話しした「3つ」の法則に従って3人以上のワークショップとして開催していますので、ご興味のある方はぜひ参加してみてください。
(ワークショップの開催はLINEのみで配信予定です!)
次回は、今回説明した「好き」の言語化のやり方をベースに、うまく言語化できない場合のコツをもう少し補足していきたいと思います。