財務諸表から読み解く企業分析 マルハニチロ
マルハニチロは国内で水産業最大手の企業です。
設立は1943年で約80年続く歴史ある企業です。
かつ日本の大切な衣食住のうち、食を提供している重要な企業でもあります。
事業は大きく分けて4事業で
・水産資源事業
・加工食品事業
・食材流通事業
・物流事業
このうち水産資源事業の2024年3月期販売実績は、全売上高に対し57.4%と半分以上を占めています。
ここで話が少し逸れますが、日本のカロリーベース食料自給率は2023年で38%と食料の半分すら自国で賄えない国です。
このような状況ですから、マルハニチロにはぜひ日本の食を守るために頑張っていただきたい企業です。
それでは財務諸表を確認していきます。
まずは貸借対照表から見ていきます。
貸借対照表は財務体質を表す指標です。
貸借対照表の内訳ですが、
●資産:671,801(百万円)
・流動資産:404,985(百万円)
・固定資産:266,816(百万円)
●負債:426,321(百万円)
・流動負債:272,969(百万円)
・固定負債:153,352(百万円)
●純資産:245,480(百万円)
貸借対照表を確認すると、流動資産>流動負債でかつほぼ流動資産=負債なので健全な財務体質だと思います。
意外だったのが工場や船舶といった固定資産のほうがボリュームがあると思っていたのですが、思いのほか流動資産のほうがボリュームが多かった点です。
続いて損益計算書を確認してみます。
損益計算書は営業成績を表す指標です。
売上高→経常利益→当期純利益→自己資本利益率(ROE)の順に見てみます。
売上高を見ると成長を感じることができず、ほぼ横ばいといえます。
ここ5年に関して2021年を底に2023年まで右肩上がりで経常利益(本業以外にも損益を加えた利益)は増加していましたが、2024年でダウンしてしまいました。
当期純利益は経常利益のダウンをカバーし2024年も増加させました。
自己資本利益率は、他人資本に頼らず自己資本を活用してどれだけ効率的に利益を生み出したかを表す指標です。
一般的に8~10%だと優良企業とされますが、ここ5年間は2021年に大幅ダウンした以外は10%前後をキープしており、非常に生産性高く利益を生み出していると思います。
最後にキャッシュフロー計算書を確認してみます。
ちなみにキャッシュフロー計算書が大切なのは、理論上利益が出ているのに儲けなどの入金は数か月かかるために現金が手元になくなり黒字倒産するケースがあるため、最低でも黒字倒産しない程度に手元に現金があるかが大切なためです。
補足ですが2023年営業キャッシュフローは数値が小さすぎて見えていませんが、△24(百万)です。
参考までに理想のキャッシュフロー計算書ですが、
・営業キャッシュフロー:プラス
・投資キャッシュフロー:マイナス
・財務キャッシュフロー:マイナス
上記ですと本業でしっかりと稼ぎ、その儲けを投資に回し、融資を受けた分をしっかりと返済している理想のキャッシュフローとなり優良企業とみなされます。
キャッシュフロー計算書を確認すると、2023年以外の4年間は理想のキャッシュフローでした。
ここまで財務諸表を見てきましたが、水産業最大手だけあって各指標は優秀でした。
また初めのほうで食料自給率に触れましたが、なぜ触れたかというと中国という存在があるためです。
中国は世界の海で乱獲をしており、漁獲量の減少が懸念されるからです。
日本も太平洋で中国にマグロが乱獲されています。
日本政府には世界各国を巻き込みながら中国に乱獲の自制を求め、水産資源が枯渇しないような行動を求めたいと思います。
水産資源が減少すると水産資源の価格上昇につながり、家計にもそれが反映され圧迫します。
それを避けるためにも、マルハニチロには養殖事業でもさらに投資を行うことで成長につなげ横ばいの売上高の状態を脱し、日本の食料自給率上昇に貢献しつつ日本の食の安全を守っていただきたいと思います。