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会社経費は中身がよく分からないのでお支払いできません。って言う発注担当者が読む記事|<会社経費>とは何か。


「見積りの中に結構な金額の会社経費という項目があります。」
「そもそも何の費用ですか?必要なんですか?」
「高いと思うんで値引きしてください。」

しません。


稀ではありますが、見積書に記載した「会社経費」について難癖をつけてくる人がいます。

そもそも何の費用であるか、自分で分からないと言っておきながら「高いと思う」と支離滅裂なことを言っている時点で、頭蓋骨の中に収まっている器官の機能が著しく低下しているのだろうとお察しします。

お腹が空いていたのですかね?

こんなことを言われると一瞬「ググっ」となるのですが、すぐに憐れみの心が発動するのでさほどムカついたりはしません。

こんなことを言ってしまうのはなぜだろう?とあらためて考えてみる。

ここからは、長く仕事をしているビジネスパーソンや会社経費がどんな費用で構成されているかを理解している人には自明の内容です。

「そうそう、そんな変なこと言うやつがいて困ったことあったよ〜」と共感があれば是非コメントを残してください。

会社経費が何であるか、理解しにくい理由


それは、会社経費をいくらにして請求するか、自分で計算したことがないから。でしょう。

冒頭の質問をしてきた難癖さんの勤める会社も、販売先に提出する請求書には「会社経費」が記してあった。みたいな笑い話もありそうです。

多くの人は自分で会社経費を計算することはなく、たいていの場合は会社で決められた数式に則って自動的に決められる額面を請求書に記しているでしょう。

だから会社経費がどんな費用で構成されているのか興味が持てず、知ることもない、といったところでしょうか。
それならば、相手から届いた請求書に記した会社経費についても、無関心であるべきですが。


経営者になってみないと会社経費は見えにくい。

じゃあオマエは昔から会社経費とは何か、わかっていたのか?
と聞かれると、答えは「いいえ」です。

長く仕事をしてく過程で理解する機会があったのだろう、と思いましたがそうではないことに気づきました。

会社経費が何であるか、はっきりとわかったのは、自分で会社を経営し始めて、販売管理費という会計の用語とその内容を知った時です。

それまでもなんとなく、おぼろげながら理解はしていたつもりですが、実際に会社の成績を表す数字として目の前に提示された時に、しっかりと理解できました。

販売管理費とは、会社運営にかかる費用の合計です。
給与、接待交際費、通信費、水道光熱費、家賃、新聞図書費、宣伝広告費、法定福利費、などの項目からなります。

スタッフとして勤めていたら、これらの数字に疎いのは当たり前ですね。

設計・デザイン事務所が請求書を作るときに、この販売管理費のことをちゃんと考えずに、自分が欲しい時給のみを記載すると大変なことになります。

デザイナーの人件費のみ請求していたら何が起こるか

先ほど、販売管理費の内訳を述べました。
それでは、売上請求の際に担当者の給与のみ請求したらどうなるでしょうか?

盛大に赤字になる


なぜなら、販売管理費全体の一部分でしかない給与のみを回収しようとする訳ですから、そうすると、その他の費用はどこからも回収することができません

事務所の家賃は誰が払うのでしょうか?
もちろん自分の所属する会社です。
ではその費用は誰からもらうべきでしょうか?

分からない?
もらえる人からもらうしかないですよね。
「もらえる人」とは誰?
「お客さん」です。


つまり、会社を運営するのに必要な販売管理費を回収しない限り経営は赤字となり、赤字続きでは会社は倒産してしまいます。

それを回避しようとすれば、お客さんに請求する金額の中に、販売管理費を入れ込んでおかなければなりません。

このように、お客さんに請求する販売管理費が会社経費の正体です。

あなたが毎年9月に予約するiPhoneの代金の中には、台湾の工場で働く人の人件費や、メジャーリーガーへの広告出演費、ガラス張りの大きなオフィスの空調費などが含まれているということです。

全ての費用は価格に反映される


ボランティアなどの非営利事業でもない限り、事業活動で発生した費用は全てお客さんからいただく価格に反映されます。

ですから、会社経費が何の費用かわからないので、値引きしてください、という要求には屈してはならないのです。

設計料の見積書に挙げる人件費には、経理や総務を担当してくれている人の人件費は入っていないでしょう。
その人たちの給料も一緒に請求しているのだ、と思うことができれば簡単に「高いですか!そうですか(汗) じゃあ値引きしますね」とは言えないはずです。

「いや、あなたの会社の家賃や広告宣伝費をなんで我が社が持たなければならないんですか?」
と食い下がってくるアホウがいたら、オメェの会社もお客さんにそれらを請求してんだヨ、と胸ぐらを掴んで言ってやりましょう。

設計・デザイン事務所の会社経費の金額設定はどうやってするのか。


見積書の項目がどのようになっているかで変わってくるので、一意の正解はありませんが、私個人の方法を聞かれた場合の回答を記します。

人件費以外の会社の1年分の販売管理費を、売上を持ってくるスタッフ人数で割り、さらに一人当たりの年間就業時間で割る。
それの金額をプロジェクトにかかった総人工に掛け算する。

株式会社ワサビの会社経費の算定方法


ピンとこないかも知れませんね。

もう少し詳しく解説したいところですが、1点前提として理解して欲しいことがあります。
それは、この計算方法が「プロジェクトにかかる総人工(時間)で見積りをしている」ことです。

解説します。

まず、売上を持ってくる人=設計担当者と考えてください。
設計担当者が3人いる会社だとしましょう。

次に、この会社の1年分の販売管理費が2400万円でした。
この2400万円に、設計者3人の給与は含まれていません。
経理や広報担当者の給与は含まれています。

先に挙げた算定方法に則り、2400万円を3で割ると800万円となります。
さらにこの額を一人あたりの年間就業時間で割ります。

1日8時間の就業とした場合のね平均的な年間就業時間は2085時間なので、8,000,000÷2085=3,950円となります。

この3,950円が設計スタッフ1人が1時間売上活動(=設計業務)に従事した場合の会社経費となります。

ちなみにこの3,950円という数字は適当なので、そのまま使わないでくださいね。私が経営する会社の会社経費とも違う数値です。

見積りに会社経費を反映するには、以下のように考えます。

設計者2名で担当するが、一人はディレクターとして30時間携わり、もう一人がメイン担当者として200時間携わる。

つまり、合計で230時間、売上を持ってくる人が働く。
会社経費は3,950円×230時間=908,500円となる。

お分かりいただけたでしょうか。
少々ややこしい感じもしますが、人件費を基本請求とするような業態においては、会社経費の考え方はこの方法が簡単ではないかと思うのです。

会社経費は毎年見直す必要がある。


会社経費は一度決めたら未来永劫変わらないものではありません。
なぜなら、費用は毎年変わるからです。

来年には賃貸契約の更新があり、家賃が上がるかもしれません。
電気代や郵送費も値上げがあるかもしれません。(郵送費、かなり上がりましたね。びっくりした。)

このような値上がり=販売管理費の上昇を見過ごしていると、会社の利益が減ってしまうことになるので、定期的に見直す必要があります。

会社は適正な利益を得られないと、未来につながる投資ができなくなり、ジリジリと後退してしまうものです。

新しい技術を取り入れることで仕事が格段に早くできるようになるのに、それを導入するお金がない、といった事態にならないように、会社経費にもしっかり目を行き届かせておきましょう。
(投資ならお金を借りたほうが格段に早いですが)

今週は以上です。また来週。


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笹岡 周平 |空間デザイナー/株式会社ワサビ 代表取締役
建築・インテリアなど空間デザインに関わる人へ有用な記事を提供できるように努めます。特に小さな組織やそういった組織に飛び込む新社会人の役に立ちたいと思っております。 この活動に共感いただける方にサポートいただけますと、とても嬉しいです。