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設計者がやりたくない業務TOP3「概算見積り」を考える。 【前編】

あなたはとある有名なレストランで食事をしてみたいと思っています。
けれども、食事をするにはそのレストランについているエージェントを通さなければならないらしい。

そこであなたは、まずエージェントと契約してレストランに取り次いでもらうためのお金を払いました。

その後エージェントと、予算や食べ物アレルギーのこと、どのような食体験をしたいのか、いつ利用したいのかなどを話し合いに1ヶ月ほど費やしてレストランに伝えてもらいました。

そこから約1ヶ月後、レストランから回答が届きました。
要望の食事を出すにはもう少し予算が必要で、日程も変更する必要がある。とのこと。

再びエージェントと話し合い、条件を変更して再度レストランへ連絡を。
そしてようやく条件の折り合いがつき、食事ができましたとさ。

「注文前の注文が多い料理店」より


設計者ができるならやりたくないなぁ、と思っている「概算見積り」の話をする下準備に、まずは冒頭のお話を書きました。

レストランで食事をするだけなのに、お金と時間がかかっているのがわかると思います。

実際にこんな仕組みのレストランがあったらほとんどの人は利用しないでしょう。(世界的に有名なレストランが旅行者に向けて席をオープンしている場合こんな仕組みになりそうですが。)

設計の仕事をしていて必ずお目にかかる「概算」業務が発生するのは、このお話のように、家やお店(=レストランでの食事)を手に入れるために、設計者に依頼をする(=エージェントに間に入ってもらう)という仕組みに起因しています。

できればやりたくないけど、非常に重要で求められることが多く、実施するには技術も必要な「概算」について、前編後編に分けてお伝えしたいと思います。


設計業務における概算とその他の概算の違い


もし設計の仕事をしていなかったとしたら、概算という単語を耳にするのは、ニュースや新聞で、国が予算を決めるための話題の中の「概算要求」くらいだったかもしれません。

概算という言葉を世の仕事人の中で一番耳にする頻度が高いのは、設計図を描く人と、その図を以て何かを作る人が「分かれている」(以後「設計と製作が分かれている」といいます)仕事に関わる人ではないかと思います。

他の業界に「概算」の文字が登場しないかと言われれば当然そんなことはありません。
例えば映画制作のプロデューサーになったとしたら、企画時に制作費を「概算」するでしょう。

しかし、設計と製作が分かれている業界に関する概算と、それ以外の業界に関わる概算とでは、大きな違いがあります。

それは、「最終成果物の金額を知るために・・・・・『第三者』にお金を払い時間をかけなければならない」点です。

世の中には見積りをとらないと値段がわからないモノやサービスはごまんとあります。
例えば保険料は保険会社に見積り依頼をするし、家をマルっときれいにするためのクリーニングなんかも業者さんに家に来てもらって見積りをしてもらう。

これらと設計と製作の話との違いは、見積りを依頼するのは自分である、という点です。つまり第三者が介在しない。

自分の意思で欲しいものの要件を過不足なく定義して、直接購入できるかどうかの違いだ、というわけです。

冒頭のお話はこの違いを理解しやすくするために書きました。
(が、よりわかりにくくなった可能性もある。。またやってしまったか)

ちなみに、例に挙げた2つの見積りが出るまでの期間は早くて数十分、長くても1日くらいではないでしょうか。

設計と製作の場合だと、つくるものの規模によってまったく変わってきますが、工事見積りが出るのには、どれだけ早くても2ヶ月を切ることはないと思います。

前編は導入部分だけとなってしまいました。
後編では以下の項目を解説したいと思います。

後編目次

1:概算見積りが必要とされる理由
 ・プロジェクトを進めるために欠かせない?
 ・実際の見積りを出すのに大きな金額と時間がかかるから
2:概算は文字通りの意味でつかわれない
 ・「超えてはならない数字」ととらえなければならない?
3:概算が難しい理由
 ・設計図が完成していないから
 ・自分で工事をするわけではないから
4:概算が実際の工事見積り金額を超えてしまう理由
5:だから、やりたくない

それではまた来週。

2024.4.14 追記
後編を書きました。

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笹岡 周平 |空間デザイナー/株式会社ワサビ 代表取締役
建築・インテリアなど空間デザインに関わる人へ有用な記事を提供できるように努めます。特に小さな組織やそういった組織に飛び込む新社会人の役に立ちたいと思っております。 この活動に共感いただける方にサポートいただけますと、とても嬉しいです。