私家版 もうひとつのアフガニスタン ~カーブル日記 1985年~,土本典昭,2003
1985年四月革命のパレードをクライマックスに、アフガニスタンで暮らす市井の人々をダイジェスト的に追ったドキュメンタリー。
始めに新聞記事を映しながら政治的な動向を俯瞰的に述べた後、現地の映像がカラーで迫る演出がシンプルだが効果的だった。
音楽は高田みどり。美しい音楽。
共産主義国家としてのアフガニスタンを映している。教育・住居・制服。
これは1985年の映像を2003年に編集した元々回想的な作品であるが、故にそこからさらに20年たった後にあらためて鑑賞すると現在のアフガニスタンの状況がどうしても頭をよぎるのだった。
【須賀川・特派員取材】橋の下に広がるのは・・・ドラッグと絶望がはびこる“地獄”の光景 タリバン統治から1年 アフガニスタンにまん延するドラッグと貧困の実態【須賀川記者リポート】
ここで映されている薬物中毒者が集うこの川は先の作品で映された美しいモスクのそばのカーブル川と繋がっているのではないだろうか。時代を経た川のありようの違いをどうしてもアフガニスタンが歩んできた歴史と重ねてしまう。
それぞれの時代、それぞれの政権において、それぞれ矛盾はあったろう。そういった澱がたくさん積み重なってそれが川にただよっているように感ずる。それぞれの矛盾を丁寧にすくっていく時間が状況としてアフガニスタンにはなかったという悲劇。
過去を回想するとき、そこには過ぎ去ったが故の安心感と親しみがある。
主観的な安心感の中で過去を多面的に演出することは難しい。
小品的でありながらある時代のある側面をバッチリ見ることが出来た。
パレードで披露される民族の踊りはいまでも舞われているのだろうか。
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