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『ソフトウェア・ファースト / 及川卓也』(本めぐり⑧)

DX推進なども含めて、どうすればソフトウェアを中心にした企業組織を作り上げられるのかについて、広さと深さを両立しながら書かれた一冊。
とても勉強になった。以下備忘メモ。

●ソフトウェア・ファーストは目的ではなく、手段。ユーザー・ファーストが大上段にあり、その実現に向けた指針。

●アメリカがソフトウェア中心の国家・企業に舵を切れたのは、製造業で日本に大敗したから。逆張りで、抜本的かつ本質的な構造改革ができた。

●日本に根深くはびこり、ソフトウェア・ファーストが進まない一番の要因は、IT領域の外注率の高さ。社内でのIT開発は後回しになり、SIerやSESが隆盛を極め、技術者の雇用と待遇が不安定化し、国としての開発力も遅れをとった。

●経営陣の優先順位がどうなるかで全てが決まる。IT領域への人・モノ・カネの投資が全然進んでおらず、ノウハウ蓄積や人材育成も遅れ、自社でのスピーディーな開発・メンテナンスもできない悪循環に陥っている。

●DXは旗印として掲げるだけでは無意味で、それに合わせた社内制度の整備や人材採用・育成への本気のコミットメントが必要不可欠。組織の構造や体制を抜本的に見直すことなく、表層的な対応で乗り切ることは不可能。

「ソフトウェア・ファースト」というタイトルでありながら、事業サイドでどのように改革を進めるかの話は全体の半分で、会社としての制度待遇や採用方法、キャリアパスの築き方など、組織に関する話のボリュームが多いのが予想外だった。
それだけ、現場で実際にソフトウェア中心の企業文化作りに取り組む著者自身が、組織がトランスフォームすることの重要性を感じているのだと思う。

IT領域が後回しになり、構造的に前進・改善が進まず、ズルズルと過去慣性に飲み込まれていく様は圧倒的リアリティで、日本全体の深刻な課題だと改めて感じた。ビジネスモデルやビジネスプロセスを変えていく上で、事業サイドと組織サイドの両方を見通して動ける人材は本当に希少。

自分の今後、自社の未来を考える上でも、とても参考になる一冊だった。