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【クリエイターインタビュー】発売間近!!『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険』開発秘話を聞いてみた

本作の舞台となるのは、内気だけど想像好きな主人公の少年、ダミアンが空想した世界。そんな世界で、ダミアンが生み出したヒーロー『キャプテン・ベルベット・メテオ』が大活躍する、簡単操作で爽快感抜群の派手な演出が展開するタクティカルアドベンチャーゲーム。それが『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険』(以下、キャプテン)だ。

さらに登場するキャラクターたちをチェックすると……。日比野カフカ(怪獣8号)、クロム(HEART GEAR)、画眉丸(地獄楽)、ロイド・フォージャー(SPY×FAMILY)などなど。『少年ジャンプ+』でおなじみのキャラクターたちの姿が!

『集英社ゲームクリエイターズCAMP』と『少年ジャンプ+』のコラボが実現した理由とは? そして発売直前に迫った本作に対する意気込みなどを、CAMPのプロデューサー林真理氏。「Momo-Pi Game Studio」のクリエイター、リナルドさん(Rinaldo Wirz)にお聞きします!

『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険』
クリエイター リナルド(Rinaldo Wirz)さん

――まず、お聞きしたいのは7月28日にNintendo Switchで配信スタートとなるゲーム、キャプテン・ベルベット・メテオについて。クリエイター、プロデューサー両名のエピソードトーク強めに、どーぞ!

リナルド
実は、ボクの中では小さい頃からキャプテン・ベルベット・メテオ的なキャラクターができあがっていました。ずっと頭の中で育ててきたキャラクター、それがキャプテン。でも、いろいろと仕事があって、具体的に作品にすることができなかった。

そして2019年のGoogle Play Indie Games Festivalで「集英社 少年ジャンプ+賞」を受賞したんです。ここで「少年ジャンプ+のキャラクターと、ボクのキャプテンを組み合わせたら、絶対におもしろくなる! キャプテンを使うのはここしかない!」。そう思ったら、どんどん新しい発想が生まれて、このゲームに取り組みはじめました。

――リナルドさんが小さい頃に描いていたキャプテンと、ゲーム内のキャプテンはいろいろ変化してきているんですか?

リナルド
変化してる。最初の頃のキャプテンは6歳の子供だったし。ゲームに使いたいと思ってからは、彼のバックグラウンドを膨らませたいから、自分のことや、自分の子供のことを要素として加えるようにしてる。ボク、こうやってキャラクターを作るのが大好きなんだよね。

――リナルドさんの子供時代は、ゲームやアニメなどを見まくってた感じですか?

リナルド
ボク、スイスの田舎で育ったんだけど、お母さんが厳しくて、テレビは13歳までダメ。だから、たまに友達の家などで日本のゲームやアニメを見たら、それを全部記憶したんですよ。

――それ、どーいうこと!

リナルド
昔、FAXのロール紙ありましたよね。あれに見たゲームやアニメを描き写してました。友達の家で見たキャラクターやオリジナルのキャラクターを使って、巻物のようなFAX用紙にアドベンチャーを描いてました。これが7歳ぐらい。

で、15歳の時にパソコンを買って、それにハマった。100パーでハマったよ(笑)。ゲームをするだけでなく、ピクセルアートやゲームのアイコン作るのも大好きだった。パソコンのスペックが足りないから改造して、何度も壊したよ。

――そんなにゲームで遊んでお母さんに怒られなかったんですか?

リナルド
お母さんは朝イチでカフェに行くんですよ。そのカフェに行ってる1時間ぐらいの間にパソコンをやってた(笑)。ボク、こうやって限られた時間しかゲームに触れられなかったから、集中してそれを自分に吸収できた。そしてオリジナルのキャラクターを考えるのが楽しかったし、好きになったんだと思うよ。

――お母さんは、リナルドさんが作ったゲームで遊ばないんですか?

リナルド
ぜんぜん。「あなたの作った動く絵を見るのは大好きだけど、ゲームは興味ありません」って。だから、ボクのお母さんが楽しめるビデオゲームを作ったら、そのクリエイターは本当の天才だよ(笑)。

――お母さん、厳しい! リナルドさんと、CAMPの林さんが関わるようになったキッカケとは?

林真理
実は、私は途中からプロジェクトに参加してるんです。

――え!? はじめっからの参加ではないと!

林真理
はい。2019年のGoogle Play Indie Games Festivalでリナルドさんのチームが「集英社 少年ジャンプ+賞」を獲得して、少年ジャンプの細野修平編集長とリナルドさんが「一緒に何か作ってみようか!」となったんです。で、ふたりでいろいろと企画を練っているうちに、どんどん良いゲームになってきた。

ただ、少年ジャンプ+編集部には、ゲームそのものを【どうやって売る】【どのように仕上げていく】といった部分を、仕事として行なえるスタッフがおりませんでした。なので「じゃ、CAMPで」となって、私も参加することになったのです。

――そんな林さんがリナルドさんのクリエイター能力で評価している部分とは?

林真理
どんな作業においても“ここは良いところ、絶対にハズせない!”と思った部分を、すぐ改善改修する。そのパワーとスピードが圧倒的。とにかく突破力のあるクリエイターなんですよね。

リナルドさんのチームは少数精鋭だけど、もっと大規模なチームと仕事をしている感じ。頼り甲斐がありますよ。

『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険』
プロデューサー 林 真理

――リナルドさんは、そもそも日本のアニメやゲームが好きだったワケだから、集英社 少年ジャンプ+賞を受賞したのは相当に嬉しかったのでは?

リナルド
正直、よくわかってなかった(笑)。もともと『NARUTO -ナルト-』や『ONE PIECE』の大ファンだけど、それと集英社 少年ジャンプ+賞がリンクしなかった。で、後から奥さんに説明されて、「わー! すごい! ナイス!!」ってなった(笑)。

なんか受賞してからの自分の人生って、良い波に乗ってサーフィンしてる感じ。その波に少年ジャンプ+とCAMPと一緒に乗ってる。だから、めちゃめちゃ楽しいよ。

――では、一緒に楽しい波に乗ってる林さんの思いは?

林真理
リナルドさんのような優秀なクリエイターから「一緒にやってて、めちゃめちゃ楽しい」と言ってもらえるのは、最高の褒め言葉ですよ。

CAMPのスタッフは、もちろん全員がゲーム好き。そして業界、クリエイターのことを真剣に考えてる人たち。だからゲーム業界の問題点、この先の未来のことを、自分たちで改善して切り開いていこうと思ってます。それを、めちゃめちゃ楽しい方向にね。

――ではゲームのことを真剣に考えている林さんから見た、キャプテンの仕上がり具合は?

林真理
本当に面白いです!

――林さん! それ、ゲームのことを真剣に考えている人の語彙力じゃないって!!

林真理
えーと(笑)。でも、それぐらいバランスが良くって、単純におもしろいんです。これは良い表現じゃないかもしれませんが、仮に少年ジャンプ+のキャラクターがいなくても成功するゲームです。

――それ! すっごいわかりやすいかも!! 確かに、有名ミュージシャンやタレントが参加しても、残念クオリティのタイトルありますもんね。

林真理
そうなんですよ。本当におもしろいゲームを作るって、クリエイターさんたちが集中して、バランスをとってやっていくしかない。キャプテンの場合は、少年ジャンプ+のキャラクターが入ったことでストーリーに厚みが出たし、タクティカルなゲーム部分もバリエーション豊富なバトルを楽しめる内容になっています。

例えばステージ1なら、主人公のキャプテン・ベルベット・メテオと日比野カフカ(怪獣8号)が登場します。ふたりを同時に操作しても良いし、バラバラに攻撃することもできる。もちろんコンボだって出せます。

コンボの特性をうまく使いつつ、戦略を持って進行します。かつ適当にやっててクリアできるようなゲームバランスではない。私自身、時間を忘れて集中できるタイトルだし、キャプテン・ベルベット・メテオと少年ジャンプ+のキャラクターたちが相乗効果でゲームバランスを高めています。

なので、本当におもしろいです!

――完璧解答、ありがとうございます! リナルドさん自身はキャプテンでどのような部分にこだわっているんですか?

リナルド
ゲームを触ったことのない人がはじめてプレイしても「キャプテンが動くと楽しい!」と感じてほしい。キャプテンたちを動かすと、そのビジュアルや振動だけでも、プレイヤーがリアクションするぐらい動きにはこだわったから。

あとはリズム。このステージは難しかったけど、次はリフレッシュできる感覚。プレイヤーがフラストレーションを感じないことが大事。キャラクターの動きもリズムが重要。キャラクターの動きとサウンドがオーケストラのようにつながっていく。そういった部分のデバッグを続けています。ただ、この作業はエンドレス(笑)。

――リナルドさんはクリエイターとして、少年ジャンプ+のキャラクターを扱う楽しみはあったのですか?

リナルド
キャプテン・ベルベット・メテオと少年ジャンプ+のキャラクターを、ストーリーやゲーム性でリンクさせるのは、すごく難しかった。でも、ボクは自分の頭の中でいろいろ想像するのが大好きだからすっごく楽しかった。

――それってリナルドさん自身が、主人公のダミアンそのもの!

リナルド
例えば、ダミアンが犬に対して恐怖心を抱いてる。「なら、怪獣8号じゃん!」とリンクさせていくことができる。これを考えるのは辛かったけど、めっちゃ楽しかった。

ひとつのアイデアが決まると、それが木の枝みたいにどんどん広がっていく。でも、キャプテンやマンガの世界観と合わないものがあると、それがすっごい気になる。そこを調整するのが難しかったこと。

――林さん的には、このようなリナルドさんの仕事っぷりを、どう見てたんですか?

林真理
リナルドさんのチームはポジティブに貪欲なんです。「う〜ん」って考え込むこともあるけど、そこからみんなを巻き込んで、悩んだテーマをさらにおもしろくできる。だから、私達も「これ無理だよー」とは言えず、一緒に考える。逆に私達からも、リナルドさんにわがままを言える。そうした良い関係性がCAMPとリナルドさんのチームとの間にはできていると思います。

――キャプテンのプレイ動画を見ると、リナルドさんたちクリエイターが良い意味で少年ジャンプ+のIPをイジれたタイトルに仕上がったように感じるのですが?

林真理
今回のプロジェクトでおもしろいのは、少年ジャンプ+編集部が「踏み込んでいいよ!」って私達の背中を押してくれたこと。ゲームでIPを扱う場合、クリエイターさんが作品をリスペクトするあまり自ら枠を設けてしまうことがあります。さらに、IPそのものに成約が多いこともある。

ただ、今回は少年ジャンプ+編集部が「踏み込んで!」と言ってるから、私達もリナルドさんも「ならいいじゃん!」というノリで制作できました。これは大規模なゲーム開発では難しい環境ですけど、CAMPの小規模開発ならではの“アグレッシブなIPコラボ”が実現できたと思います。

――ちなみに、林さんがリナルドさんたちに言った、わがままとは?

林真理
リナルドさんはクリエイティブな方なので、「あれ、これリナルドさん作れるよな!」と思った仕事、例えば宣伝映像なんかを開発が忙しい最中に発注してしまいました(笑)。

あと開発終盤の時期に、キャラクターの魅力を引き出したくてカットインを追加してもらったりとか。それでも対応してくれて、頼もしいチームだなと。ありがとうございます!

リナルド
キャプテンはボクが最初にイメージしていたビジョンより、ずっとネクストレベルに行ってるゲーム。どんどんおもしろくなっている。それがあるから作ってて楽しいし、頑張れる。

林真理
開発中にタイトルがパワーアップするのは、CAMPが一緒にやれた成果だと実感できますから。それをリナルドさんから聞けるのは一番嬉しいことです。

――今回、CAMPとしては具体的にどのようなサポートを?

林真理
宣伝活動がメインですね。ゲームもビジュアルもリナルドさんのチームがやることが正解ですし、スケジュール的に「ここまでにこれを仕上げてください!」ということもありませんでした。

むしろ私が言ったことが、大きくなって返ってくることがほとんど(笑)。

――そんな林さんに、リナルドさんが初対面したときの印象は?

リナルド
ボクは一緒に仕事をする人間同士、上下関係があるのはダメだと思ってます。林さんにはそういうのはなかったし、なんでも意見を言える遠慮をしない関係。自分たちのチームが苦手なプロモーションは、遠慮せず林さんにパスできた。

林真理
リナルドさんのチームはメンバー全員がクリエイターとして完成されたプロ集団。一方で、若いチームもある。そういったチームと仕事をする場合は、先生的な立場で接することもあります。ただ、リナルドさんとは“戦友”という関係が、はじめっから続いていると思います。

リナルド
本当はもっと直接会って話したかったけど、コロナでなかなか機会がなかった。だから、完成したらボクのチームと林さんたちみんなで乾杯したい!

――では、最後にリナルドさんから、クリエイターさんたちに向けてメッセージをお願いします。

リナルド
仕事でゲームを作るなら、クリエイター同士でつながること。つながって話すことで悩みが解決するし、大企業のような大きなスケールのゲームも作れる。それがインディーの世界。アイデアはみんな持ってるけど、それを宝物のように自分だけで温めるのはダメ。だって、誰かが同じアイデアを持ってるから、これ絶対だよ。アイデアはみんなでシェアして、もっとおもしろくする。まずは、クリエイター同士がつながること。これが一番大事だよ。

――リナルドさん、ありがとうございました!